第一話 なんとなく見つけたのでなんとなく乗ってみた
初投稿です。投稿ペースはゆーっくりだとおもいますので、のんびりご覧ください。
出会いは突然だった。
俺は何ヶ月ぶりかに外に出て、配っていたチラシをなんとなく受け取った。
いつもだったら、街で配るものなんてポケットティッシュ以外はもらわない。
『テストプレイヤー募集!発売前のVRMMORPGを一足先に体験できるチャンスです』
と大きな字で書いてある。
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☆募集内容☆
現在開発進行中のVRMMORPG『P.F.O.(仮称)』のテストプレイヤーを募集しています。
実際にサービス開始後にプレイヤーが入るサーバーを使った大規模テストに伴い、
人員が必要となりました。
1.三ヶ月以上続けられる方
(正式サービス開始以降もご協力くださった方にはボーナスあり!)
2.ゲームが好き・RPGやファンタジーが好きな方
3.定期的に連絡が取れる方
(PC携帯電話等ないかたでもVR端末上の機能が使えます)
以上であれば、性別・年齢・学歴・職歴、ゲームの経験など問いません。
むしろ、様々な方を必要としています。あなたもぜひ!
興味のある方は資料請求から!下記の番号あるいはサイトにアクセス!
郵送も出来ます。お気軽にどうぞ。
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数ヶ月前に会社がぶっ潰れた俺は早速飛びついた。
ネットは近所の工事のせいでまだ使えなかったので電話するしかない。
家に戻ってすぐに書いてあった電話番号にかけた。
「あの、え、あ、もしもし?」
水を用意したのにからからの変な声が出た。
オペレータらしき女性の声で、会社名の名乗りと事務的な挨拶のあと、いくつか質問が続いた。
まずはVR端末の有無を聞かれた。持ってないと答えた。持ってるゲームハードはVRでないものがいくつかあったが、全部売ったか兄弟にパクられたかで手元にないから適当にいくつか答え、あとは、実家にあるから覚えがないとかいってごまかした。VR端末はとりあえず貸し出しを希望した。市価より安く買えるが続くか分からないからまずはレンタルがいい。
次に端末を届けるのは何時ごろがいいか、持ち家かアパート・マンションか、ほかに仕事はあるか、資料請求をするかを聞かれた。時間は適当に夕方にした。家は田舎の一軒家で、仕事はない。資料請求は受け取りじゃなくてポストでいいと言っておいた。めんどくさい。
最後に住所と名前を伝え、挨拶をし、資料と端末が届く予定日を聞いて電話を終えた。
その日の夜、俺はようやくネットが使えるのを確認してパソコンを立ち上げ、タイトルで検索した。
チラシに書かれたアドレスと同じところに、公式サイトがまともに存在していた。
会社名は検索しても公式サイト以外は同じテストプレイに応募した人のブログや呟きばかりだが、
給料を受け取ったとか何か特典を貰ったという内容がある。詐欺ではなさそうで安心した。
過去のタイトルとかは見当たらない。どうやらPFOとやらが最初らしい。まだ仮称だが省略せずに書くと『Phantasy Field Online』というらしい。サイトの紹介では社員サーバーひとつと正式なプレイサーバーがひとつあって、社員サーバーでのスクリーンショットなども載せられている。もちろん開発中ですというお約束の文言が画像の隅にはっつけてあるが、初めてにしちゃ悪くないと思った。どうせ映像のきれいさとかには期待してないし、VR自体初めてだから操作性が悪いとかゲーム的にどうだとかそういうことは知らないしな。
サイトには『PFOはとある惑星の住人もしくは探訪者になってその世界でモンスターを倒したり、ダンジョンへもぐったり、職人や商人を目指したり、古代文明の研究をしたり、ドラゴンなどの未知の生物を探求したり、自由に活動できる世界です』とある。よかった。俺は勇者とか戦士になるつもりはない。適当に生産系のスキルとか魔法とかで穏便にやりたい。
職業や種族はいくつかの「タイプ」と「スキル」の組み合わせで決まる。「タイプ」にはエルフっぽい種族やドワーフ、獣人とか亜人みたいな種族別と、探訪者(宇宙人というか地球人)とか街の名前(そこの出身)かとか出身地の違いなどをそれぞれ選び、スキルも属性や前衛・後衛、物理か魔法かなどを選ぶとそれにあわせた能力が少し他より高めになる。スキルやタイプは条件で変更や追加が出来、特定のスキルのレベルをあげないと使えないとか、高レベル専用とか、そういう特殊スキルもあるらしい。
VRMMO好きの友人に電話をかけて聞いてみたところ、本人はやってないがテストプレイを引き受けた友人が居るとのことで、参考にプレイヤーネームを聞いておいた。逆にこっちのこともぼちぼち話してくれるそうで、端末が届いたら友人に設定とか手伝ってもらう約束を取り付けた。
翌日の朝、新聞と一緒に資料が入っていた。
『VRMMORPG Phantasy Field Online資料在中 那珂川明典様』
このあたりで那珂川はうちしか居ない。同じ読みの中川すら近所に居ない。さっと持って入り、新聞は所定のかごに放り込み、資料を開けてテーブルに広げた。10ページくらいのA4パンフと、特典ワールドガイドと銘打たれた、三倍くらい厚みがある同じ大きさの冊子だった。
パンフには、サイトにあったような、VRMMOであることととか、ファンタジーだよとか、スキルやタイプの簡単な説明や例、その他ゲーム内のメニューの説明、VR機器の要求スペックなど基本的な内容と、最後に数枚スクリーンショットが掲載されていた。石造りの商店の並ぶ賑やかな通り、夜の砂漠とオアシス、中国とかにありそうな鮮やかな赤い屋根の建物、熱帯雨林のようなところを飛ぶドラゴンの遠すぎて小さな姿。
ワールドガイドには、プレイヤーが最初に降り立つ街から始まって、そこからいける街や地域の紹介と画像が載っていた。
最初の街から徒歩、人力車、馬車、転送魔方陣などアクセス方法ごとに、時間(もちろんゲーム内時間だ)や手間やお金がかかる順番らしい。最後の転送魔方陣なんか、お金に余裕があればマジックポイントの節約になります、とかかれている。
先の友人によればたいていのVRMMOにゲームの機能として転送があって、ゲームによっては3つくらいなんの消費もなしで行き先を設定できたりするものもあるらしいが、ポイントの消費が激しいか次に使うまでの待ち時間が異様に長いらしく、街に転送施設が用意されていること自体が優遇措置だと言われてしまった。
俺は最初の街の地図を見ながら、チュートリアルクエストのあとはまず『先輩』を観察していろいろ教えてもらおうと思った。どうせデバッグなんだし、いろんなことをする奴がいてもいいだろう。そのまま電話で友人とだべっているとVR端末が届いた。友人がそのまま『先輩』を呼んでくれて、夜はセッティングしながら三人で食事しながらまったり楽しむことになった。