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転明記 VRMMOってどこでもこうなの?  作者: 朝宮ひとみ
第1章 VRMMOをはじめよう!
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第二話 なんとなくでもセッティングできた

ログインするまでの話です。


予定が空いたので2話目を投下することにしました。不定期なのでまったりお待ちください。


*追記2014.10.03.ややひどいミスを発見し、修正しました。

大きなミスや多量の場合は訂正の際にこうした追記をすることにします。

 夜、俺と友人である村上がスーパーの袋を下げて戻ると、アパートの来客用駐車場で車の横に立ってる人が居た。平均的な身長の俺たちと違って、180cmくらいはありそうで、お洒落っぽい人だ。村上がおーと声をかけながら手を上げると、相手も手を振りかえしてきた。『先輩』だと分かった俺は頭を下げた。



 食材を冷蔵庫に突っ込み、あるいは村上が取り出して調理している間に、俺と先輩は届いたVR端末の梱包を解いてセッティングを始めた。電源とか配線は色分けされているし、意外と本数が少ないし、説明書が丁寧で簡単だった。


 本当は漫画喫茶とかゲーセンにあるみたいな、コクピット椅子っぽい端末を期待していたが、届いたのは配線や電源と繋ぐための羊羹みたいなでかいアダプタと、ただのサングラスとヘッドホンに見える端末本体だった。


 先輩の話によると、椅子みたいな奴は今時ではRPGやるために使うのはあまりないらしい。逆にレースゲーなんかのマニアは球体と操縦席で出来た高級端末と専用メガネをこぞって買うんだそうだ。操作感の違いがタイムにでるとかなんとか。実家のファミコン(ゲーム機って意味じゃなくて本当にファミコン)でしかレースゲーはやったことないからいまいちよく分からない。



 端末全体のセッティングをしたら、サングラスとヘッドホンを説明書に沿ってチェックした。破損や不良はなさそうだ。そこで村上が呼んだので、俺と先輩はテーブルに集まった。椅子がないので先輩に譲り、俺は適当な台に座り、村上には折りたたみ椅子を貸した。大き目のサラダボウルにこんもりと炒め物が盛られていた。キャベツと人参としゃぶしゃぶ用豚肉。


 あと村上は、中途半端に残った米を全部焚いたと言った。一杯ずつ不ぞろいに茶碗や小鉢に盛られた以外は、冷凍にするように冷ましてラップにくるまれていた。食べた後、村上は、


「じゃーオレ後片付けしたら帰るわー。シュクレ居るからいいっしょ?」


と言った。シュクレというのは先輩のハンドルネームだ。本名が佐藤だからだと後で先輩本人が言った。よく女性だと思い込まれていると話してくれたが、俺もネットやゲーム上で出会ったらたぶん女性だと思うだろう。


 村上を放置して俺はさっそく端末本体を身につけ、電源を入れた。シュクレ先輩も自分の端末を用意した。



 電源を入れると、視界が、具合悪くして目が回ったときみたいにぐねぐねと動いて、色や形がなくなって何もない灰色一色になった。何度か瞬きしていると、灰色は濃くなって真っ暗になりそうなところでガイドメッセージが現れた。


 名前とか、住所とか、言われるとおりに声に出して、暗い視界に喋った内容がちかちかと点滅しながら現れた。それから、


「P.F.O.(仮称)ログインサーバに移行します。よろしいですか?」


音声と文字が現れたところで、はい、と短く返事をすると視界が徐々に白くなって、その向こうにほんやりと風景が見えた。



 俺は公民館とか市民会館とかにある会議室みたいな、広い一室に居た。何人か、俺みたいに端末をつけた人間が二、三十人くらいいて、時々消えた。

 シュクレ先輩が声をかけてくれて振り返ったら俺より少し背が低いくらいの、男か女か分からない、要は格好が既にゲームのキャラだった。端末も見えない。


 もういちど部屋全体をよく見ると、数人は耳が長かったり髪の色が緑や紫の人が居る。端末のない、腕に腕章をつけた人を先輩が連れてきた。ボードに留められた書類を見せられ、ペンを渡された。




 書類は履歴書とかキャラクターシートみたいに名前とか色々書く欄があって、まずキャラクターの名前と種族、性別、年齢、出身地、職業を決めるように言われ、届いたのと同じようなワールドガイドを渡された。最低でも名前と種族と性別・年齢は必要だと言われた。


 出身と職業は、最初にチュートリアルクエストをおこなうまでに決めればよいといわれたので後回しにすることにした。途中退出、つまりは一旦ログアウトして決めることも出来るが、端末を使いこなせない俺に、端末のメモ機能を呼び出せというのも無理な話だ。それに、どうせリアルで夜遅くまでかかるのだからゲーム内で決めても同じだろう。



 俺はこだわりがなかったので種族は「人間」でいいやと思っていた。甘かった。もちろんほかは知らないが、なんと人種や民族まで指定できるのだ。一番人口の多い「標準種」にしたのはいうまでもない。


 標準種は地球の白人と黄色人種のあいだくらいの、よくあるアニメやゲームのキャラ的な肌色で、金髪、茶髪、黒髪のスケールがあって、好みの色を選べる。俺は無難にデフォルト地点にした。一番多い色だと説明に書いてある。性別はもちろん男。年齢は中学生ぐらいから選べるようになっていた。せっかくだからと十八歳にしてみた。


 初めは十七歳にしようとした。成人年齢が十八からと書いてあったので、未成年ではNPCになめられたりするかもしれないと思って十八にした。それと、シュクレ先輩の外見が中学生か高校生くらいなので、未成年お断り的な場所に入れないとかあったら不便だと思ったのだ。


 出身は本来地球かこの世界か選べるのだが、何人かに一人はランダムでどちらかに固定されると、腕章の人が言った。俺は固定されていなかったので地球にした。ちなみにシュクレ先輩のように地球にいない種族を選んでも出身地に地球が選べるらしい。謎だ。深く考えるつもりはない。記入した紙を渡すと腕章の人に呼ばれ、扉を開けると試着室のようなものがあった。カーテンを開けると全身がうつる大きさの鏡に俺じゃなくて俺のキャラらしき少年が映っていた。


 どうでしょうか、と腕章の人が聞いた。横から先輩も覗き込んできた。

 これでいいです、と俺が言うと、それでは、と腕章の人が言いかけて

「あの、那珂川さま、お名前をお願いします。」

 俺は最初に書いたつもりでいたのでびっくりしてしまい、慌ててペンをひったくって書き込んだ。



 腕章の人はもっと早く気付くべきだったと何度も謝ってきた。俺たちが気にしなくていいと何度も返すと、念入りに紙を見返して、


「それではテンメイ様、シュクレ様、いってらっしゃいませ」


 腕章の人が俺と先輩の背中を鏡に向かって思いっきり押し込んだ。

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