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転明記 VRMMOってどこでもこうなの?  作者: 朝宮ひとみ
9章 惑星を創る 世界を造る
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69話 金色の髪をした神

予想最高気温38度というのを朝知って、一番涼しい部屋で冷房かけてたんですが、出かけた間に父(冷房嫌い・高齢者)に消されました。34度になってましたが諦めて冷たい飲み物でしのぎました。


18時前に自室に戻って温度を見たら、風が通るように扇風機を回しっぱなしだったのにも関わらず35.5度だったので、移動できるようにタブレットがほしいと思いました。

 一週間土日込み七日のあいだイメージボード作りと会議に明け暮れた次の月曜日、俺は朝から一日ぼーっとして気が付いたら夕方にソファの上で目が覚めた。


 時間的にはちょうど夕食だし、まずは何か食べようと思い適当にレトルトの調味料を開けてチャーハンにして食べた。それを片付け、思いついた事があったのでささっとスケッチを描きそこにメモを添えていたところで携帯が鳴った。着信音を変えてある奴が流れてきた。会社への呼び出しかつ、呼んだのはユイ(とシェール)だ。

 腹が落ち着くまで待って風呂に入り、それから会社に向かった。魂探しの時間だ。仕方が無いから寝る時間は向こうで取ろう。あんまりやっちゃあいけないことなんだけどね。




 後の時代にはエル・ルシエンが出来るあたりか。世界随一の大山脈と、取り囲むように広がる世界最大の森に、俺たちは送り込まれた。まだ標準種どころかエルフもドワーフも両性種もいない。ゲームだとイベントNPCしかいない亜人種のひとつ・通称ゴブリンが数人、野営の準備をしているのと、時々野生動物が通る以外、生き物は見えない。あとは虫と鳥か。ゴブリンたちを避けて、細いわだちも無い木々の間を慎重に通り抜ける。


 ユイが言うには、『はじまりの十二人』が生まれるよりもはるかな昔に、俺たちは来ている。あと数日、のちの東の集落のあるよりもさらに東の完全に未開と考えられた場所を目指しているところだ。なぜ「考えられた」なのかというと、標準種含む『人間』もエルフもそこまで踏み込まなかった場所で、古い言い伝えにのみ残る集落だからだ。

 こうやってユイに連れてこられたという事は実際に何らかの集落があって何かがいるのは間違いないのだろうけど、俺もフェーニアも半信半疑のままついていっている。


 人間と出会うはずのないこの時代に合わせ竜人にみせるために、俺たちは到着したときすぐにおしろいで化粧をし、魔法で角をはやし、それを安定させる薬を飲んでいる。薬と魔法の効果で、ドラゴンの姿を幻影で見せられる。姿だけ見せて、ユイに載せてもらえば、見かけだけはドラゴン四体が飛び去る姿を見せられるわけだ。


 その化粧で顔がべたべたする。サラリーマン時代から思ってるんだけど女ってスゲーな。こりゃ確かに冷房効いたところから出たくないわな。おかげで顔が痒い。塗りなおしできないから上から粉をはたく。布で拭かずに押さえて汗を吸い取らせ、粉を薄くはたく。シェールが手馴れた手つきで目元や口紅まで塗りなおしてくれた。


 夕方まで移動し、野営して、夜が明けたら移動。繰り返しだ。化粧は寝るときしか取れない。目が覚めたらまず薬を飲み、魔法をかけなおし、化粧をしなおす。おかげで下地だけは自分でぬれるようになった。何日か繰り返したあと、日が沈むぎりぎりに、確かに集落があるのがわかった。すぐに挨拶して泊めてもらう交渉をした。




 集落は切り倒した木と、どこから調達したのか分からない奇妙な金属で出来ていた。

 そこに住む人は、一見すると肌が白いだけで標準種に見えたが、明らかにエルフくらい背が高くて、耳が少しとがって細めだった。そして、瞳の色が透き通るようなエメラルドグリーンだ。

 標準種でも、黒目と蒼い目の両親の子は緑の目になるが、それとは色合いが違っていた。碧眼の民のような、濁りやくすみの無い、まさにエメラルド色だと思った。いや、エメラルドなんて現物を見た事は数回もない。碧眼の民もゲーム中は他の人よりは圧倒的に見慣れたと思うが、それでも人の目をじろじろ見ていたわけじゃないから、あくまで印象ってことで。


 暮らしているのは二十~三十人くらいに見える。どこかでこもって作業している人が居るとかで、もう少し多いと聞いた。


 小屋をいくつかくっつけたような建物ひとつと、それを囲むように金属で出来た何かがタイルのように地面に敷き詰めてある。通路を示すように、何色か違う金属が使ってあり、俺たちはそのうちのひとつを進んで行き着いた小屋に入った。

 照明は日本で使っているものより少し暗くて、見た目はキャンプで使う設置型の懐中電灯のようなものが床に置かれていた。


 荷物を降ろして寝る支度をしていると、森で見かけたゴブリンが入ってきた。彼らも客として迎えられたようだ。ゴブたちは、俺たちを見ると飛びつく勢いで抱きついて、こわいこわい言い出した。


「こいつら、わるいかみ、おそろしいあくま、いのる。しろいのにくろい、くらーい、かみ。」


 必死にまくし立ててくるがよく分からない。俺とフェーニアが顔をあわせて困っているとシェールが、宇宙人だったんだ!と叫んだ。神になってから人間離れに拍車がかかってきたがとうとう見えてはいけないものを見ちゃったらしいな、と俺が考えているとシェールにおでこをはたかれた。俺が怒るとユイが間に割って入って止めてくれた。

 改めてシェールに話を聞こうとしたところで、俺たちもゴブたちも全員、集落の人に呼ばれて小屋の外に出た。

 金属の舗装や壁から出て、森の中に向かうわだちを歩かされた。たった数分だが歩いていくと途中で目をつぶるように言われた。




 目を開けるまえに、機械のようなしゅーという音がして、変なにおいがした。工場の油の臭いに何かを加えたような臭いだ。


 目を開けると、巨大な金属の塊があった。ところどころこげて黒くなっている。

 その塊の一部に、後から描かれたのだろうか、何か白いもので壁画のようなものが描かれていた。人間のような形の、黄色で塗られた大きなもののそばに、棒人間が沢山描かれている。棒人間の一部は赤で塗りつぶされている。空にいくつかドラゴンらしき姿と、飛行機のようなものが飛んでいるように見える。


 ゴブたちはこわいこわいと言いながら目を手のひらで覆って騒いでいた。泣いてるやつも居る。でも、大きな黄色人間がいくつか書かれた中に、一部が黒く塗られたものを見つけたとき、俺も、コレは邪神だ、と、思った。


 こげた金属は、宇宙船だ。集落の人は、宇宙人だ。シェイリア人ではないし、もちろん地球人でもない。学名とか天文学の授業で出てきた恒星の名前のような、めんどくさい名前の星から来た。


 この人々は、不時着してしばらくしたある日、神を見た。彼ら自身が落ちてきたように、遠い空から飛んできて、彼らの前に降り立った。その神は、基本的に姿が見えない。黒いものに見えるというか、ただの真っ黒に見えるが確かに存在するのだという。

 それは姿を変え、集落の人と同様の、長くて大きくだぶついたローブに長い髪をなびかせた人のようになった。人間部分は黒いが、ローブはくすんだ黄色で、髪は実った穀物のような黄金色をしていて、髪をなびかせてたたずむ姿はまさに『神』であり、その美しさは何物にも変えがたいものだという。


 神は集落の人に、自らの力の一部を分け与え、確かに交流したというその証として書物を一冊残していった。その書物が有る限り、子々孫々にわたって力を貸すという約束をした神は、集落の人々を敵とみなした数体のドラゴンを一瞬でほふり、宇宙の彼方へ去っていったという。


「黒い……黄金色の美しい髪がなびく……黄色……黄色と黄金色で黒い……」


 説明を聞き終わってからずっとシェールはぶつぶつ呟き、ユイが詠唱を頼んでいる間じゅう、ずっとうなっていた。そして、交渉が済み、ゴブたちも帰らずに集まってきてくれたところでシェールがあほなことを言い出した。


「あいつだ。とても昔の、めちゃくちゃ有名な漫画に出てくる、すっごくうざいヤツ。どす黒くて、見た目が黄色くて、強い。めっちゃつよい。んで、髪はなびくし、見た目は妖しいイケメン。おk?」


 ユイが即手を出した。唇をつまみ上げ、シェールがもがもが言うのをやめてからそっと手を離した。白い人たちも怒っているように見える。ゴブたちは震えている。フェーニアは不安そうだ。俺も正直ゴブと一緒に震えたい。


 フェーニアが勇気を持って場を落ち着けてくれ、詠唱の儀式は行われた。白い人々の声は、ホーミーのように二つ違う声を一度に出しているようにハモって聞こえた。




 ちなみに、俺にもシェールが何の事を言っているかわからなかった。スケッチを見せた社員のなかに数人、候補がなくもないという人が居たが、スケッチしたあの壁画からたどり着けそうにない、と言っていた。

 しかも、候補のひとつが、俺の名前のときに出てきたテンメイ君と同じ出身だった。説明を社員から聞きながら、そいつよりもシェールのほうがどす黒いと俺は思った。

塩分補給用にポテチやフライドポテトを買う事があります。今日買いそびれたので塩舐めるかめんつゆにします。皆さんも、水分だけでなく塩分にも気をつけてくださいね。

しんどいときって、経口補水液がほんとうにおいしいですよ……



(軽度の熱中症経験者です。意識だけは気をつけてどうにかなるものではないので、気付いてからある程度収まるまでは恐怖でした。)

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