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転明記 VRMMOってどこでもこうなの?  作者: 朝宮ひとみ
第3章 少しずつ盛り上がってきた
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14話 なんだか知らんが移動はめんどくさいな

途中に出てくる饅頭みたいな生き物は、直径10~20cmくらいの顔文字の(・ω・)を思いうかべてください。

 町をたどると決めたら、まずはアメリアの裏道を突き進んで行こうと決めた。それこそ、自分でマップを作る勢いで行こうと、いつものメモ紙ではない大きめの紙と筆記具も用意した。


 中央広場からまずは広場を示す丸を記し、大通りを十字に描く。そして一本めの道の、一番広場に近い路地から順番に、建物の特徴や横道を書き入れながら奥へ進んでいく。一本ずつ縦に道を書いていったら、次は横を調べて軽く書き入れた横道を繋いでいく。


 何日かかかって四本全てを書き記した。奥のほうに穴場的な店を発見できたり、近づかないほうがいい場所(変な人にからまれるとかぼったくり酒場とか)もしっかり書き入れた。


 それぞれの地点は知っていて表から奥へ奥へと入って行ったことはあれど、方向を変えると二つの地点が意外と近くだったという施設もあった。いちいち表から行かなくても、どちらかから横道へずれればもう片方に早く着ける。


 そうやって俺はアメリアとカタリアの部分的な地図を手に入れた。カタリアは全地域実装済みだけど、魔法で一定の道を通らないと進めない場所があって地図が作れない範囲があった。きっとその中にあの遺跡NPCの家があるのだろう。同じように港町の地図を作ろうと、俺はアメリアから港町へ向かった。道中も目安を書き入れていく。




 港町タニーアは漁港付近は活気にあふれているが、少し離れると極端に寂れている。


 防波堤だと思うが、町を挟むようにいくつも石垣があり、同じような素材を積み上げた土台の上に建物がある。家によっては壁や土台が派手に塗られていたり、絵が描いてあった。通りがかった人に尋ねると、夜や早朝でも自分の家がどれか分かりやすくするためだと教えてくれた。


 漁から戻る時間は様々で、深夜になることも珍しくないそうだ。現代の地球とくに日本とは違って、この町は明かりが少ない。それも、数少ない外灯を除いて、例えば個人の家の明かりなんかは完全に消してしまう。だから家を見分けるのが難しくなる。


 元々この町には壁に呪い(まじない)の模様を描く風習が伝わっていた。あるときから、目印をかねてその文様を複数の色で描いたり、周りにオリジナルの文様で飾ったりする人が現れ、それを周りが真似しているうちに壁に絵を描いたり派手に塗ったりすることが習慣として定着したようだ。




 港町だから、多少寂れた区画まで来ても、おいしい刺身が楽しめた。普段気にしてないからよくわからないが、マグロとかサーモンとか、回転寿司程度でも食べられるメジャーなネタなら季節から外れない限りは揃っている。


 テーブルに小さな座布団が並んでいて、なんだろうとおもったら、饅頭のようなものがひとつふたつ、ぽんぽんと跳ねてきた。それぞれ注文して丼にめりこんでガツガツと食べはじめる。初めて見たときは驚いたが、この町には百年以上前から定着していて、こいつらがたくさん入る店は繁盛すると言われている。


 確かに、数少ないマズい店から出てきた俺をいきなり呼び止め、


「ここ おいしくないぉ おさかな しんせんじゃない やさい しなびてる」


と俺の心のダメージをほじくりかえすことを言ってくれた奴もいた。そう、その店は、ご飯や付け合わせの野菜は乾きかけ、魚は素人目にも鮮度が落ちてる、いいところは安いだけ、というところだったからだ。


 この、主に白や薄い茶色や桃色をした饅頭っぽい奴は食い物に関しては正直な批評をしてくれる。この町に滞在するなら多少気にかけておくといいかもしれない。




 地図を作ったあとも、俺は漁をする船を見に行ったり、岸壁に張られた広い網にならべられた干物用の魚を見たりと、のんびり滞在した。アメリアより物価も安くて気楽だ。


 本来は様々な亜人やエルフ、ドワーフが入り混じる町らしいが、まだ亜人は数人しか実装されておらず、当然見かけない。エルフはぽつぽつ見かけるが、ドワーフもエルフと変わらないくらい居るはずなのに、まだ極端に少ない。亜人の漁師がひとりいたが、多分その船の仲間くらいしかまだ実装されていないんじゃないかな。


 ひと月ぐらい滞在して、ミミやユベールのレベル上げに付き合うためにアメリアに戻り、皆で森を目指した。


~~~


 俺、ユベール、ミミ、エリー、シュクレ先輩という変則パーティでアメリアの東に広がる森を目指した。東門から出たらもう森が見える。門や城壁から数メートルのところまで森が迫っていた。


 まずは俺と先輩で入り口付近から少しずつ地図作りを始めた。安全地帯があればそこにキャンプを張ろうと考えたからだ。なお、俺が地図を作っていることを人に話さないように念押しした。ペトロス氏と話をしたあの旅団に目をつけられても困るし、個人的なことも書き込んでるから知り合い以外に俺の地図を見せたくない。仮に売り込むとしても、それ用に人に見せられる部分だけ清書したものを用意するだろう。


 森の一角にやや開けた場所があり、石で作られたかまどのあとがあったから、そこをキャンプ地にすることにした。森に入ってからさほど奥でもないから補充も難しくない。

 最初は昼間のうちにテントとかまどの用意をして、夜は二人ずつで見張りをした。魔物は出ず、野生動物はかまどや焚き火を見て静かに立ち去っていく。


 俺たちはぼつぼつと狩りをして、皮をためこんだ。ユウキが居ればなめし革に加工してさらに高く売れるけれど、ほかに加工のスキルを持っている人がいない。シュクレ先輩が持ってるかと思ったが、肉の加工スキルだけで、なめすスキルは1しかなくて、安いウサギ皮でスキルを上げてからでないともったいない。失敗したら皮がダメになり、捨てるしかない。


 何日目だろうか、見張りのときに、妙な獣がいることに気付いた。みんな気付いているようだ。

 黒いヒョウとかライオンみたいなしなやかな獣で、一定以上近づいてこないがじっと俺たちを見つめている。火を恐れる様子もない。

 確認できるぎりぎりまで近づいてきたときにメニューから見ると、他の動物や魔物より5~10はレベルが高い。日が昇ると、森の奥へ消えていく。


 数日間スルーしたあと、一度その獣を追いかけたが森の中ほどだろうか、分け入ったところで急に反撃されて俺たちは逃げ切れずに再生した。もう二度と出だしはしないと決めた。


 そうやって何度かレベルの強い奴にあたって再生させられながら、町に近いほうはかなりいい感じで地図が出来上がった。書けなかった部分は、正式サービス開始で51以降のレベルが解放されるまではお預けだ。


~~~


 長期滞在を始めて三ヶ月、俺は少しずつ地図を作りながら、クエスト以来行ってないエルフの町へ行こうと思った。さすがに、延々と歩き回っていると不審に思われて呼び止められるので、まずはのんびり滞在して町の人に受け入れてもらうことを考えた。


 俺はシュクレ先輩やその知り合いに教えてもらった宿を探して、拠点とした。

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