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 次の日から、一葉は何となく未春を避けるようになった。声を掛けられれば返事もするし、部活だって休まず顔を出しているが、それ以上の関わりを持つことを避けた。二人の間で交わされるのは必要最低限の会話だけ。決まりとなっていた朝夕の登下校も、一葉の方から用事をつけて、一人でするようになった。しょんぼりした様子の未春を見る度、胸が痛まないわけではなかったが、一葉にもまた意地というものがあった。


「一葉ちゃん。あの、もし何か、気に障る様なことしていたら、ごめんね」


 一度、未春が直接一葉に謝罪を述べに来たことがあった。

 仲睦まじく、伊吹歩との稽古の後に、舞台で使う壊れた小道具を直していた一葉のもとへ、未春はおずおずとやってきた。


「……別に、未春は何も悪いことしてないよ」


 それだけ言うのが精一杯で、一葉はすぐに未春から逃げるように奥へと引っ込んだ。

 一葉の言葉はある意味、本心から出た言葉だった。あのとき、恥をかかされたことで未春を責める気はもうない。あれは未春本来の優しさから出た言葉で、決して一葉への同情などではなかったと幼い頃から付き合いのある一葉も理解していた。だが。理解した後も、こうして未春を避けるような態度を取り続けてしまうのには、口が裂けても言えない理由があった。


「……気に障るようなこと、か」


 一葉は一人、薄暗い舞台裏の隅っこで呟いた。


 未春への嫉妬と劣等感。それが今尚、一葉が未春を避け続ける大きな理由だった。これまでの長い友人付き合いの中で、どちらかと言えば頼りになると言われる一葉が、抜けている未春の面倒を見ることが多かった。未春も一葉に甘えるような態度を取り、一葉は一層、姉のようによく未春の面倒を見た。それ故、一葉の中には無意識のうちに、未春よりも自分の方ができる、という優越感によく似た感情が芽生えていた。


 しかし。今のこの現状はどうだろう。

 すっかり未春と一葉の立場は逆転してしまっている。


「私って本当、最低……」


 一葉はぽつりと自分への嫌悪感を呟いた。


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