幼女になっちゃった話
頬を駆ける爽やかな風の感触で俺は目を覚ました。そこは森だった。陽光が緑を駆け抜け鮮やかな色彩を放つ。心地よい風の音と鳥の鳴き声が自然の煌めきを主張する。
俺は土の上で寝ていた。起き上がろうとすると
「いたっ……」
腰に痛みが走った。
その痛みで思い出す。
自分が異世界転生をしたことを。
そう……。俺は後ろの木を見る。その木の幹の地上から二メートルくらいのところには、子供一人入れるくらいの穴が空いていた。
光に包まれた俺は気づいたら、その穴から放り出されていたのだ。
そして、土がクッションとなって俺を守ってくれたけど穴から放り出された時に穴の淵に腰をぶつけて……。
それから……、そうだ。そして強烈な眠気が来たのだ。
痛みをこらえ起き上がり、痛みがする腰を見る。
かわいいピンクのフリルがついた服を捲くり上げて腰を見ると、幼女のような純白の肌は青くなっていた。
腫れてはいなかった。打撲程度で済んでよかった……って?なんかおかしい。
なんで俺はかわいいピンクのフリルがついた服を着ていて幼女のような肌をしているんだ!?
状況に理解が追いつかない。
目に少しかかる桃色の髪は腰くらいまでの長さで見事なツインテールになっている。
とりあえず俺はスカートを上にあげる。履いている下着も白を基調としており、ちょこんとついた桃色のリボンが可愛らしかった。
そして下着の中は……。
ついていなかった。
「どういうことだよ……これ」
口から漏れ出る声も生前とは違って美しいソプラノボイスだった。
生きている時にお世話になった人達に役に立つ事をしたい。
そう思って転生した先で幼女になって森の中に放り出されているとかなんだよ……。
俺は、ただ呆然とするしかなかった。
「いやぁ、ごめんごめん。やっぱりこの世界に来た負荷で眠くなっちゃったみたいだね」
声が前方から聞こえた。それは俺をこの世界へと誘った声だ。確か名前は……ピュン太だ。
「おい、これはどういうことだよ!なんで俺、女になっているんだよ!」
「いやぁ、それには深い理由があってね。とりあえず君が出てきた後ろの木を見てよ」
俺は後ろの木を見る。
「ほら、その木には穴があるだろう。この穴が君がいた世界とこの世界を繋ぐ唯一のゲートだ。見ての通りゲートは子供一人入れるくらいの大きさだろう。だから僕の方で君をゲートを通れるように魔法で小さくさせてもらったよ」
「いや、待て。だったらなんで俺が女子である必要があるんだ」
「ごめん☆ 失敗しちゃっただけ☆」
呆れる他なかった。
「あと一度かけた魔法は取り消す事ができないから、そこんとこよろしくぅ♪*゜」
俺は絶望に打ち震えた。
そんな中、俺の前の木がガサリと音を立てる。空気が変わる。
木の後ろから出てきたのは一人の金髪碧眼の女性。その美しさは全てを圧倒する。
女性は口を開く。
「そして僕がピュン太。ナイトメアと戦う事になる君のパートナーさ」
エイプリルフールネタではありません。