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転明記 VRMMOってどこでもこうなの?  作者: 朝宮ひとみ
9章 惑星を創る 世界を造る
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79話 俺のはじまりの地から

 夕方、寮に着いた。荷物を片付け、準備万端にしてから会社に向かった。VR室へ行くと俺のために一台のマシンの席が空けてあった。


「行ってくる。」


 俺が言うとVR室内の人たちが声をかけたり、見えるように手を振ってくれた。隣の席で、ユイももう準備を終えて絶賛スタンバイ中だ。




 俺が降り立ったのは、アメリアの街の路地だった。空き家らしい、木でふさがれた窓が目に入った。明るいほうへ向かうと、ゲームを始めるときに降り立ったあの広場だった。ベンチにフェーニアが腰掛けていて、俺が声をかける前に向こうが走りよってきた。


 冒険者登録の建物は、実際は役場のようだ。冒険者とは違うが旅の間の身分証となる登録証を発行する受付があった。申請してあったらしくフェーニアが二人ぶんの登録証を受け取った。俺は彼と同じ町の住人という事になっていた。


 地球のパスポートよりもはるかに厳しい仕組みになっていて、身分証は発行された場所によって効力が及ぶか及ばないかがハッキリしている。エルフの町の身分証より、アメリアで身分証を貰っておいたほうが、広い範囲で身分を保証してもらえるようだ。


 装備はゲームを始めた頃にテンメイに着せていたのと同じ胸だけの皮鎧と篭手と脛当て以外は普通の布の服だった。

 ゲーム中と違い魔物に頻繁に出会う事はないのになぜ手足は金属鎧のものなんだろうと思った。フェーニアが、乗鳥に乗る人はつけていてもいいんだよ、と言った。それ以外は、軍の人や傭兵だと思われるらしい。乗馬やツーリングの人が脛当てとかするような、最低限の防具か。


 預かり所へ行き、るーを受け取った。預かり所の人がサービスの一環としてるーの食べ物をくれた。魚の干物を裂いたものだ。ゲーム中だと気にしてなかったが、流通が未発達なため、内陸部は川魚か干物しか食べられないらしい。




 川に沿って商店や屋台が並び、俺たちは魚の串焼きを食べた。エルフの旅人が相席になり、彼の荷物から波動生物がひょこっと現れた。そいつは人懐こい様子もなく、睨みつけるかのようにじっと俺を見た。


「僕らは村を出たばかりだし、人間が珍しいのかな。」


 旅人は言った。どうやらアメリアにはまだ波動生物は居ついてないのだろう、と俺たちは話をした。そこへ、別の屋台で先に注文した焼き料理がどかっとテーブルに置かれた。猫耳のやたらふさふさしたおばちゃんだった。ゴブリンやコボルトを五人もつれていて、そいつらも料理を届けにきたようだった。


 三人でアメリアの別の地区を少し見てから旅人と別れ、港町タニーアへ向かった。俺はるーに乗り、フェーニアはレンタルの乗鳥を借りた。


 タニーアでは一泊し、街を見て回った。波動生物がゲーム以上にはびこっていた。ただそれ以外は落ち着いた町だった。


 逆に川を反対に辿って、アメリアの東の森へ行ってみると、ゲーム的な強い魔物が出ない事が分かった。襲ってくるのは畑クエストのウサギ程度で、傭兵や旅人など護衛を三~四人以上つければ安心して道を抜けられた。

 俺たちも途中で出会った旅人に護衛を頼んだ。フェーニア一人に任せるのは、本人が腕に自身があろうとも、さすがに悪いと思ったからな。


 旅人の行き先の都合でアメリアを中心としたルプシア国を迂回するように北西へ進み、ツァーレンをはさむように道が東西へ別れる。

 ゲーム中では行く機会のなかった北西の端を目指してひたすら北上すると、だんだん道は細くなり、舗装がなくなり、人が通るくらいの幅になって、小さな村へたどり着いた。

 エルフが珍しいのか、フェーニアを見てひそひそ話をしている人が目についたので村には入らず、少し手前の別の村で一泊した。村と村の間は草だらけか、砂利だらけか、たまに変な遺跡が点在していた。


「古いエルフの文明の遺跡だ。こんな北のほうにまで残っているんだね」


「頑丈な建物の跡みたいだけど、なんで滅びたんだ?」


「ほとんどは戦争だよ。大きく二つの派閥に分かれて戦ったんだ。勝ったほうも疲弊して、維持できなくなったんだ。そこでドラゴン族に調停を頼み、戦争はもうやめようってことになったんだよ。」


「なんかドラゴンに滅ぼされたとか言う伝説があったような覚えがする(ゲーム内の設定の話だけどな)。」


「ああ、場所によっては停戦せずに抵抗したりして、調停が成立して以降に攻撃されたんだよ。大げさに描いてあるだけさ。伝説とか神話って言うのはそういうものだよ。

 その代わり、必ず何か元があると僕は思っているよ。」


 引き返してバルディリアへ行き、南のルシエンを通って山地を抜ける。

 町の周辺と、通っている街道に沿って所々宿泊所が立っているところは森になっているが、他は地面の下から岩がむき出しになっていたり、山の斜面で風が吹き付けたり、気候や天候からくるダメージがでかい。

 宿屋や酒場で情報を仕入れなかったら、肌が乾燥して割ってたかもしれないし、岩場で足を滑らせたりしたに違いない。


 山を抜けたところに国境の関所があって、そこまでが全部バルディリアの領土なんだな、と感じさせられる。小さな町になっていて、関所と宿泊用の土地、そこそこ整った宿屋と乗鳥用の飼育舎もある。

 山がきつかったのと、俺たち以上にるーたちを休ませたくて、数泊してから砂漠用の装備を整えた。

まだまだ遠慮がちに作業する毎日です。普段どおりにやると右腕と肩甲骨が痛くなるし、痒みがひどかったあたりが痒くなります。

そろそろ作品全体の閉めも考えたいのですが最初の予定がこの章の前半部分のあとにエピローグという形だったので、全く変わってしまいました。

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