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転明記 VRMMOってどこでもこうなの?  作者: 朝宮ひとみ
9章 惑星を創る 世界を造る
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62話 波動を集めよう

 行き詰った俺に、ユイが話しかけてきた。ゲームに入りたいか?と聞かれた俺はもちろんだと答えた。でももうすぐ使ってしまうんだろ?


「お前にちょうどいい仕事がある。ゲームにも役に立つ経験が出来るだろう。」


 その日の夜、夜食の惣菜パンをかじりながら、俺やチームの数人がVR機械室に集められた。びっしり並んだ乗り込み型の機械。いくつか、デバッグ担当の人が使用していて、開発モード起動中という手書きの注意書きがピンで留めたりガムテープで張られたりしている。


 人数分の機械に手を当てて何か唱えた後、ユイに促された俺たちは機械に放り込まれた。俺はすぐにはめられたと気付いた。俺だけゲームになっていない、データそのままに放り込まれていた。ちっくしょう。


 強くてニューゲームとか、クリアデータでセーブポイントからおまけが見られるとか、クリアステージを自由に選択して遊べるとかそういうのを、複数のセーブにまたがってプレイできるような、そんな感じだと、ユイが教えてくれた。

 というより、シェールに吹き込まれていた。神様になっても相変わらずの性格してやがる。機械の起動画面みたいな灰色の視界が晴れると、懐かしい、森に囲まれた家が現れた。庭先には見覚えのある、目立つ柄の防具やアクセサリを見につけた乗鳥が一頭停めてある。その鳥を、エルフが撫でていた。


「テンメイ!久しぶりだね。」

「くるるー」


 やっぱり、るーとフェーニアだった。俺はるーの頭や体を撫でてやった。柔らかい感触を楽しんでいると、いつのまにか人間姿で降り立ったシェールに脇腹をつつかれた。


 俺が飛ばされたのは、『上位端末』の集めたデータの集合体が作り出す世界だ。ユイや竜人たちは『世界の記憶』と呼んだ。

 基本となる数万年分の歴史のほかに、計算によって生み出された沢山の別の歴史の枝が伸びている、巨大な樹木と思えばいいらしい。全体図とか、どこに該当するのかとか、一切分からない。

 ユイの何倍も生きているという、とある竜人の説明をなんとかかみくだいてみて思い浮かんだのは、なんつーか、地図の無い迷路だ。


 俺はこれから、あちこち飛ばされて、竜人が見つけた特定の波動を持つ人物と接触しなければならない。ユイとシェールだけで行けばいいだろうと俺は思ったが、人間の同行者が必要な理由があるらしい。俺はともかく、フェーニアは大丈夫か心配になったが、


「新しい星で再び生まれたとしても、それは全く同じ『わたし』ではないのだから、パラドックスのような問題は起きないし、難しいことを考えるより、君と旅する楽しみをとりたいな」


本人が納得しているのなら、まあ、いいか。


 食べ物は飛ばせないので、持ち物は身の回りのものを少し。食事代とかお金はどうするのかと思ったが、金貨や銀貨、金の代わりに使える鉱石を持たせられた。

 集めてみるまでどうなるか分からず、いつまでどこまで旅をすれば分からないのが怖いと思う。地球にいる俺の体は眠っていて、普通に生活するように行動すれば疲れも出ないらしいが、久々の感覚だ。少し町をうろついてから出発する事にした。


 最初の一人は、町の長老だった。エルフの長老だから、千年と数百年は生きている。町の奥にある巨大な樹木の幹にある穴にいるエルフに、ユイが長老に会いたいと申し出た。ユイとシェール、俺、フェーニアは木を覆うように螺旋を描く階段を登り、枝に包まれた円形の空間に通された。床は木の板で出来ているが、あとは全部巨木の枝が重なって天井や壁になっている。


 入るなりユイが古い言葉で話しかけ、長老もそれで応じた。古い言葉だというのはフェーニアが教えてくれた。


 ユイの言葉を追いかけるように長老が歌う。それが終わると長老は長い眉毛やまつげで隠れぎみの目を細めて、


「良い旅を。」


と言って目を閉じた。すぐに寝息が聞こえ、俺たちは退室した。入り口のエルフに挨拶し、適当な木々の影に入って、次の場所へ飛んだ。

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