誰が為に人は動く 1-1
Chapter1 物語の始まり
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「あーつーいーよー」
といった無邪気な声が蝉の鳴き声と共に1車両に響き渡る、ここは列車の中。季節は夏。この日はまるでオーブンレンジに入れられているかのような暑さだった。つまり、雲一つ無い快晴。そして、この列車には冷房がない。故に窓は全開だ。そこで、全力でうなだれていたのは上が黒のスポーツウェアの上から袖なしの黒Tシャツを着ていて、下は白い短パンを着ている黒髪で碧眼の少年だ。その少年の向かいの席や隣の席には座っている人がいる。そのグループは黒髪の少年合わせて4人。そのうちの一人赤髪でポニーテイルの美人な長身美女が反応した。この美女は巫女装束を着ているのだが袖を肩のあたりまで無理やりあげているため胸が強調されている。そんなことを本人は気にしている様子もなく少年に言葉を返す。
「カイといったか?おぬし本当に代表者か?気が抜けてすぎて腹たつのじゃが…」
金髪の毛先が肩のあたりでカールしている男子が「カイ」と呼ばれている人の代わりに返事する。
「しゃきっとしてないこいつのサポートで俺がいるんだけど…」
「…じゃあしっかり…世話しろ…」
白髪の少年が美女の代わりに念押しして言う。こいつの瞳はエメラルドグリーンと珍しい。
【この4人はとある理由で集められた人達だ。彼らは「人類の陽射し」と呼ばれている。さて、いったい何のグループか説明しよう。その前にこの世界について話をしておきたい。この少年たちが住むこの世界には〈人間界〉と呼ばれているものと〈悪魔界〉と呼ばれている世界が存在する。その惑星はテニスボールの半球とバスケットボールの半球同士を断面で合わせたような形をしている。(テニスボール側が人間界、バスケットボール側が悪魔界)この二つの世界を渡るには〈転移〉つまり、ワープしなくてはならない。船、航空機などでは絶対にわたることができない。ここまでが環境的な話だ。
ここから歴史についてだ。人間と悪魔は昔から対立していて争いが絶えなかった。だけど、ここいらは停戦協定・不可侵協定を結ぶことで平和に保たれていた。2年前の出来事だが、悪魔界の皇帝が変わる出来事があった。そこから悪魔たちは人間界に侵入してくるようになる。人間もいくらかの人々が悪魔界に住んでいるので何も言わなかったが、ついに悪魔たちは軍事的な大規模侵攻を仕掛けてくることになる。人間界は3つの国に分かれているのだが、各国には一人ずつ結界姫が存在する。結界姫とは、名前の通り外部からの邪気を跳ね返したり、天変地異が起こるのを防ぐ結界をつかさどり国を守る姫のことである。だが悪魔たちは何かしらの方法で結界を破り、3つの国すべての姫を連れ去らう。(この事件を0211事件という)人間たちは目的はわからないが、今置かれている危機的状況と姫が死ぬまで10年の猶予があることを知る。それから二年後、悪魔界に乗り込み姫を奪い返すため各国から最強と言われている者を選出し乗り込ませることとなる。それが「人類の陽射し」だ。
そして、各国から集められた最強は、転移可能な場所へ向かうために、とある列車で待ち合わせし合流した。そして、あの場面へとつながるわけである。】
気づくと自己紹介の続きだったのか、話を断線した男が話を戻そうとする。
「俺が原因で話がこじれて申し訳ないねぇ。じゃ、自己紹介の続きといこうか。俺はカイ・レオナルド。昔は龍神魔法を使えていたが、今は0211の事件で失ったんだ。だが、この4人の中で一番強い自信があるぜ。あとリーダーを務めるように各国の代表からいわれてるんでよろしくな!」
と黒髪で碧眼のカイ・レオナルドが自己紹介を簡単に済ませると間髪を入れずにポニテ美女は、
「おぬし、今何ともうした?龍神魔法?それは禁術の一つではないか!?ついでにいうと、この中で一番強い?そんなのわからんじゃろが!!というより今使えないのなら一番弱いじゃろうが!!」
彼女は禁術が使えていたことへの驚きと簡単に下に見られたことへの怒りで声を荒げた。
「そうだね、戦況は刻一刻と変わるものだからね。いつも強いとは限らないね。訂正するよ。一番頭がいい戦い方をすると思う。あと自己紹介お願いね。美人さん。」
ニコニコしながらしゃべるカイにイライラしながら言葉癖の強い美人さんが自己紹介をしょうがなくする。
「はいはい、わかったわよ。舞、霧野舞というの。感情が高まると口調が変になるのはきにしないで。ちなみに火属性だから。さてさて、そこのお世話係さっきの話の続きをしてくれない?」
カイに話を振らなかったのはイライラしていたからだろう。それに神父のような恰好をしたお世話係が答える。
「わかったよ、俺が説明する。カイは龍神魔法を操る一族レオナルド家の末裔なんだ。力を失ったことについては追々説明しよう。これに関しては話が長くなるからな。ちなみに、俺はグラス・タッグ。グラスと呼んでくれ。よろしくな。あとお世話係ではない。」
その話を踏まえ無口でエメラルドグリーンの瞳の男が話に参加してきた。なぜか着物の上を半袖にしたものを着ているという妙な見た目だ。
「それについては…問題ない。どちらかというと力を失ったことについての話のほうが気になるのだが…あと、俺の名前はシンカ。」
「…」
カイは珍しくここで反応しない。何か考えているようだった。
【それはさておき、気になるのは舞が自己紹介の時に「火属性」といっていたことだ。それは争いの絶えなかったこの世界において重要である情報となってのだ。人間は、基本一人一つ以上の属性(火・水・土・風・雷・光・闇のどれかに分類される)と一つの術を酷使して戦う。例えばカイは禁術と言われている龍神魔法を使うのだがこれは術に分類されている。それに個人の属性を混ぜて戦うのだ。別の例をあげると、舞なら何かの術に火属性を混ぜて戦うというように、属性、術が大きく戦闘にかかわってくる。この属性が変化することはなく、突然変異することもない。術に関して言えば、いくらでも覚えれるのだが増えれば増えるほど一つ一つの術のかかり方が鈍くなる。わかりやすくいうとRPGとかでスキルレベル上げが平均的に終わらないといった状況になるということ。なので基本2・3個しか覚えず磨くのがセオリーであったりする。その中でもずば抜けて高い威力・効果を示すのがカイが使えていたという〈禁術〉だ。術の反動がむごかったり使用効果が非人道的だったりするのは悪魔と人間の間で7つ決められている。そして龍神魔法とはその中の一つであり、世界最強の魔法といわれていた魔法であったのだ。
さて、長ったらしい「属性・術」についての説明はここで終わらせ本ストーリーにもどるとしよう。】
「属性は変異、消失したりするものではないのは…常識…」
シンカが念を押すように再確認する。そして、確認後に
「じゃが失ったとは…どうゆうことなのじゃ?」
とふと思った疑問点について舞はストレートに聞いた。
「ん?ああ、それは…」
カイが答えようとしたその時であった。
ドカン!!
というガス爆発ににた爆発音とともに目的地を目指して動いている彼らの乗る列車が壁に激突したかのように急にとまった。