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転明記 VRMMOってどこでもこうなの?  作者: 朝宮ひとみ
8章 再生を、諦めない
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56話 ドラゴンが出社してくるとかおかしいだろ

 あまりに突飛な話を聞いて俺たちが固まっていると、紡は続きを話し始めた。


「あと覚えてるのは、そのユイって子は、自分のほかにも竜人りゅうじんが十人くらいだったかな、地球に来ているんだってさ、そう言ってた。

 ……もちろん信じられない。もし本当だと素直にあのときに信じたとしてもだよ、あのコンピューターは惑星は滅亡したって言ってたじゃん。どっちがホントだよ?ってなるじゃん。


 だけど、あたしは、信じざるを得ないよ。だってあの子、ほかに人がいないからって、あたしの目の前で、ドラゴンになったんよ。大きさは女の子のままで、だけど、十分、怖いって言うか、迫力があった。

 その子、ユイが、なんか言うと、ユイの腕が、どんどん茶色くなって、ぱきぱき音がして、鱗が生えて、指の本数も変わって、爪が伸びて。背中から茶色い翼が生えて、ばりばり服を破ってた。足も真っ白くて細くて木の枝みたいだったのが、幹みたいにこげ茶色っぽいごつごつになって。」


 ユイは姿を変えたまま、低い、うなるような声で話を続けたという。


 シェイリアが滅亡するよりずっと前に、ドラゴンと竜人は別の空間を生み出す魔法を使って惑星ごとコピーを残し、人間以外のいくつかの種のみをそこへ移した。

 彼らは、人間よりも多くの波動を感じ、利用するエルフよりも、もっと多くの波動を感じ、利用できるのだ。紡はそうユイに教えられた。


 紡は、ユイを信じざるを得ないと強調した。

 外見も、声も、見た目で判断される年齢も、実際の年齢も、話し方やしぐさも、何もかも、シェールと紡は違っている。そして社内以外誰もその名で呼ばないのに、初対面で紡があのシェールだと見抜いたのだ。


 俺たちとはくだけた話し方をするから分かりにくいが、外での紡は、とても丁寧な、実年齢相応な話し方をする。調子に合わせて、声も少し低くなる。連絡のために社用の携帯電話にかけたとき、俺は思わず同姓同名の別人かと思ったくらいだ。補償の裁判などで声を端末から流したときは、家族や親戚ですら、別人ではないかとか、声紋を調べるべきだとか言い出したくらいなのに。




 紡がユイとの出会いを話した数日後、仕事中に突如入ってきたユイは、竜の声らしき鳴き声をひとつあげるだけで社内のPCやVR機械を動かした。彼女は席をぐるっと周った。


「あやつらのやり方は、仮初かりそめの、さらに仮初に過ぎない。

我らなら、すぐに再生できる。仮初ではない再生を、行えるのだ。お前達は、我々に協力するのだ。」


 あまりに尊大だが、紡の話を聞いていた俺たちは、ドラゴン形態が怖くて誰も何も言わずに俯いていた。


「返事をせい。我には分かるが、お前達にはお前達同士の返事が分からんだろうが。」


 俺たちは、はい、とだけ返事をした。何か言い返そうとか、そういう気は起きなかった。ユイは、声が小さい、と文句を言うと、動かした端末をしばらく見守ってから元通りにシャットダウンして去っていった。

次回は8日に投下します。以降この8章の終わりまで、金曜日に投下する予定です。

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