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26話 続・エルフの港町と面倒な情勢

(・ω・`)はやぶさ2打ち上げの延期にしょんぼりが加速しました。天気じゃどうしようもないんですけどね。

 エルフの港町に着いた翌日、周囲を覆う森を散策した。近くの川に沿ってぽつぽつと拓かれた場所があり、多少人が、エルフだけど、とにかく入ったことがあると分かる程度で、集落どころか一軒の家も無かった。見つけたのは集団で複数のテントを張った跡くらいだ。


 軽く日帰りできる範囲では、動物はいくつか覚えておけと言われた奴以外、手を出さなければ襲ってこないものばかりで、本当にただの散策をして帰ってきた。

 人外好きコンビが川で泳いでいた両性族の人を追いかけてビビらせてしまったくらいしか変わったことは起きなかった。


 三日ぐらい歩けば別の町へつけるらしいが、そのためには案内人が必要だし、行き帰りで休みがなくなってしまう。俺たちは森から帰ってすぐに支度をして、タニーア行きの船に交渉して乗せてもらうことにした。


 転送屋を探して、ルシエンまであるいは直接北の町まで飛ばしてもらうというのも考えたが、人数が多すぎるから一度には飛ばせない=一人か二人ずつ、数時間おきに飛ばすということで、転送屋さんを占有してしまうからやめておいた。

 ルシエンは行ったことが無いから誰も登録済みの転送石を持っていないし、北の町でもブルーマウンテンさんと俺しか持っていない。


 エルフはパーティを組むときに三人か四人単位で組み、パーティごとに転送できる人を用意するらしい。便利だと思うが、プレイヤーキャラだと転送するひとがそれ専用になってかわいそうな気がする。




 タニーアからアメリアへ戻り、乗り物屋を探した。安く済ませようと思うと荷物運びの依頼付きの馬車か、一番ランクの低い乗鳥(じょうちょう/のりとり)か、荷物だけ台車に載せて歩くか。


 馬車は移動自体は楽だが依頼が面倒かもしれないし、届け先によっては寄り道になる。乗鳥はそこそこ早く荷物も自分で持っていけるが、長時間乗っていると足腰がおかしくなるし男女関係無く股が痛いと聞いた。最後はもちろん時間がかかるがとにかく安い。


 俺たちはアメリアの東にある大き目の町をいくつか選んでおいて、まずはそこまで乗鳥を使い、いけそうなら森の手前の町まで一気に進んで一泊しようと決めた。さいわい、街道が整備されているし、中央にある砂漠は端のほうを少し通るだけで済みそうだ。砂漠は情報が少ないから町には興味はあるけど今は行きたくない。



 俺たちは運良く鳥を借りられ、街道に沿って東へ進んだ。アメリアと似たような雰囲気の、しかし規模は小さい町をいくつか通った。砂漠の手前にある町で砂漠用の乗鳥向けの装備を追加で借り、つけてもらったのだが、次の町へ着く前に夜になってしまうと教えてもらい、俺たちは次へ向かわずに宿を取った。


 翌日、少し早起きして一気に砂漠を越え、森を半分ほど抜けた町でもう一泊した。この町もエル=ルシエンであるが、その名前で呼ばれるのは俺たちの目的地の町だ。

 呼び分けるときは『森のルシエン』と『湖のルシエン』あるいは単純に『東の』『西(南)の』といわれるようだ。砂漠を抜けた町で俺たちが道を教えてもらったときは『行商の町』と『ルシエン』と呼び分けられていた。エルというのは英語のTHEみたいなものらしい。




 その次の日に、目的地のルシエンへ着いた。手前の山から街全体を見下ろせた。見事な円形の盆地にまあるい町があった。誰からともなく、おお、と歓声が上がった。森の緑と、湖の青に、ほどよい空の水色。美術や図画の教科書に載る絵にありそうな、なじみの無い景色。


 皆それぞれ自由行動がしたくて、真っ先に宿を取った。宿も事前にいくつか教えてもらっていて、そのなかから値段がほどほどで食事がうまいところにした。


 クルクさんはもちろんエルフや碧眼の民を見まくるために町に出て行った。アクアさんは面白そうだといってそれに付いて行った。


 ミミちゃんは魔法の力場探しのために魔法具屋や魔法の本を読みに図書館や本屋的な施設を探しに行き、ブルーマウンテンさんがそれに付いて行った。


 俺は宿屋の窓からぼーっと外を眺めている。部屋ではウィルがひっくり返っている。村上のままならともかく、見た目は上品でイケメン、背も高い、というエルフがだらしなく、畳のような草を編んだ敷物の上で大の字になっているのはさすがにイラっとする。村上なら気にならないのは何故だろうな。


 俺は村上……じゃなかったウィルが目を覚ましたところで宿屋を出て適当にぶらつくことにした。こんなことならミミちゃんに付いて行って俺も魔法具を見に行けばよかったとかそんなことを思いながら、人があふれるところまで行かない微妙な人ごみを通り抜けていく。




 適当に店を回ってうまそうな果物をひとつ買い食いしながら戻ると、宿の食事までまだ少し時間があった。食事の時間までにはなんとか全員揃った。今までの町からしたら見た目は質素だが煮込み料理は楽しい。でかい鍋から店の人が最初だけ取り分けてくれた。


 野菜と肉がメインで、熊や猪だと言っていた。リアルでは食べたことはない。運が悪いと少し硬いというか食べにくいのにあたるかなという程度で、誰も気にしていないから黙っていた。


 野菜は葉ものが少なく、根菜が多い。気候的にあまり育たないのかもしれないし、単に数が少ないというだけかもしれない。柔らかく煮込まれていて、初めはこんな端や茎まで入れるのかよ、と思ったが、柔らかくてすぐに気にならなくなった。そういえばキャベツを煮込むとき芯まで入れる人もいるっていうよな。




 翌日。何もなければ出発しようか、と宿屋に代金を払い、何人かが転送石の登録をすませ、乗鳥を借りて荷物を積み込んでいた。


 買い忘れたものがあることに気付いて、俺とウィルとアクアさんが道を戻って店先を見ながら走っていると、店じまいの支度をしているところが多いのに気付いた。まだ朝の3時で、地球で言うならまだ開店すら早い時間なのに、朝市でもない平常営業の店が商品を奥へ引っ込めている。


 目的の店でアクアさんが声をかけると


「ごめんねえ旅人さんがた。軍の偉い人の手形がないと売れないよ。」


店主は支度をしながら一度だけ俺たちのほうを見て支度に戻った。さっきまで普通に買い物していたはずなのだが何故だろう。アクアさんが聞くと店員がひとり来て教えてくれた。


「『物流統制令』がさっき発令されたんですよ。簡単に言うと、すべての物資に売り買いの優先順位が付いて、旅人さんがほしいものの場合は軍→王家→貴族・議員→兵士個人→他の市民ときて、それからになります。

 旅人さんがお買い上げいただいても、一定期間はお渡しできず、その間に優先順位が上の誰かがほしいといったら、そちらがお買い上げいただくことになります。」


 俺たちは礼を言って店を出て、急いで残りの三人の元へ戻った。それから北へ向かう門の前で兵士に話を聞いた。


 その結果、どうやら本国パルディリアが戦争の準備を始めたってことが分かった。そして、北へ向かう門を閉鎖しているという。


 今なら時間ぎりぎりに出たことにしてもらえるが、出ると北からこちらへ入国することは出来なくなる。どうせ転送石で直接アメリアへ帰ればいいのだけど、それだと乗鳥の店の都合で、北の国の門で鳥を返し、借り直ししなければならない。


 北の国は広いし、門から入って最初の町に貸し屋がなかったらそこで一日使ってしまい、町についたその日じゅうに転送で帰らなければリアル時間の都合がつかない。残り時間の半分以上、もしかしたら三分の二を移動に費やすことになる。




 俺たちは北上せずにこの町の、統制令がゆるい東地域へ向かうことにした。ミミちゃんや俺が興味あるのもそっちだし、碧眼やエルフが一杯居るということでクルクさんは速攻で妥協を許してくれたし、他の三人は変なところで足止めされるよりは町の中がいいということでOKしてくれた。みんな有難う。


 盆地と違い、少し森の中へ入ったところで、気候的に寒い。真冬ではないのにきつい。盆地よりはマシとはいえ、風が厳しい。あまり外からの人が来ないからと、宿はタダ同然、魔法具屋も親切に色々見てくれた。とくに魔法に関しては盆地と全く違う雰囲気だった。


 盆地では、魔法具屋は大通りのいい立地の割りに周りの店より狭く、置いてあるのも下級の薬のような消耗品ばかりで、本とか錬金術の触媒は定番というか安価なものすら揃わない。


 このあたりは魔法に関してはエルフについで盛んなはずなのに、魔法に関する話すらはばかられる雰囲気があった。ミミちゃんたちが出かけていったときも、図書館は一般市民向けの貸し本屋だったそうな。碧眼や赤眼の民の多い区画でようやく小さな本屋を見つけ、その近くに住んでいる魔法使いにいろいろみてもらったのだという。


 学校も見学したけど魔法はごく初歩の座学を教えてもらえる程度。それ以外も読み書きと基礎的な計算能力、あとは社会科っぽい科目があったらしい。


 俺たちは時間ぎりぎりまで過ごし、宿代を払って転送石でアメリアやタニーアへ帰り、そこでリアル用事のある人はログアウトした。

私はキャベツやブロッコリーの芯をやわらかく煮たのは大好きです。エコというより、キャベツの葉っぱやブロッコリーの本体(?)よりほくほくした食感がたのしいんです。

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