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転明記 VRMMOってどこでもこうなの?  作者: 朝宮ひとみ
9章 惑星を創る 世界を造る
100/100

エピローグ それぞれの道

 A.F.O.もアフォだのなんだの言われながらもリリースから半年経った。プレイヤーが増えてGMも多少忙しくなってきた。

 そんな中での久々の休日。夜更かししたわけでもないがゆっくり寝たい。時計を手に取ると、普段起きるより少し遅いくらい。よし、まだあと5分。いや、予定は入ってないんだし一時間は寝たいなぁ。


「あーっさなのだっ、あっさなのだー♪」


 ずっと歌っている。うるさいなあ、と何回か寝返りを打つうちに気付いた事がある。あれ?妙に声が近い。布団を引っかぶり、ごろっと寝返りを打った俺は、ベッドから落ちた。そして、なぜか居たあの饅頭をつぶした。


「にゅーん。」


 はああああ!?何で居るんだよ。いや、竜人と一緒に居る奴を見かけたし、そうやって十匹くらいは同居してるんだろうとは思ったよ?でもおかしいだろ。何で一人で住んでる俺の部屋に居るんだよ。


 その饅頭はつぶらな瞳で俺を見た。何もないぞ。そして、やらんぞ。


 俺は玄関を開けてそいつを外へ置いた。閉まる寸前のドアの隙間からにゅるっと戻ってきた饅頭は、どこからか手紙を取り出した。

 シンプルな封筒に青い筆ペンの達筆で那珂川明典様と宛名がある。ひっくり返すと、溝口美々香と署名がしてあった。中を開けたら、用件は俺が少し前に企画した食事会の出席確認の返事だった。

 ちょっとした時候の挨拶とか、誘いを蹴った大手ゲーム会社から正式になかった事にしましょう的書面が届いたこととか、それでアージェヴェルデに入社するための手続きを始められることとか、内容満載な手紙だ。


 近況といえば、俺は少し前から染まるシャンプーを使ってメッシュを入れているくらいで、特に困る事もない。

 GM倍増計画も順調に目標の百二十八人を達成できたところだ。仕事は順調と言えるだろう。売り上げや業界のサイクル的に、数年でA.F.O.のオンライン運営は閉じられ、MMOでないゲームのようにVR機械とソフトだけで遊ぶことしかできなくなるだろうが、他にも順調に商品を開発、リリースできている。

 さらに自社開発以外でも、他社のVRMMOの運営もしている。俺もA.F.O.が閉じる頃にはどこかのVRMMOのGMになるだろう。


 もうすぐ入社する予定の美々香は、設定とかビジュアルの担当をする。彼女は同人ゲーム製作者として知る人ぞ知るクリエーターとなっていた。別の部署だから頻繁に会えるとは限らないだろうな。


 大嶋勇気と狭山恵梨佳は、大企業のOLになっていた。勇気は別の会社で受付嬢をしていて、幹部のセクハラにキレて問題になり、それを目撃した別の会社の人に拾われたという。たまたまそれが、恵梨佳が入った会社だったんだと。


 ユベールの中の人は南条くんという。大学は情報なんちゃら部に入っているそうだが、俺にはさっぱりわからない。


 あと近況を知っているのは、青幡さんと村上くらいか。


 青幡さんはブルーマウンテン&エメラルドマウンテンの兄弟の中の人だ。リアルも兄弟なのは知っていたが、同じ店(酒屋)を一緒に切り盛りしているのは知らなかった。近くにスーパーとか大きな店とかあると不利じゃないかという話をしたことがあった。二人が言うには、スーパーにはない酒を入れたり、ツマミにこだわったりしているからか意外と大丈夫らしい。


 村上は体がだいぶ調子良くなった頃に療養所でP.F.O.での思い出を大切そうに語りながら軽作業やリハビリに励む人を見て、自分もリアルでやってやるんだと意欲が戻ってきたらしい。療養所で生産している紅茶に興味が出てきて、茶葉の本を買って勉強中だとメールが来た。

 先輩として教えてくれとか言われたが、あの世界とリアルじゃ勝手が違うし、それ以前に俺は茶葉の違いとかそういうのに詳しくない。ずっとフェーニアと一緒にいるイメージが強いのかな。

 久々に電話で話した声は、前と代わらない調子で、こっちも例えば香りや味の違いを気にするようにしてみようという気になる。


 サリアさんなど、何人かは中の人と連絡を取りようがなくて誘えなかったり、全く別のことをしてP.F.O.のことを忘れようとしていて断られたりした。それも、自分で決めた選択なら、いいと俺は思ってる。

 いつのまにかコマにされて翻弄されるよりは、前向きだろう。むしろ、懲りずにVRMMOにどっぷりな人の方が心配になってくるのは何故だろうな。

 いや、プレイすることが良くないなんて言わないぞ。まして今は言っちゃいけない立場になってしまったからね。




 いつかシェールから連絡が来たときに、それまでの自分を後悔しない生き方が出来ていれば、それでいいんじゃないかな、と何となく思っている。

一年以上ものあいだ、有難う御座いました。

次の作品はいつになるかわかりませんが、それまでの間は副産物の小話などをたまに上げようとおもっています。

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