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転明記 VRMMOってどこでもこうなの?  作者: 朝宮ひとみ
第2章 VRMMOに慣れてみよう!
8/100

第8話 宿屋で夜を明かしてみよう!

予定が空いてかけそうだと思ったらとにかく書いていくようにしないとどんどん間があきそうで怖いです。

 俺たちが街へ戻ると、外は真っ暗で、門の外に居たら何も見えないんじゃないかと思えた。目が慣れて、少しずつ星が見えてきたけど、逆に、少なくとも俺たちが歩いてきた道沿いは、灯りになるようなものがあまり無くて真っ黒なかたまりに見えていた。


 前に泊まった宿の場所を覚えてなかったので、教えてもらおうと思いメニューからシュクレ先輩を呼び出そうとしたが、インしてないと分かって少し残念だった。安い宿知ってるぜ!とか自分からみんなに言い出さないでおいてよかった。


 話し合って、エリーとユウキがいつも泊まっているという宿屋を使うことにした。先輩と泊まったところより少し高いが、食事は朝だけじゃなく三食とも付くし、スキルがあれば料理させてくれるための部屋まで用意されている。残念ながら俺たちの中ではユウキしか料理関係のスキルを持っていないけどね。


 チェックインを済ませて荷物を置くと、クエストの報告の為に最初に冒険者登録したときの広い建物に行くことにした。全員で『倉庫』からウサギのなれのはてを取り出して合格を貰うと、クエストをくれたあの門番にも挨拶したいと思った。それをみんなに話すと、ユウキがそんなことしなくていいとかブツブツ言いながらも


「どうせ行くなら、ウサギ肉でも持っていきなさいよ。あたしが焼いてあげるから感謝しなさいよ。」


賛成してくれた。『倉庫』からウサギを取り出して渡すと、ユウキはささっとメニューを操作して、どうやら技能を使って解体してくれた。それから、時間もないし、といって同じように技能で次々と焼いてくれ、俺の『倉庫』に入れてくれた。



 門へ行って今立っている門番に話をすると、控えまで案内してくれた。待っているとあの門番さんが来て声をかけてくれた。


「おう、今日はずっとやってたのかい?」

「はい。あの、これ、どうぞ。」


 話すことが浮かばなくて、つい本題に入ってしまった。ユウキが睨んできてエリーが困った顔をしているなか、俺がウサギ肉のステーキをならべると、周りのほかの門番達もみんな匂いに釣られてやってきた。どうぞ、食べちゃってください、と俺とエリーが言うと、門番達は喜んで食べてくれた。


「こんな出来立てのステーキなんてどれだけぶりだろう」


涙を流している人まで居る。


 ずっと突っ立っているのも変なのでおしゃべりをしたり、街のことを聞いたりしたあと、俺たちが帰るときに、あの門番の人が何か袋を持ってきた。中にはコインらしきものや手のひらで隠れるくらいの軽い石っぽい札がぎっしりだった。


「お礼なんてなんもねえから、無粋だけど、ステーキの代金だと思ってもってってくれ。」


 俺はびっくりしてしまって、何も返事できなかった。ユベールなんか喋れないどころか固まってしまって、倒れる前にユウキに蹴られていた。ミミとエリーが丁寧に挨拶してくれて、穏やかに別れることが出来た。




 宿にもどるとき、戻ったら夕食のキャンセルをして部屋に来いとユウキが言った。(もちろん男女で部屋は別だからな。)俺とユベールは返事だけして後は黙っていた。戻ってすぐに宿の人に夕食をとってきたことを伝え、寝るための支度をしておいてから隣の部屋の扉をノックした。扉を開けてくれたのはエリーだった。


 来いといった理由はもちろんお金の山分けだ。単純に5等分するのかと思ったら、ユウキは全部数えたとか言い出し、さらに倒したウサギの割合で分けると言った。それじゃあじかに殴ったりしてないミミだけ極端に少なくなるのではないか、と俺が言うと、


「ミミのぶんは、四人の平均で。これでいいでしょ?」


ユウキは即反論して早速分け始めた。どうやら、報告のときに申告したウサギの数をメモしていたようだ。分けながら、ユウキは言った。


1.このことを他の人に漏らさないこと。

2.できるだけ使わないでまとめて『倉庫』に入れておくこと

3.しばらくはこの五人でパーティーを組んで行動すること


 1はもちろんのことだ。何か問題になったら困るからな。3も同様で、他の人と居なければ話すことも無いだろうと。しかし、2が分からない。これで装備とかアイテムとか買えばいいのに。そう思っていたらミミが教えてくれた。


 このP.F.O.では、限られた種類の敵しか、お金をドロップしない。つまり、昔のRPGみたいにぐるぐる敵を倒してお金儲けは出来ない。さらに、ドロップ品の買取りも数や種類に限度があるようだ。買い取り価格も安い。そしてクエストの報酬は安い。


 それに、今回のこの金額、ひとりあたりでは、今居るような安い宿にひと月くらい泊まると無くなるらしい。リアル時間で1日強だ。連休にどっぷりやっている人からすればあっという間だろう。何より、宿屋に泊まった状態でログアウトすると、ずっと宿屋に泊まった状態になるらしく、ずっとではないが数日分は料金を取られるため、思っているより宿代はかかってしまうのだ。


 ある程度レベルが上がると優待券みたいなものがもらえて多少楽になるのと、別荘を作ったり買ったり貰ったりできるシステムがあるので、そっちに家具をそろえるという手もある。

 現状では、別荘を持っているのはユウキのような最初期からいるプレイヤーの中でさえも4~5人の『廃人サマ』と、製作会社のアカウントの半分NPCみたいなキャラクタがこれまた4~5人だけなので、別荘のことはまだ考えないほうが良さそうだ。



 明日の予定などを話し合ったあと、俺とユベールは部屋に戻った。この世界は意外と水が豊富な地域が多いらしく、宿屋には客用の浴場が併設されているそうだ。女性陣はさっさとそっちへ行った。

 ユベールは部屋備え付けのシャワーでいいと言い出したが、さすがにあれだけ戦った後は汗くさかったり血なまぐさいだろうと思い引っ張っていくことにした。



 装備や脱いだ服を部屋番号のかいた大きなロッカーに放り込むと、俺たちは体を洗ってゆっくり湯船を堪能した。どうせなら壁に風景とか絵とかあったらいいのにな。無地のタイル張りの空間は少し寂しい。

 女風呂のほうからはきゃっきゃっとはしゃぐ声がする。ユウキだ。いじられているのはミミだろう。少し涙声になりかけている。こちらは俺たち二人のほかはゴツイおっさんが数人向かい合ってじっと黙って座っている。


 湯船は浅くて、底に座っても半身浴状態で、時々肩にお湯をかけてやらないと冬は冷えそうだ。なお、両性は繁殖期以外は男女どちらにも入れる。PCは繁殖期が無いらしいのでプレイヤーの性別とか好きなほうに入ればいいのかな。


 沈黙が気持ち悪くてユベールと話をすることにした。まず、なぜテストプレイに応募したのか聞いた。

 家族がみなVRMMO好きで、自分だけなにもプレイしてないから兄弟が勝手に応募しようとしたからだと返してきた。兄弟が自分が次にやろうとしているVRMMOのテストプレイヤーに応募しようとしていて、どうしても家族と同じのをプレイしたくなくて、たまたま家族の誰かが捨てようとしていた申込書を使ったのだと言う。


「元々、ゲームとか苦手で。ぼく、あんまり気が乗らなくて。きっと、一緒のとこだと、手伝いとか、やらされるんじゃないかって、思ってて。」


 分かる。俺は兄弟がいないけど。子供のころあるゲームソフトが流行り、俺のクラスメイトの一人は兄貴のパシリをやらされていた。

 レベル上げの為に延々ダンジョンと街を行き来するのをやらされて、体を壊して休んだことがあって、担任が家庭訪問の日以外にも何度か様子を見に行ってた。俺は家が近くて、そこそこ仲良かった数人で先生にくっついていって、そいつが元気なときは外に連れ出して遊んだりしたっけな。


 ユベールは家族と離れたくてわざと遠くの大学を選んで入学したんだと話してくれた。親は仕事もするし家事もしているけど、それ以外はずっとゲームをしているのだという。


 小さい頃だと親に保育園や小学校でなにがあったとか話をしたかったり、勉強で分からないとこがあって聞きたいと思うことがあるだろう。彼の親はゲームしながら適当に聞き流して「ふーん」で終わり。勉強は「塾か先生に聞きなさい」。


「最初は、このゲームも適当にやってやめようと思ってました。なんていうか、ゲーム自体が嫌いになっちゃってて。でも、こうやって、誰かと話が出来るって、いいですね。」


 そのまま大学のこととか話を聞いているうちに、女湯からふたりとももう出なさいよーというユウキの声が飛んできた。脱衣場で時計を見ると18時になるところで、もう夜中だった。俺たちは用意された着替えを済ますと早歩きで部屋に戻った。もうあとは寝るだけだ。


(この世界は一日が25時間で、春分の日の夜明け=新年の0時となる。大体地球の6時くらい=0時と考えると便利だ。差の一時間?もちろん寝るに決まってるじゃないか!)



 ログイン状態で眠るのは初めてだから、なかなか寝付けない。子供の頃、遠足だろうが運動会だろうがすぐ寝入ったものだが。ユベールはもう寝ている。俺は今回インしてからのことを思い返しつつ、4人の仲間についてぼうっと考えてみた。


 エリーさんは頼りになりそうだし、ユウキはうるさいけどいろいろ引っ張ってくれる。ユベールは暗い奴かと思ったが、大学では友人とかそれなり居るみたいだし、結構いい奴だな。ミミちゃんはまだちょっと分からないけど、大人しいのにレベルも高いからそれなりやってきたんだろう。

 キャラはエルフのエリーさんが一番上だが、それを別にすれば俺が一番年長だ。頼ってばかりじゃなくて、レベルやスキルが揃ってきたら俺から提案したり、動いたりしたいな。




 翌日、身支度をして食堂へ向かったら、まだ誰も来ていないと思ったのにみんな朝食を済ませていた。起こしたりしなかったのかとユベールに聞いたら、疲れてるみたいだったから寝かせておこうということになったんだといわれた。少し寂しかった。おかしいな。折角のハタチ以下の体なのにな。疲れが残るなんてどういうことだよ。やっぱり戦闘なんて普段使わない筋肉あちこち使ったんだろうな。ははは。

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