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転明記 VRMMOってどこでもこうなの?  作者: 朝宮ひとみ
第2章 VRMMOに慣れてみよう!
6/100

第6話 戦ってみよう!

初戦闘!にぎりぎり入れませんでした。

 俺は何日かぶりにP.F.O.を起動すると、普通のRPGでするみたいに適当にNPCに話を聞いた。何度も話しかけると、リアルの人間のように表情を険しくして去っていく。


 数人そうやって不機嫌になるまで話しかけ、思わず

「すげーな!VRMMO!」

という何回目かのセリフをはいた。途中で一緒になったシュクレ先輩は肩を揺らして笑っている。ゲームによっては数種類しかセリフがないことも珍しくないらしい。


「でも、今はNPCに力入れてるゲームも増えてきたからねー。自動生成みたいなAI入れてるとこも増えてきてる。全部やってるわけじゃないから自信ないけど、今じゃ定型文が数種類ってだけのほうが珍しくなってるかもねー。」


 もう何年か経っているうえに進歩がめざましい技術だからか、VRMMO自体はたくさんある。雑誌に載ったりネットで話題になるものだけでももう三桁はあるだろう、と先輩は言った。



 先輩の話を挟みながら、どんどんとNPCと話していった。武器屋の客が俺の装備を見て、新米はいきなり外に出ずに、まずは基本から覚えたほうがいい、と言った。リアルで剣を使いこなせるだけの練習とか出来ないもんな。俺はその客に、実は先日剣を買ったばかりでまだ使ったこともなく、できれば練習とか訓練とかできる場所を知りたいと正直に話した。


「ほーお、新人かー。武器の訓練は、ためし振り程度なら武器屋に練習場がある。よっぽど小さい店じゃない限りはだいたいあるはず。もちろん狭かったりする可能性はあるけどな。


 それ以上……たとえば人に見てもらうとかは、この街なら門番にきいてみな。兵士の訓練に混ぜてくれる。魔法なんかは混ぜてもらうほうがいいな。暴発すると被害によっては術式の媒体をとりあげられて魔法を使えなくする刺青をされちまう。」


 俺と先輩はお礼を言って、門を探すために街の外周へ向かった。




 街の門は東西南北にあるらしい。そのうちの、西の門にたどり着いた俺は先輩とともに交代の門番に案内され、兵士の詰め所から奥にある兵舎へ向かった。映画とかの、昔の木造の小学校みたいな平屋と、陸上のトラックがひけるくらいの広さのグラウンドがあり、周りを壁で囲んである。兵士が上官らしきおっさんに近づいて挨拶と説明をし、おっさんは俺に近づいてきた。勲章が付いた軍服以外は、気さくそうな普通のおじさんぽい。日に焼けてるくらいで地球人と大差ない。


「おっ、新人だねえ。バカにしてるわけじゃないぞ?その装備は新人には素晴らしいもんだ。重すぎず、かといって革だけよりもしっかりと守ってくれて」


 おっさんはそのまま話し続け、俺は意識を手放しそうになった。それでも瞼を閉じずに耐え切って、おっさんの手ほどきを受けた。


「名前はなんという?俺はエティウス第三団隊長」

「て、テンメイです。隊長さん」



 エティウス隊長は最初に、鞘のまま剣を握って剣先を斜め前へ向けろ、と言った。剣道の授業を思い出しながらそれっぽく握って見せると、俺の後ろに立って腕を伸ばして手ほどきしてくれた。そのまま俺の手ごと上下に振って、


「素振り100回やってみろ」


と言い残して隊長は一度他の兵士を見に行った。先輩が見守る中素振りをし、回数が増え、くたくたになったところで水を飲んでトイレに行くぐらいの休憩だけはさんで、また素振りをさせられた。


 何回か繰り返したところで日が沈んできた。俺は建物に呼ばれて、椅子と机が並んだ教室に案内され、倒すべき動物や魔物についてと、このあたりにいるけど初心者は手を出すべきでない動物・魔物について勉強させられ、ノートを持ち帰った。メニューで確認したら、剣術スキルが2に上がっていた。



<動物と魔物についての初歩>

座学で教わった内容を自らしるしたノート。



 初めて迎える夜だ。先輩の行きつけの宿についていって宿帳を書くことになった。先輩が名前を書いた下に名前を書く。先輩がアルファベットで書いてるのを見て、俺もTenmeiと書き入れた。そこで宿の人にやっぱり「苗字か家名か氏族名か、ないのかね」と聞かれた。俺が答えに窮していると先輩が素早く、てきとうに書き入れて耳打ちしてきた


「(今日はこれで我慢なー。まー、明日にでも考えたらいいさー)」


 まさか先日のテンメイさんじゃあるまいな……と俺はおそるおそる宿帳を覗き込んだ。


Tenmei Katou


 きわどい名前にしないでください。お願いします。ふたりの「テンメイ」さんについては帰ったときに少し調べましたから!

 俺が床に崩れ落ちそうになっているのを、先輩はあからさまに腹を抱えて大笑いしながら見ていた。部屋に案内されてすぐに俺は装備をメニューから外してさっさと寝た。




 翌日、俺は一人で門番のところへ行き、外で戦ってもいいか尋ねた。門番は俺に、街道沿いにすこし進んだところの畑で最近野生のウサギが大量に現れて畑を荒らし、ウサギを狙ってオオカミまで現れて困っているという話をした。


 何人か既に冒険者が向かっているが、ウサギもオオカミも出所が分からず、わいてきたのを倒すだけという後手の対応しか出来ないらしい。俺はしばらくそこの手伝いをすることに決めた。

 門番に身分証明というか推薦状みたいなものを書いてもらって外に出ると、ぴこん、と電子音が聞こえた。メニューを開くときと同じ音だ。メニューを開くとクエストのところが点滅している。開いてみると項目があった。



『畑を守れ』繰り返し可・推奨レベル:1~

畑を荒らす野ウサギと、それを狙って現れるオオカミを退治せよ。



 テキストを指で押すと受注しますかという選択肢が出てきたので「はい」を押してメニューを閉じ、さっさと向かう。


 周りは畑と草地が広がっていて、たまに神社にあるくらいの小さな森や林が見えた。三十分くらいか、汗をかいたなと思うくらい歩いたところで反対側から歩いてくる人が数人見えてきた。装備が血や土で汚れているし、すれ違うときに話しているのが耳に入ったので、同じクエストを受けている人だと分かった。そこから数分で問題の畑に到着した。


 ウサギをアイテム欄に仕舞っている人をみて、すぐ終わるな、と思ったが甘かった。畑の持ち主が言うには、数日ごとに数百匹という数のウサギが襲ってくるのだという。そして戦闘が始まると短くても全部倒すのに半日はかかるらしい。高レベルの魔法でふっとばしてもらったらどうかと提案したら怒られた。


「そんなことをしたら畑が全部ただの土にもどっちまうよ!」


 炎の魔法で炭になったり、水の魔法で洪水になったり、という理由で攻撃魔法は禁止だそうだ。俺はそのまま農家の人に背中を押されて、他の冒険者が数人で相手しているウサギの群れの方へ放り出された。

最初の敵をウサギにするかオオカミにするか迷ってしまいました。

ウサギだと有名どころとかぶる。オオカミだと最初の敵にしてはつらそう。スライムは世界観的にダンジョン以外にはあまり居ないのです。

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