第1話
「やっぱやらしい体つきしてるよなー桜ちゃんって。」
「だよなぁー。THEイケナイ女教師ってやつ?」
「それそれ!保健医とかだったらよかったのに、何で古典なんだよー。」
教室の中心でワイワイ騒ぐ男子生徒達。そしてそれを扉の隙間から伺う古典教師の御子柴桜23歳。
光を反射して美しく輝くぬばたまの黒髪に小さな顔、そして真っ白な肌。宝石のような琥珀の目と、紅色のぷるつや唇。その下には流れるように滑らかな線を描くボンキュッボンな豊満ボディ。
彼女は狐ヶ崎高校の古典教師であり、このクラスの副担任でもある。
「あの子達ったら……また言ってる。」
ポツリと呟く桜。その顔は不満げだ。
その素晴らしすぎるフェイスとボディのせいで、桜は男子生徒からはメシアとして崇拝され、女子生徒からはちょっと敬遠されている。
つまり桜は生徒達から"教師"としてではなく"女"として見られているのだ。
教師になって一年目、フレッシュな気分で迎えた教師ライフは上手くいかず、ものすごく不本意な形となって今に至っていた。
そして今も現在進行形で男子生徒たちに不本意な会話を続行中だ。
イライラした桜は遠慮なく目の前の扉をガラガラっと引いた。
「はーい皆席につきなさーい!」
大声で注意しながら教壇へ向かいつつ、ジロリと先程の男子生徒たちを睨むと「やべっ」と言いながら皆自分達の席へと戻っていく。
桜はフン!と内心で鼻を鳴らしながらチョークを手にとって黒板に文字を書きはじめた。
カッカッカッ
チョークが黒板を叩く音だけが教室に響く。すると後ろから一人の生徒が声をあげた。
「そーいえば俺昨日桜ちゃん見たんだけどさぁ!」
ちょっとざわつく教室。「ええ!うらやましー」とか「男子の周りウロチョロしてんじゃないわよ!」とか聞こえるけど無視無視。
どうせ近所のスーパーでチョロっと見かけたとかそんなんもんだ絶対。教師あるあるだ。
余裕の表情で黒板にノートを写し続ける桜。
しかし、男子生徒の次の一言で教室は騒然となった。
「その時の桜ちゃん、巫女コスしてたんだよ!」
さっきの比ではない程の叫び声や悲鳴が教室中に響き渡った。