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転明記 VRMMOってどこでもこうなの?  作者: 朝宮ひとみ
第2章 VRMMOに慣れてみよう!
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第7話 戦ってみたら

やっと初戦闘です。今回はともかく後のことを考えるとR15つけたほうがいいのかどうか悩みます。

 行ってみると、畑がめちゃくちゃ広い。テレビ番組とかで見るアメリカの農家みたいな広さだ。そんな広さだから近いほうしか分かりにくいけど、あちこちで数人ずつ、ウサギやオオカミを相手している。


 農家の人が声をかけたのは四人の冒険者がウサギを数匹ずつ追い立てて殴っているところだった。俺に気付いた重装の女性が声をかけてくれて助かった。

「キミはボクが釣って来たウサギをとにかく殴って。回復は担当が居るから気にしないでいいよ。」



 重装の女性は言い終わるが早いか、ウサギを探しに畝を走っていく。足元に瓜か何かの葉が茂っているところで、慎重に葉をめくったりしている。


 俺以外の三人は、一人がその回復役だろうかいかにもな杖でとんとんと地面を叩いては呪文を詠唱している小柄な女性。


 もう一人はシュクレ先輩みたいな両性族でさらに背が低く、それでも1メートルくらいはありそうななぎなたで黙々と一発ずつ丁寧にウサギを刺している。


 最後に俺と同じいかにもな標準種の男性で、同じ剣と防具を身につけていた。数匹のウサギを退治して、~匹倒したとメッセージがポップしたところでひとまずアイテム欄にしまうことにしているようだ。


 俺は初期装備の鞄を見ながら、悩んだ。血まみれのウサギなんか入れたら…。


「はぁん?倉庫持ってないのあんた。」


 両性族の人が愚痴ってくる。そこへ「釣り」に行った女性が戻ってきた。釣りというのはモンスターを攻撃したりして気を引いて、自分を追いかけさせて戦う位置まで運んでくることだ。しかし今女性の後ろにはウサギは付いてこない。


「あのねえユウキ、倉庫はレベルを上げるか、新しくスキルポイントをつけるか、クエストをしないと使えないんだよ。……キミ、ごめんね。ユウキは口は悪いけどほんとは気配り上手なんだ許してあげてね。」



 「倉庫」はゲーム的なアイテム欄だ。確かにそこになら一杯になるまでウサギを入れても汚れないし重くないしかさばらないしで困らない。

 ダメもとでメニューを見たが、まだレベルは上がらない。スキルポイントも0のまま。ウサギ数匹じゃなあ。俺がそう言うとユウキはわざとらしいため息をひとつ付くと、貸しといてあげる。と言って匹数をメモした紙と共にウサギを自分の「倉庫」にしまってくれた。


「その代わり、今日中に使える冒険者になりなさいよ。」


 俺ははい、と返事するだけだった。横でもう一人の男性も怯えている。ユウキはそっちも睨みつけ、


「あ・ん・た・も・よ」


 念押ししてきた。どうやら俺よりも少し早くきただけらしい。





 重装の女性エリー(エレノア)がウサギを釣ってきて、俺とユウキともう一人の男・ユベールが斬ったり刺したり叩いたりして倒し、回復を唯一の回復持ちらしい杖の子・ミミが魔法でなんとかする。

 最初はなかなかウサギが見つからなかったり、隠れて出てこなかったり、ほかの冒険者に取られたりしたけど、二~三時間くらいだろうか、数匹ずつを何回も倒しているうちに、休憩(MPなどのリソースの回復)やアイテムの買い足しなどで人が少し減ってきた。ミミのMPが尽きてきたので、俺たちもあと数セットやって休憩しようと話し合った。


 集中していると分からないが、休憩しようと手を止めた途端に、剣がとてつもなく重く感じた。俺は付属の布で剣をさっとぬぐうと鞘に収納しようとして、そこへユウキがどなりつけてきた。


「ちゃんと手入れしないと抜けなくなるわよ。ここ、そういうところはリアルと一緒だからね。」


 なんか知らないアイテムを出してきて、布にたらして拭けと命令してきたのでその通りにした。ユベールも同じようにやらされた。

 しばらくは一緒にやることになるのだから、バカなことで手間取りたくないの、とユウキは言った。喋りからして多分女だ。外見も多少女性ぽい気がする。どうでもいいけど。


 手入れをしたところで、エリーとミミが「倉庫」からバスケットを取り出した。サンドイッチを頬張りながら俺たちは自己紹介しあった。



 エリー(エレノア)はエルフで、人間含む他の種族の女性はサイボーグでもない限り全身重装備にはなれない。装備がそれだけ重い。エルフは筋力が高いから胴だけならかなり幅広く装備を選べる。レベルが低めの装備や軽い金属の装備なら全身セットでも選べるくらいだ。


 今エリーがつけている装備も胴と脚、足、頭でセットで装備できる。だけどエリーは足の速さを生かすためにあえて足・脚の装備を軽くしているのだ。レベルは10で、武器はエルフらしく弓。


 長い金髪に青眼のいかにもな外見。本人もそれが好きで、キャラメイクしていてとても楽しいという。まえにやっていたVRMMOがなくなってしまったから移ってきたとのこと。ボクという自称はあくまでもキャラ付けだと最後に弁解していた。



 ユウキはエリーとプレイヤー同士が友人で、最初期のテストに申し込んだユウキがエリーを誘った。最初期からというだけあって、メニューを見せてもらったらスキルがやたらいっぱいあった。


 スキルは、現状見つかってるだけでも三桁はあるうえ、正式スタート時にはさらに追加があるというから恐ろしい。ユウキはとにかくスキルマニア的なところがあり、ポイントをあまらせるくらいならどんなスキルでも1しかつかなくても突っ込む。逆に言うと、2以上のものは使ってるということだな。



 ミミは二人がこっちで出会った友人で、回復魔法使いだ。回復や補助なら実装されている初歩の魔法は全部使えるんじゃないかと二人は言う。彼女だけ、このウサギ狩りは数日目だそうだ。レベルは15。

 すごく大人しく、自己紹介というか、喋ったのは全部エリーとユウキだ。後衛のというか自分以外の装備のことは俺には良く分からないけど、ミミちゃんの服には細かい文様の刺繍があちこちに施されていてびっくりする。

 金に近い茶髪で、柔らかくて細かくて、ゆるく三つ編みなのがほんわかした彼女にぴったりだと俺は思う。



 ユベールはレベル2になったばっかりで、ミミと別の冒険者がここでウサギ狩りをしてるときに、今の俺みたいに「ここに入れ」って言われて一緒にやってたらしい。

 らしい、というのはこいつ、俺以上にテンパリ野郎で、半日くらい一緒にいたとか言うくせにその冒険者のことを覚えていないと言い出した。


 その別の冒険者とやらは休憩とアイテム補充に行ったまま戻ってこなかったらしい。メニューのパーティー表示が消えてたのに気付いてからエリーたちが声をかけるまで、こいつとミミちゃんはずっとその場に突っ立ってたらしい。


 MP回復のためにヒーリングモーション入ってたミミちゃんはしょうがないとしてこいつは俺よりもはるかに対人恐怖というか何もしないやつだという予感がする。ユベールという名前もなんかスカしてる気がする。フランス語だっけ。


「それなら金髪とか銀髪でいかにもな外人にすればいいのに。だっさい奴。」


 折角俺は黙ってたのにユウキが堂々といいやがったのでユベールは目の端に涙を溜め始めた。エリーとミミちゃんがなだめすかして、残りのサンドイッチを食べて、見回りに来た農家の人に水を貰い休憩を終えた。



 暗くなる前まで俺たちはひたすらウサギを倒した。全員が10以上あればオオカミが出てもだいじょうぶらしいがもちろん俺たちじゃ無理だ。帰る前にレベルが上がった俺は「倉庫」を使えるようになり、自分の取り分のウサギをしまった。

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