第12話「『私』が宇月原真秀です」(4月22日中編)
もはや自分も内容を忘れてました(笑)
でもなんとか思い出しました(^ω^;)
その感覚は言葉で表すのは難しい。ひどく疲れていてベッドに倒れ込んですぐに寝てしまい夢を見ずに朝、急に起きた感じ、と言うのが1番近いだろう。とにかく一瞬全ての思考を自分の脳が停止して、また動き出したとそう感じたのである。そして『目が覚めたら』自分はまたあの『宇月原真秀』になっていた訳である。
「んな…」そして今に至るのである。教師含めみんなこっち見てる。俺は1人だけ立っている。完全なる沈黙。うわ、またやってしまったか。
「………」
「………」クラス全体に無言の時間が流れる。しかし数十秒もした頃だろうか。
『キーンコーンカーンコーン』授業を終えるチャイムが唐突に流れる。すると授業をしていた教師は
「えー……宇月原さん、何か質問ですか?」と聞いた。
「……いえ、大丈夫です……」その言葉とともに俺はすとんと席に座った。
「………では今日の授業はここまでです」教師はそう言って去っていった。すると教室は先の静寂が嘘のように騒がしくなる。どうやら騒ぎにはならなさそうである。
「……はぁ」なんとなく安心して溜息をつく。そして机に突っ伏すが、そこで自分の声が高くなっている事と自分の慣れた身体でないことの違和感を実感してしまう。まぁ、何がとは言わないがなんか机に引っかかったからな。まぁ、そんなに大きいわけではないが。
………とにかくこの時点で俺が少なくとも2度目の『この身体』になる現象が起きたらしい事はなんとなく把握した。頼むから夢であって欲しい。てか夢だろ、うん。だってこんなこと有り得ないだろ、現実的に。多分あれだ、自分の潜在的な意識がこういうのを想像してるんだろ。いや、それはそれでやだな………。
そんな事を考えながら突っ伏していると
「どうしちゃったの?」上から声が聞こえた。
上を向くと見知らぬ女子がいた。……いや、知っている。恐らく前回俺に話しかけてきたこの宇月原真秀の友達だ。
「いや………その………ね、寝惚けてて」適当に返事をしながらも内心では物凄く焦っていた。前回と同じミスをしたら今度こそ疑われる。そうなるといろいろと面倒臭いことになる可能性がある。そう思った俺は机にある筆記用具を片付けて素早くこの女子の前から立ち去ろうと机に目を向ける。するとノートに書いてあるものが見えた。その書いてある単語に俺は驚いて目を見開く。
「ふーん……。またこの前みたいになっちゃったのかと思った。まぁ、それならいいや。真秀、一緒に帰ろ?」
「………」
「……真秀?」俺はすぐに机にあった筆記用具とノートを鞄に突っ込み立ち上がった。返事がない俺を不審に思ったのか顔を覗き込んでいたその女子は驚いて体を仰け反らした。
「ちょ、真秀どうしたの?」
「ごめん!用事がある!」そう言って俺は駆け出した。その女子は唖然として立ち竦んでいたがそれも気にせずに走り出す。なぜならこの俺が急に女子の身体になっている理由が分かるかもしれないから、それを思わせる事がノートには落書きの形ではあったが書いてあったからだ。
そのノートにはただ、一つの単語が書いてあっただけだが俺にはその意味が分かったような気がした。
ノートには3文字
蟬坤宮
ただそれだけがノートの真ん中に書いてあった。
俺が今女子の身体でしかも服はセーラー服だという事も忘れて無我夢中で走った。階段も飛び降りるような感じだったからいろいろとダメだったとは思う。でもこの現象の理由がもし、『あそこ』にあるのならあそこに行けば解決するかもしれない。単語だけでそう考えた理由はいくつかあったが、とにかくそう思って俺はかつて1度だけ行ったその場所に走った。
しばらくして俺はそこにたどり着いた。日は傾いていて道は少し薄暗かったが何故かその場所は鮮明に覚えていたから道には迷わなかった。その場所は酷くボロボロで誰からも忘れ去られたかのような建物が鬱蒼としげる場所にある、そんな所だった。
俺はそこにたどり着いたら建物の周りを見渡した。目的は何か『装置の様なもの』を探し出すつもりだった。だが、予想に反して何もそういうものは見つからない。あるのは木と雑草と石ばかりだった。
ふと人影が見える。どうやら男性のようだった。
「誰だ!?」その男性に大声で呼びかけてしまったと思った。俺は今女子だった事を忘れて大声で強い口調で言ってしまった。
だがその男性は声には驚いたようだが彼もまた聞いてきた。
「あなたこそ……だれ?」
(あなたこそ……?)その男性の口調はとても男のものとは思えなかった。そしてどこかで聞いたことのあるような声に感じた。
そしてその男性がハッキリと見える位置まで来た。そしてその身体を見て驚愕する。
なぜならその男性は
見慣れた自分そのものだったからだ。
「なんで俺が目の前に…………てか俺なのか………?」見た目は完全に俺だったしかしその姿勢はどこか女性じみていたし、なにより顔の感じがおろおろと焦っているような、そんな情けない顔をしていた。
「なんで私がいるの………?」目の前にいる『俺』もまた驚いていた。
( …………ん?今『私がいる』と言ったな………。…………!もしかして………)
俺は1つの可能性を思いついて少し躊躇したが前にいる『俺』に聞いてみる。
「お前は………………誰なんだ………俺なのか?」そう聞くと目の前の『俺』は目を見開いた後、答えた。
「俺は日下………いえ」
「『私』が宇月原真秀です」
続く
どうも、1年ぶりです。前回の最後でも書きましたが完結までは雲隠れする気は無いのでお許しください。
さて、時間が無かったので急遽4月22日を前後編ではなく、中編を入れました。次回は後編、多分基本的な謎が解けると思います。
年内にいくらか小説は進めるつもりです。では次回もよろしくお願いします。