死んじゃった話
俺、狭山秋葉は病気で死んだ。
病室のベッドの上で何本もの管に繋がれた弱々しい俺の死体の手を取り、悲しみに打ち震える母。そんな彼女の肩を抱き、静かに涙を流す父。
死んで幽霊になった今の俺は、俺が生きていた世界の全てを見る事ができる。未来も過去も。
連絡網で俺の死を聞いたクラスメイトが泣く姿。葬式に訪れて涙を流してくれる大勢の人。
俺は、それを見て知った。自分がこんなにも愛されていたという事を。
感動、嬉しさ、さみしさ。いろんな感情が込み上げてきて俺も涙をこぼしそうになる。もちろん幽霊となったこの身では涙を流す事などできないが……。
そして思う。俺のために泣いてくれる優しい人々。生きている間に彼らのために何かしたか……?答えはノーだ。
嗚呼。せめて、この記憶を持ったまま再び人生をやり直せたら!!彼らに礼をする事ができたら!!彼らの役に立つような事ができたら!!
しかし、それは叶わない夢だ。幽霊に出来ることはただ傍観する事のみ。
『ううん。できるよ』
どこかから声が聞こえた。
(あなたは誰だ……?)
俺は問う。
『僕は、ピュン太だ。君の願いを叶えることのできる世界の番人のようなものさ』
(俺の願いを叶えられる……?)
『そうさ、僕の世界にくれば君は君のために泣いてくれた人を守る事ができる。しかしー。』
(しかし?)
『それは、もしかしたらとてつもなく辛い世界かもしれないよ? それでも君は来たいのかい?』
(ああ……、いいさ。行ってやる、どうせもう死んだ身だ)
『分かった……。さあ、来い僕達の世界へ!!夢世界へ!!』
俺は、白い光に飲み込まれた。
そして目を開けた。
そこは……。
魔法少女かわいい。