Ep.1初めまして!
自動ドアをくぐると、すぐそこに受付係の人がいた
「いらっしゃいませ、何かご用件でしょうか?」
受付のお姉さんは、慣れた口調でいかにもマニュアルに従ったような喋り方で話しかけてきた。
〜Ep.1 初めまして!〜
「あぁ、あの…えっと。その…。」
今まで全ての入社面接に落ちただけのことはあるなと自分でも思った。伝えたい事が1ミリも伝わらないのは中学校の時からだったか。お姉さんが困った顔をしていると、奥から白衣を着た男の人が出てきた。
「もしかして、黒咲君かい?」
白衣の男が顎にたくわえた髭を近づけてくる。
「あっ、はい。」
と返事をすると、白衣の男はニッと笑い
「そうかそうか、俺はここの雇用担当及び人工脳製作者をしている竜田智典だ。被験体の件については伺っている。よろしくな。」
と言った。
「よ、よろしくお願いします、先生。」
と僕が言うと竜田は僕の肩を組んだ。
「そんな堅苦しくならなくても良いよ、俺は『クロ君』って呼ぶから君も好きな呼び方で呼んでくれ」
なんだこいつ、馴れ馴れしすぎだろ。
あと痛い、髭がジョリジョリして痛い。
「じゃあまずは登録証の作成と身体検査があるからこっちへ来てくれ。」
と僕を奥の方の部屋へ連れて行った。
「まあ、座ってくれ。」
竜田の言うことに従う。
「じゃあまずは書類を作らないとな、ここに幾つかの紙があるから説明に従って記入してくれ。」
そこには履歴書、同意書、などがあった。
いたって普通の履歴書だし、同意書も『必ずお読みください。』の下に『もし貴方の身に万が一の事が起きても、当社は一切責任を負えません。』などといったありがちな内容が長々と書き綴られていた。正直これを真面目に読む気にはなれないし、ほとんどの人間はこれを真面目に読まないだろう。
僕は適当に目を通し、すぐに署名をした。
「あの…終わりました。」
「おお、そうか。じゃあ次は身体検査を受けてもらう。幾つかの質問に答えてくれ。」
「はい。」
「えーとじゃあまずは…手足はあるか?」
何を言ってるんだこいつは。
「はい、あります。」
「それから、目、鼻、口、耳は揃っているな?」
見てわからないのか。
「はあ、ありますが…」
「言葉は話せるな。」
馬鹿にしてるのか。
「…話せます。」
「よし、合格だ。じゃあ、早速仕事をしてもらおうか。」
は?マジで?これで良いの?
「え、終わりですか?」
「ああ、採用だよ。早速検体として働いてもらう。まあ、疑問に思ったと思うが、君の仕事は五体満足で正常な脳を持っていればそれでいいんだ。」
なるほどっと思ってしまった。まあ自分の望んだ事だし文句は無い。
「じゃあここに寝てくれ。」
竜田が指さしたのは、いかにも手術台って感じのベッドだった。
僕は素直にそこへ寝ると、マスクを着けられた。
「はーい、じゃあ10秒数えてねー」
1,2,3...と、数えていくうちに僕の意識は薄れていった。