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転明記 VRMMOってどこでもこうなの?  作者: 朝宮ひとみ
9章 惑星を創る 世界を造る
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77話 割り切れないのは俺のほうなんだろう(上)

 八月、秋の大型ゲームイベントでの製作発表用のPVを撮るために、俺を含めたテストプレイヤー十人はテストサーバーにログインした。VR初期のような、完全に感覚と同期しない状態で、画面に囲まれてプレイする。


 ログイン前に、種族や装備で見た目をわかりやすくした撮影用キャラクタを割り振る。


 一人目は主人公として設定した銀の鎧と長剣を持った白人風の男性。最初は金色メインの鎧と剣だったが、他のキャラと並べたときにウザそうだという意見が半数を超えて銀系になった。その代わりに細かい文様などに紅色などを入れて、埋没しないように工夫されている。

 動かすのは男子大学生。俺と同じようにP.F.O.事件の被害者の一人で、アルバイトとして所属している。


 二人目は白地に青い文様入りのローブと軽装鎧の黒髪アジア人風男性。遠距離から魔法を撃ち、距離が詰まったら支援魔法かけつつ自分も剣を抜く。俺が担当するのはこいつだ。女受けしそうなイケメン顔で恥ずかしい。


 三人目はこげ茶や真っ黒なチュニックやローブのいかにも魔法使いな金髪エルフ女性。がんがん攻撃魔法を撃つ。エフェクトの画面映りについて撮影係と相談して考えたりめんどくさい役目だ。


 四人目は日焼けした肌が怪しい踊り子の紫髪猫獣人少女。猫人は身長が百三十センチくらいで、全身毛だらけだ。胸と股間だけは隠すがあとは重装備しない限り服を着ない種族だ。素早さを表現するにはどうしたらいいか、これまた話し合いをしながら装備の見た目や武器、使う技を考えなくてはいけない。


 五人目は草色の軽装で弓を背負った緑髪のエルフ男性。弓と笛を使う。笛は呪歌という技能で扱う。効果はパーティ全体にかかる。中距離支援という感じだ。一人ひとり映るシーン以外で目立ってはいけないが、あまり埋没しても何をしているか伝わらないから立ち位置や移動が難しい。

 撮影なのでタイミングはそんなに気にしなくていいと言われているものの、操作するおじさんは中距離キャラに慣れているらしく、テスト撮影ではキャラクターは絶妙な位置で映りこんでいた。


 六人目はでかい斧を背負った歴戦風のドワーフのおっさん。防具が地味なぶんなのか、斧が黄金色。担当は還暦過ぎたばかりというおじいさんで、つい口に出した掛け声やセリフが妙にキャラにあってる気がしてしまう。俺だけじゃなくて、何人かが休憩のときにそう言っていた。


 七人目は赤い地に白い刺繍のチュニックと白い杖の回復魔法要員の女の子。アルビノのエルフで、シェールを髣髴とさせる。担当の女の子が操作に慣れるのに時間がかかっていて、誰からともなく声をかけて助けていた。


 八人目はP.F.O.の両性族に似た青白めの肌をした水棲種族。開発初期には『カッパ』と呼ばれていた。川や湖のそばでは水を生かした攻撃をくりだす技能がある。その中で見た目が派手そうな奴をいくつか撃ってもらう。


 九人目は太陽に当たれない吸血鬼で、日光に耐性がつく装備や技能を身につけないといけない玄人向け種族だ。

 撮影に複数の装備の着替えをするのだが、担当がそのマクロで遊んでいた。魔法や技能のエフェクトを振りまきながら魔法少女だーとかやっている。

 一応撮影して見返すとなかなか面白かったので、他の人も装備を変えるときにエフェクトを飛ばしはじめた。俺はちょっと光がでるくらいの地味な奴しかやってない。恥ずかしすぎる。


 十人目は召喚士の女の子。紺色の長い髪が切りそろえられていて、少し和風な髪型だ。召喚士はP.F.O.にはなかったので俺にはよく分からない。ゲームによって魔法タンクだったり召喚した精霊やモンスターをぶつけるだけだったり、自分も武器で切り込むとこもあるとかで、みんなバラバラな事を言いだして、開発部門から説明に来た女性が怒っていた。

 担当だった女の子を困らせてしまったのもあり、女性がそのまま自分で動かす事になった。召喚した精霊によって異なる魔法を使えたり能力が変わったりする。


 パーティは六人制なので戦闘の撮影は交替しながら行う。一戦ごとに誰を、もしくはどの武器や魔法、効果を目立つようにするか、どんな映像を撮るのか、決めておいて作戦を立ててから戦う。


 映像の出来上がりの長さは、コマーシャル程度のものと、数分のもの、十五分以上あるものが決まっているので、まずはそれに必要なぶんを撮影し、他にPVが必要になったらなるべく使い回しやストックから取り出すことになる。うまく撮影できても、何回か同じ場面を撮っておく事になり、一戦撮るのに、戦闘時間の五倍か十倍はかかっている。


 休憩のときは一時停止をかけておいてVRマシンから離れて食べたり飲んだり話し合ったりした。撮影を行う間にシェールから呼び出しがかかったが、到底行けそうにないのでリアル数日待ってもらったこともあった。




 ゲームイベントは九月末~十月の金土日に行われる。今年は九月の連休が明けた次の週末だった。お盆前に業界ニュースのサイトで発表されてから、新聞に載ったりテレビのワイドショーでも軽く取り上げるところがあった。


 撮影後ゆったり休みをもらえた俺は、お盆のすぐ後に法事があって余分に実家に滞在していた。そこでワイドショーを親や親戚の横で見ていた。前回の様子として、有名スマホゲーのブースがちらっと映った時に姪や甥が一瞬キャラ名かなにか叫んだ以外、特に誰も反応しなかった。


 そんな休みの間のある日、俺は姪のスマホゲーの相手をさせられ続けたあとに部屋に逃げ込んだ。台所から持ってきた飲食物や、実験のためにあの世界から持ち帰らされた甘どんぐりを、冷房のあまり効かない部屋で齧っていた。その間、姪はずっと部屋の扉を叩いたり突進したりと攻撃の手を緩めない。

 甘どんぐりは三つくらいだったからすぐ食べてしまった。俺は電話の子機に向かって


「誰でもいいからあいつの突進止めてくれよ戸が壊れる」


と叫んでおいて適当にまどろみ始めたが、鞄の中で会社用のスマホのアラームが鳴り出した。シェールの端末からだった。


 電話に出ると、休み明けに数日開けておいてくれないか、とのことだった。話せるだけでいいので先に説明してくれと俺が言うと、ユイは周りに人が居ないかどうか聞いた。

 俺は、すかすかな日本家屋なめんな、と言って一度電話を切った。仕事の話をするから離れに来ないようにしてくれ、とその日の人払いを親に頼みつつ、鍵と掃除道具を探した。

次回78話は16日にアップします


一ヶ月たって疱疹はなくなりました。

しかし、痛くなくなったと思ったら何もできないくらいに痒かったですし、皮膚にシミみたいな痕がひどいです。痕はすっかり消える事は無いでしょうがもう少し薄くなるなりしてほしいです。

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