自分のかわいさに気がついちゃった話
ピュン太が、感動しながら言う。
「普通、魔法と言うのは物体に直接作用するんだよ。例えば今、木を倒す時は木に炎を魔法でつけるとかね。しかし、君は剣を振った風で間接的に木を倒した。これは至ってレアケースなんだよ。間接的に攻撃するのには極めて強い想像力を必要とするんだ」
そうなのか。長い入院生活が役に立つ日が来るなんて思ってもいなかった。
「君が想像以上に素晴らしい才能を持っているというのが分かってよかったよ。とりあえず、ずっとここにいるのもあれだ。僕の家に来ようか」
ピュン太がぱちんと指を鳴らす。俺は、この世界に来た時と同じように光に包まれた。
そして、目を開けたら目の前にはすごく乙女チックなファンシーな部屋があった。
「ここが、僕の家だよ」
ピュン太が先程と同じく指をぱちんと鳴らす。今度は、部屋の中心に大量の菓子とジュースがなみなみと注がれたたコップが乗ったテーブルと二つの椅子が現れる。
「腰をかけていいよ」
ピュン太が椅子に先に座る。俺はピュン太が座ったのを見て恐る恐る座る。こいつのかける魔法は、一度失敗しているから怖いのだ。椅子に座る時に自分が小さくなったので座る感覚が現実世界と違って怖かった。まあ、現実世界では最後の方は椅子にすら座れなかったんだが。
「じゃあ、秋葉くんが夢世界に転生したのを祝って乾杯(笑)」
「ちょっと待て、なんで(笑)をつけた」
「想像におまかせするよ」
ピュン太がごくごくとオレンジジュースを飲む。
俺もそれを見て自分のジュースを飲もうとする。病院では、そういうのを口にできなかったから少しうれしい。
コップの縁を口につける直前、コップの水面に浮かぶ自分の顔が見えた。そこに写る自分の顔はめっちゃ可愛かった。くっきりとした二重まぶたに小さな口につるつるお肌……。
「なんだ、これめっちゃかわいい……」
思わず声が出る。
「だろう、君の顔は僕の失敗作の中でも一番の出来なんだよ」
ピュン太が誇らしげに言う。胸を張るときに胸が揺れていた。
この顔だったら幼女になっていてもいいと少しだけいいと思ったりもした。
そこからはピュン太も俺も、ただ一心不乱に菓子を無言で食いまくった。
ピュン太曰く、俺をこの世界に連れてきた時にエネルギーを大量に使って腹が減っていたらしい。
俺は、現実世界ではお菓子とかはあまり食べられなかったからとても美味しくてついついいっぱい食べてしまった。
テーブルの上の食べ物がなくなり。
俺は気になっていた事を質問する。
「ピュン太が俺を呼ばなくても魔法を使って戦えばよかったんじゃないか?」
ピュン太の魔法も、お菓子を大量に作れるし、失敗はしたけど俺をこの世界に転生させたし一級品のはすだ。
ピュン太は答える。
「だって面倒くさいだろう」
爽やかな笑みで。その笑顔は悔しい事にとても美しかった。
「僕は戦うのが要は怖いんだよ」
ピュン太はきっぱりと言い切った。
そして俺に問い返す。
「君こそどうするんだい?」
「何をだ?」
「これからのこの世界での君の家だよ」
さてどうしようか。
かわいさが表現できない。
そろそろ戦わせるぜ