63話 神に作られた人間
フェーニアの家で少し休憩し、次の目的地をユイに尋ねた。
「ふむ、そうだな。何も無ければ、もう移動してもいいぞ。」
竜人って、全員がこんな風に人間に対して尊大なのだろうか……? ともかく、同じ配合や味はしばらく飲めないであろう特製ハーブティをじっくり味わいつつ、説明を聞いた。
向かうのは、『はじまりの村』。ゲームではエリア移動に関するイベントと、神話に関するちょっとした紹介しかなかった。名前のとおり、史上初の人間の村だ。神話では、十二人の神々がそれぞれの魂を使ってひとりずつ人間を作り、全ての人間の祖先となった。その十二人がつくり、暮らした村だ。
ゲーム中じゃもちろん会えない相手で、なおかつ、いわば旧人や原人?に会うようなものだ。意思疎通が出来るかどうか怪しい。
ゲームデータの名残で、俺が話す言葉は今でも、人間の国の多くが使う標準語に翻訳されるけど、その標準語は、歴史が始まって何百、何千年かかってできたものだ。それどころか、日本語でも数百年さかのぼったらもうさっぱりだよな。
意思疎通についてどうするのか。俺だけじゃなくフェーニアも心配していた。エルフは人間が生まれるより前からいる種族だが、人間とエルフが接触するのはもっと人間が広がってからだったらしいし、エルフの言葉は人間の言葉と全く違うので、同じ時代のエルフに通訳になってもらう事はできない。
「大丈夫だ。気にするな。全てわたしがやる。」
全会一致でユイに丸投げだ。グラスを片付け、俺たちは村から少し離れた森の中へ飛んだ。
そしてやっぱり言葉が通じないことで、全く意思疎通できなかった。森から現れた俺たちを見た数人が全力で村へ走って、農具を構えた男達を呼んできた。やばい。
こっちにその気が無いのに攻撃される!と思って、魔法詠唱を試そうかと俺が息を整えたところで、彼らの動きが止まった。目線を追うと、ユイだった。普通にドラゴンになってた。
ユイが吠えると、その場に集まった十二人は頭を地面にこすり付ける勢いでひれ伏して、何か祈るような、困ったような声を出した。そのままユイが詠唱を始めると、十二人は顔を見合わせたあと、ぽつぽつと続いた。ドラゴンの姿でも、少女状態と全く同じ声が出るんだな。いや、少女状態でドラゴンの咆哮してたし、どっちでもいいのかもしれない。
森へ去っていく俺たちに、十二人は万歳のように両手をまっすぐあげた姿勢でしゃべりかけてきた。たぶん見送りの言葉なんだろう。
「わたしを、創造神の使いだと思ったようだ。まあ、人間が竜と出会うのは、エルフとの出会いよりも遅く、そして記録に残らなかったぶんを考慮しても、数少ない。彼らにとっては、何なのか分からないものだ。あれだけの反応で済んだのは僥倖であろう。」
シェールはふんふんと頷いていたが、俺は心が妙に疲れたし、フェーニアもよく分からないという顔をしていた。
次は数年あとらしい、森の中だ。次もエルフなんだな。最初に出会った長老のように、千年は生きているんだろうな。森は魔物も野生動物もやっかいだが、どうするんだろう。
出来るだけ、木曜日の時点で翌日分とその次の分が出来ているようにと気をつけています。少し前の章(エンディング分岐あたり)で10本~15本書き溜めをしたら管理画面が見づらくてやめました。
それに、投稿話数と書いている話数があまりに離れると、前書きやこのあとがきを書くときにとっても書きにくいのです。




