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転明記 VRMMOってどこでもこうなの?  作者: 朝宮ひとみ
第2章 VRMMOに慣れてみよう!
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第11話 出来ることはなんだろう

ひとまず序章的な部分の区切りです。

 俺たちは狭い路地をぐねぐねと歩かされた。壁に這うようにしてやっと通れるくらいの細い道の途中に木の板が打ち付けてあった。老人が板を杖の先で叩くと板の向こうから声がして板の一部が動いた。予想通り扉だった。石造りの家の中に案内された俺たちの中で、俺ともう一人の冒険者だけ別室で待たされた。




 小一時間はあっただろうか。置いてあった椅子やソファに腰掛け、出されたお茶を飲んで暇をつぶした。

 扉を開けた人は俺と変わらないくらいの年齢に見える。青紫の髪に緑の目。初めて見る『碧眼の民』だ。人間のなかではエルフに近い、背が高くて魔法が得意な人種だ。


 待っている間に、隣の話が聞こえないようにという意図もあるのか、色々と話をしてくれた。


 まずは俺たちだけ別にされた理由。これも予想したとおり、経験が足りない、つまりレベルが低すぎるからだ。俺のほかに分けられた人はレベル15だ。二桁にもならない俺は戦力外になるような依頼がなされているというのはすぐに分かった。


 秘密といいながら、どこかへ何かを倒しに行き、倒した証拠を持ってくるという内容だけ教えてくれた。ただし、手伝いに行こうとすると死ぬよ、という忠告を貰った。俺たちはわかった、わかったと頷きあった。


 あとは彼自身の話だ。彼はずっと離れた国で生まれ育ち、両親によって魔法使いに預けられた。そのままその魔法使い=あの老人に付いて旅をしている。迫害をおおっぴらに認める国を通るときには髪を染め付け耳をしてエルフの子供で通したし、魔法を嫌う国だったので魔法を使えなかった。


 彼はちょうどいくつかの魔法を覚えたばかりだったから、使いたくて使いたくてつらかったという。そうだろうな。新しいことを覚えたり、できるようになったら、誰かに見せたり、自分が飽きるまでやってみたくなるもんだ。




 向こうの話が終わると、俺たちは家の玄関から比較的表通りに近い路地に出た。俺ともう一人にパーティーを抜けてもらい、レベルの高い人を探して依頼をこなすつもりだとリーダーが言った。

 俺は彼らと別れて宿代をケチるために一度ログアウトして朝方の時間になるように仮眠してから入りなおし、街を見て回った。


 数階建ての商店が並んだアメリアと違い、民家やちょっとした雑貨屋が多かった。武器・防具屋も試着くらいで、試し切りスペースは一メートルくらいごとに床に線が引いてあるだけだった。


 雑貨屋で転移石を見つけた。指先くらいの石がごろごろしていて、見てるぶんには綺麗だったが、値段が全財産より高く、さらにメニューで確認するとレベルで持てる数に制限があった。俺のレベルではひとつしか持てない。


 一通り見終わった後、俺はメニューから転移石を使ってアメリアの広場に転移した。




 それから俺は、リアル約一週間、ウサギを狩ったり隣町まで歩いて往復したり、シュクレ先輩の旅団の人に話しを聞いたり、ミミに回復魔法を教わって頓挫したり、ユウキに稽古をつけてもらったり、ユベールと男同士の話をしたり、やけにリアリティある穴のあいてしまった靴を買い換えたり、帰って来たシュクレ先輩に土産として変なのろいをかけては解かれたりした。


<呪い:土>

土人形になったかのようにもろくなる。この状態でHPが一度に現在の半分以下になる攻撃を受けると戦闘不能となります。


 俺はメニューでちゃんと魔法が解けているのを何度も確認するまで安心できなかった。


~~~


名前:テンメイ・フォグラスティング

種族:人間・標準種

出身:来訪者

レベル:10

HP:65

MP:4

スキル:剣術4 こぶし3 槍術1 棍棒3 遠出1 魔法座学1

状態異常:なし

装備:初心者向け防具 旅人の靴 来訪者の指輪 ロングソード

取得経験値:XXX

利用可能ポイント:13

転移ポイント:指令船(初期) アメリア・広場(赤)


頭:サークレット

耳:

首:

腕:

指:来訪者の指輪

胴:初心者向け防具

脚:脛当て

足:旅人の靴

その他:ロングソード


~~~


<旅人の靴>

通常の革靴よりも滑りにくい底を使い、丈夫な革の本体も壊れにくいよう補強されている。



 乗り物に乗れるのはだいぶ後だろうから、新しいのは丈夫な靴にした。


 次は防具を変えたいけど、街中でがしゃがしゃすると鬱陶しいから、外套を買うまでは今の防具も取っておいて、場所によってコマンドで着替えしよう。さすがに布の服だけだと装備を着た人と並んだときに弱そうに見える。

 高レベル用の鎧のように軽かったり見栄えもよいものを使えるのはさらに先だろうしさ。シュクレ先輩たちの装備はメニューで見たらレベル20くらいからの装備が多かった。


 今のレベルだと素材が多少良くなるくらいで初心者用よりましという程度だ。見栄えというか、見たときの印象はあまり変わらない。胴は革だけじゃなくて胸当てに金属(鉄とか銀じゃなくて銅だけどな)が増えるから防御力が上がる実感は出るけど。


 まだ装備もあまり実装されていないのとお金が手に入りにくいからだろう、5~10レベルくらいで胴と武器だけ変えてあとは必要そうなら、という雰囲気だ。先輩たちに聞いても、リアルに戻ったときに攻略wikiを見ても、


『細かく買う必要はない。好みの外見とかにするのは正式サービス開始で出揃ってからで十分』


という感じだ。実際今はレベルに対して前衛用・後衛用・軽装系とレベルごとにほぼ一種類ずつしかない。先輩たちのような25くらいからでやっと二、三種類から選べる程度のようだ。



 やがてメッセージが入り学校から帰ったエリーたちがログインしてきたので、俺は最後に別れた宿の前に向かった。俺のレベルが上がってるのを見たユウキがユベールを睨みつけた。俺たちはまたウサギ狩りを始めた。途中からオオカミが入ってもユベールが攻撃されなければ平気になった。


 ユベールのレベルが8まで上がった。荷物の整頓や装備の買い替えのために街に戻るまで、休憩も食事の買出し以外畑のそばに即席で作られたキャンプ地で済ませた。何日もそれだったので最終日はみんな背中が痛くなった。


 久々に宿を取って休んだとき、俺とユウキがレベル15、エリーが14、ミミが19、ユベールが9まで上がった。ユベールとミミは防具を買い換えた。ウサギと違い、オオカミは上手に倒せば毛皮が売れるので引取りのときに報酬が上乗せになる。買い替えを済ませた二人ですらそこそこのお金が残った。


 俺は時間が合うときはエリーたちとオオカミ狩りをして、それ以外は色々なスキルをつけようとギルドの見学に行ったり、先輩たちの話をきいたり、リアルに居るときは攻略wikiを読んだり情報を少し書き足したりしながら毎日を過ごした。


 俺がP.F.O.を始めてからひと月くらいして、正式サービス開始が約半年後の〇時だと決まり、記念の大型アップデートが行われた。プレイヤーにはスキルポイント10と、特別装備『礼服一式』『ミスリルの靴』が配布された。


<礼服一式>

王宮にも出入りできる、上等の礼服一式。装備しても外見が変わる以外の効果がない。


<ミスリルの靴>

非常に丈夫で軽い高級金属ミスリルを加工して作られた靴。重装備などでの移動速度マイナス効果を打ち消す。



 アップデートで、まだ行けないながらもサービス開始時のエリアに関しての情報がある程度解禁されて、どうやら舞台は惑星ほぼ丸ごとらしいと分かった。


 全部ではないにしても、移動するのに実際に歩いたり乗り物に乗ったりすることを考えると、あまりに広大な世界だ。前例がいくつかあるとはいえ、メジャータイトルではまだまだ到底無理だろうと言われている。さすがマイナーを突っ走るP.F.O.だ。やってくれる。


 このころには多少VRMMO事情も少し付いていけるようになった。詳しいとはいえないが、ちょっとした話に乗ることならできるんじゃないかな。シュクレ先輩や村上の話にも気軽に参加できるようになった。P.F.O.でも先輩たちが現状での最高であるレベル50に到達し、俺たちも20代後半で、あのとき聞けなかった依頼を受けることが出来た。


 それは、正式スタート前ラストダンジョンと噂される、森に埋もれた古代の遺跡のひとつについての話だった。そこへ行くためには、まず長距離の転送を行えるエルフの魔法使いと共に、必要な魔法力を引き出せる、魔法を使うのに適した『力場』を探さなくてはいけない。


 まだ数人しかそんな力のある魔法使いは居ないので、存在は秘密にされている。エルフの森を自分達だけで探索して集落を発見し、彼らに力を認めてもらわなくてはいけない。それから力場を探し、遺跡へ行って、奥にある依頼品を持ち帰ってくるのだ。


 先輩はリアル一週間程度でやっていたが、世界を全く回っていない俺たちには到底無理だった。先輩はそれ以前にエルフの集落へ行っていて、力場も早く見つけられて、それで時間がかからなかったのだ。普通は力場を探すだけでリアル一週間が飛ぶ、とシュクレ先輩本人が言った。


 俺たちは依頼を受けたものの、力場を発見できずに一度断念した。魔法使いでないと力場が分からないから、ミミとユウキに頼りっぱなしになる。

 一度諦めて、ユウキの魔法スキルを上げ、俺も魔法スキルを取るために座学スキルを上げて初歩の回復魔法スキルに変えた。攻略wikiから魔法の部分を例の持ち込みテキストに書き込んで、ミミを先生にしてユウキ、俺、エリーで勉強会をしたり、戦闘の後に実地で回復魔法をつかって体で覚えこむことにした。

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