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転明記 VRMMOってどこでもこうなの?  作者: 朝宮ひとみ
7章 あがいてみた、あるいは、あがけなかった結果
59/100

デッドエンド『コード14』 B・下

「コード14」エンドは、どちらも、読む人もきっと運営に対してかなり腹が立つだろうと思いながら書いていました。

残りのエンドでもスッキリしないと思うのですが、バッドエンド系は特に「悲しい話」「頑張ってもむなしい結果」となっています。それ以上わるくはならないはずです。

 山を中ほどまで登りきり、海岸のそばとは植生が異なる森の中の洞窟で数日体を休めたテンメイたちは、森を抜けた先の開けた場所に魔法と木材で簡易的な家を建て、周りに採取した野菜の原種や果物の種をダメもとで植えたり、時々近くで採取したりして、食料を蓄えた。生存を脅かすような生物は、山の中に一頭だけ大きな肉食獣がいるだけだ。他にはリスとかウサギくらいしか見当たらなかった。リスは誰も知識が無く無理だったがウサギは数匹捕らえてさばき、一匹はその日に食べ、残りを使って干し肉を作った。




 孤立した状態は、精神を削る。はじめは命を脅かされない安心感に後押しされ、軽口を言い合ったり、収穫の時には喜びから即興で踊りだしたり、明るさを取り戻せているようであった。しかし、いつからか、日を追うごとに表情が消え、会話がなくなり、数人が時折独り言を呟くだけになりつつあった。

波動生物(・ω・)たちは波動の変化を感じ取り、いろいろ話しかけたりしていたが、とうとう誰も話し相手をしてくれなくなると、ずっと外で遊ぶか、静かに部屋の隅で待機するようになった。




 さらに何日経っただろうか。外にいた人が巨大な影を見た。全員が外に出て眺めていると、ドラゴンの巨体がいくつか、草むらに降り立った。ドラゴンたちは波動生物を通じて、全員家の中へ戻るように伝え、魔法で家ごと持ち上げ、二~三体で交代に支えながら飛んだ。




 数時間後、かなり大きな島の集落のなかにドラゴンたちは降りた。そして、持ってきた家を適当な場所に置いた。家から出た人々は、集落の人々のもてなしを受けた。彼らが言うには、目指していた島よりさらに先にあり、ずっと大きな島だった。

 大陸のことは魔法使いの占いや魔法具の通信でしか知らないという集落で、テンメイや船員たちが大陸での生活について話すと皆興味深げに耳を傾けるのであった。




 その日の深夜、アクアアルタとテンメイは急な息苦しさと痛みで目を覚ました。よくテレビとかである心筋梗塞みたいだよな、とテンメイは思った。胸を押さえようとしたが腕が上がらない。気を向けると、動悸がするが、心臓は早いだけで規則的に動いているのが分かる。心臓疾患じゃない。


 二人のうめき声で、周りも目を覚ました。集落の医者を呼び、その間も船医が診察をはじめ、ミミが魔法的な科学知識で原因を探っていく。集落の医者が到着し、二人がやったようなことを調べていくが魔法やのろいはかかっていなかったことくらいしか分からない。

 体の中を調べたらどうかというユウキの提案で、解剖の代わりに透視魔法を使って腹の中を調べはじめたが、腫れ物や傷など、原因になりそうなほどひどいものはなかった。


 目を覚ましてから一時間くらいだろうか、二人は動きを止めた。ユウキとシュクレが心臓マッサージを施したが蘇生できなかった。マッサージを終えた二人と入れ替わりに船医と集落の医者がそれぞれ一人ずつ確認して、だめだよ、と一言発して、皆黙り込んだ。


 日が昇ってから二人の葬儀が行われた。その途中で、シュクレが二人と同じ症状で死んだ。翌日ミミが寝込み、自分はたぶん同じように死ぬだろうと言い残し、十日後の夜誰にも知られずに死んだ。


 残されたユウキとクルクは戦慄した。




(『コード14』に分類される分岐のひとつ

/PCを大量に殺害することで手っ取り早く終了条件のどれかを満たしつつ、期限を決めずにデータを徐々に全削除する方針が取られた場合)

次回は十日ごろに投下します。

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