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転明記 VRMMOってどこでもこうなの?  作者: 朝宮ひとみ
第3章 少しずつ盛り上がってきた
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18話 なんだか知らんがそうしよう

 メンテナンスが終わって、あとは臨時メンテ以外で正式開始前まで中断されることはなくなった。最後に十二月二十五日の朝六時にメンテナンスが始まって、予定では翌年一月一日の〇時に正式サービスが開始される。十二月も半ばになって、世間はどこも忙しい。


 俺も去年まではそんな世間の一部だったことを忘れてしまいそうになって、買い出しに市街地へ出るたびに人ごみや飾られた街路樹で思い知らされるのだ。




 メンテ明けぎりぎりを狙う趣味はないし、ちょうど日付が変わるころには初詣に行くつもりだ。今までどおり、のんびりやればいい。ただ、初めには今までいけなかった地域を散策したい。


 そんなことを話しながら、俺は港町タニーアの大通りで海鮮丼をかきこんでいた。


 エリー、ユウキ、ユベール、ミミ、俺、シュクレ先輩、先日助けてくれたクルクさん(エルフの女性)、先輩と彼女が所属する軍団長のサリアさん(標準種の女性)、先輩が所属する旅団の団長ブルーマウンテンさん(エルフの男性)、旅団と軍団それぞれ二、三名ずつ。


 小さな店が貸しきり状態だ。




 こうなったきっかけはまず、クルクさんの怪我を心配したサリアさんが話を聞き、あいつらの代わりに俺に謝りたいと思ったことだ。同様の出来事で自分の軍団含め多数の被害者が出ていることから、場合によっては近隣の軍団長を集めて話し合いを持つべきだと考えた彼女は、俺たちに話を聞こうとこの場を設けたというわけだ。


 俺は素直に、突然あいつらに高レベルだからと勧誘され、断ったら殴られたと話した。それからシュクレ先輩もサイトのことやリアル事情すら自分達のために捻じ曲げさせられたことを、俺に前話した以外の体験も含めて語ってくれた。


 今シュクレ先輩が居る旅団は、先輩が抜ける少し前にあの軍団から離反した人が立ち上げたものだったと知ることができた。

 ブルーマウンテンさんたち初期メンバー6人は、あの軍団の方針についていけないどころか、リアルで仕事に支障が出たり、家族や同僚に本来かけなくていい迷惑をかけてしまった。自営業で突然の臨時休業を何度もさせられた人もいた。もちろん今でも客は減ったまま。


 話を聞いたサリアさんは、他の軍団からも話を聞いて同様にリアルに影響の出る被害を受けている人がいるなら、即刻話し合いの場を作るべきだと憤った。それも、正式サービスが始まるより前、被害者が大きく増える前に。出来れば、運営にも話をもっていきたいとさえ言い出した。




 あとは、嫌な思いをかき消すように話題を色々と変え、正式サービス開始時に何をするかという話になった。クルクさんが目を輝かせて叫ぶ。


「まずは、エルフやドワーフやゴブリンでいっぱいになったタニーアでがっつりエルフ成分とか補給しなきゃ!」


 サリアさんや軍団の人が苦笑している。また始まった、というささやきも聞こえた。

 クルクさんは大のエルフ好き、というか人外好きなのだという。成分補給の後はもちろんエルフの町や、北のドワーフの町へ行くのだという。北は少し実装されたばかりで今は値段の高い有料転送しかないが、メンテ明けにさっそくすっとんできたというから素直にすごいと思う。


 ブルーマウンテンさんは先の話の自営業の人がリアルに専念している間に皆でレベル上げと金策をして彼の装備を購入しようと考えていた。


 エリーとユウキは学校の友人と遊びに行ったり、親戚の家に泊まったりする予定がある。一月は一週間近くログインできないので、ログインしてからの様子を見て考えるとか。


 ユベールも大学のレポートが忙しく、リフレッシュ目的でのログインになるからその時々でしたいことをするつもりらしい。


 シュクレ先輩はどうするのか聞いたら、秘密だとか、ただのレベル上げだとか、はぐらかされてしまった。


 俺は、前に報酬で貰った、武器防具をもらえる奴を何にするかをまず考えたい。ああいうのは放っておくとすぐに忘れて、期限が過ぎてから思い出して嫌な思いをする。




 話の最後に、ブルーマウンテンさんが俺たちを呼び止めた。


「うちの旅団に入ってくれないか。もしくは、自分の旅団か軍団を立ち上げてくれないか。」


 旅団や軍団を立ち上げると、軍団なら本拠地として部屋が与えられるだけでなく、例えば人のステータスをメニューで見るときに、同じ団員だけにしかスキルなどの細かい表示が見られないように設定できる。

 あとはチャットに団員内用チャンネルが加わる。俺がエリーやユウキたちと連絡を取ろうと思うとき個人宛にメッセージを残すよりもずっと楽にできる。


 そして、俺が団を作りシュクレ先輩が加入すると、先輩の五つ目の団になるため、それ以外の団が勧誘して入団させようとすると、他の五つの団長すべてに入団してもよいか確認するメッセージが入るのだ。そして八割以上が許可しないと入団できない。もちろん、六つ以上は同じだ。団員の最低人数は二名で最高人数は百人となっている。


 俺はエリーたちに、団員になってくれるかどうか尋ねた。ユウキだけは渋ったがエリーが入るならとOKしてくれた。




 俺、先輩、エリー、ユウキ、ミミ、ユベール、クルクさん、ブルーマウンテンさん、二人の団の人三名で新しい旅団を作った。全員の意見で俺が団長になった。そのまま十一人で旅団名と副団長を決めることにした。軍団にしなかったのは、アメリアのあの地区に本拠地を置きたくないからだ。その代わり、場所がほしかったら自分達で探して買い取るとか借りなければならない。俺たちは名前と副団長より先に、このタニーアに場所を借りるか買うかして『本拠地』を作ろうと決めたのだった。


~~~


メンバーについてのメモ

俺:標準種・男/前衛、初歩回復魔法 レベル48

シュクレ先輩:両性種/前衛、初歩回復魔法 レベル42

エリー:エルフ・女性/中衛(弓)、補助魔法 レベル33

ユウキ:両性種/前衛、初歩魔法各種、初歩スキル多数 レベル36

ミミ:標準種・女性/魔法使い、レベル31

ユベール:標準種・男/前衛、レベル33


クルクさん:エルフ・女性/攻撃・転送魔法 レベル49

 ・軍団『くるくる』をサリアさんと立ち上げた。

 掛け持ちしてくれたのはうれしいけど『面白そう』って何だろう


ブルーマウンテンさん:エルフ・男/前衛・中衛、補助魔法 レベル50

 ・旅団『トラベラー』の団長。

 俺に立ち上げを持ちかけたときから掛け持ちを決めていたとか。


ディアさん:ドワーフ・女性/前衛、加工スキル レベル49

 ・立ち会った『くるくる』メンバー。クルクさんの人外スキー仲間。


ニェーリンさん:ドワーフ・男/前衛 加工スキル、彫金スキル、鍛冶スキル レベル50

 ・ディアさんのリアル彼氏らしい。

 話した限り、ドワーフのこわもてから想像しづらいくらいに優しそう。


アクアアルタさん:両性種/魔法使い、裁縫スキル、錬金術スキル レベル33

 ・立ち会った『トラベラー』団員。錬金術スキルはPCでもNPCでも高位の人が少なく、あいつに囲い込まれていたとのこと。裁縫はリアルの趣味と職業柄。


~~~


 話し合って、副団長はユウキになった。旅団名はいくつか案を出した中から『Trabant』になった。旅の仲間、みたいな意味の単語だと案を出したアクアさんが教えてくれた。


 ちなみにユウキが『最弱戦士へなちょこうぉーりあーず』という案を出した。どうみてもあいつに喧嘩売りすぎだろバカ!とつい口に出してしまった俺はかかとで足の指をぐりぐり踏みつぶされた。それをみてクルクさんとアクアさんが大爆笑した。ちくしょう。

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