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転明記 VRMMOってどこでもこうなの?  作者: 朝宮ひとみ
7章 あがいてみた、あるいは、あがけなかった結果
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デッドエンド『コード14』 B・中

 エターに残ったシェールが砂漠で友人を亡くした数日前にあたる日のこと。


 テンメイとシュクレはあの風雨を避けようと転送でそれぞれ十箇所以上の町をさまよい、風雨をもたらす雲は大きなものでもアメリアより小さくて空に隙間があることと、東西ともに海上に雲がないことを知った。彼とその仲間は話し合い、かつて話し合った最終手段を取るため、港に停泊している海のエルフの船団と交渉した。


 交渉の結果、沖にある島のひとつに隠してある予備の船を買い取り、船員十数名とともにその島よりさらにずっと沖にあるはずだという無人島を目指して航海の準備に取り掛かった。


 最終的に目指す島までは一週間ほどかかるが、その手前にもいくつかそこそこ大きな島があり、標高の高い場所ならばかつてタニーアを飲み込んだ津波の高さよりも上にある。一族に伝わる地図を示しながら、エルフの船員の説明を受け、テンメイ、シュクレ、クルク、エメラルドマウンテン、アクアアルタ、ミミ、ユウキと船員合わせて30人程度と数匹の波動生物(・ω・)による航海が始まった。




 航海を始めて数日後、最初の島に近づいた一同は喜び合い、昼食にちょっとした祝いの宴として多めに食料を出して仕込みをはじめた。


「日が昇ったら、さすがにはっきり見えたわ。あんなに近づいたんだなあって、感激だよっ。」


 アクアアルタが島を見つけたときの話を船員としていると、急にあたりが暗くなった。海が荒れる様子もない。雨も降ってこない。あまりに急激な雲の集まり方に、誰もが何らかの魔法だと気付いた。


「古い魔法だ!!総員、船内に退避!!」


 帆柱の上にいた見張りの船員が叫びながら駆け下りてくる。追いかけるように石が落ちてくる。柱の横で作業を終えて走ろうとした船員の足に大きな切れ込みを入れる。船員は叫びながら、降りてきた見張りに肩を借りて船内に何とか滑り込んだ。


「隕石魔法だと!今時あんな強力なのが使えるやつがいるなんて!!」


 船員の魔法使いが同様の魔法を何とか唱えるが、小石しか落ちてこず、とても相殺できない。ミミが真似をしたり発音を変えながら唱えて、こぶし大の隕石をいくつか破砕したが、そのこぶし大ならば雨のように降り注いてくる。

 さらに、人の顔ほどもある隕石が二つ三つ落ちて、船体の真ん中に亀裂が入った。あちこちから火が上がり、船長が全員に船を捨てるよう命令した瞬間、直径が人の身長くらいありそうな巨大な隕石が激しく燃えながら帆柱を裂きながら船の底まで真っ二つに割った。



 浮いている残骸に次々と船員達は掴まって、燃え盛る船をしばらく見守っていた。木材は島と反対のほうへ流れているが、無理に漕いだりするわけにも行かない。体力を無駄にしてしまう。何より、隕石はまだ降り続けている。時折頭や腕に当たった船員が手を離し、沈んでいく。


 何時間か漂流し、数人が生きて島に上陸できたが、それでも隕石は止まない。


「長い時間ずっと唱え続けることは出来ない魔法だ。おかしい。」


 魔法使いが逃げながら叫ぶ。




 森を抜け、低い草の上を走り抜けているうちに隕石は止んだ。森からは焦げたにおいが漂う。魔法使いを含めた船員が八人と、テンメイ、シュクレ、アクアアルタ、ミミ、ユウキの合計十三人がいたが、皆消耗している。くしゃみをしている者も、鼻水をすする者も、冷えているはずなのに熱があるのか体を触ると熱い者もいる。波動生物(・ω・)たちは、森の中へ戻り、分担して適当な場所を探してから、枝を拾い集めながら十三人のもとへ急いだ。


 波動生物(・ω・)たちは集めた枝に魔法で火をつけて、人々の体をあっためた。海岸へ引き返して漂流したものを一箇所にまとめ、中から食べ物を探し、森の木の実や果物、野菜の原種などをとってきては人々のそばに置いた。そうやって数日間、人々の回復を待った。その間に一人二人と漂着する者があったが、三日ほど経つとそれ以上加わる者はなかった。


 最後の船員の風邪がだいぶやわらいだのを見計らって、全員で漂流物の仕分けを行った。流れ着いた船員とエメラルドマウンテンの遺体を、船体の残骸とともに魔法で燃やして埋葬し、その死を悼んだ。

 彼らが残った船体の灰を集めてほかのゴミなどを燃やして火を消していると、雨が降ってきた。彼らは波動生物(・ω・)たちの魔法の膜で護られながら、森のなかに探しておいた大きな落葉樹の根元へ避難した。


 クルクが樹に登って見渡すと、海が荒れているのが分かった。さいわい、標高が高い場所まで移動する時間はありそうだ。まずは森を抜けたときに見えた小高い丘を越えるところまで移動し、高い草の広がる先に木造の建物を見つけてそこで夜を明かすことに決めた。


 移動の間に船員が病気で死んだりして、目的の山の中をある程度上ったときには、波動生物は揃ったままだが人間は再び十三人になっていた。当然のことだが顔ぶれは異なっていた。最初に島に上がった船員は、移動中に見つけた洞窟に警戒せず飛び込み、菌類の胞子を大量に吸い込んで肺をやられて突如気を失い、そのまま死んだ。

次回は明日7日に投下します。

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