駄・Ⅰ
もう届かないのだろう。俺の声も、伸ばしたこの手も、彼女の元へは何一つ。
独り孤独と闘う彼女の強さと脆さを知りながら、俺は何もしなかった。
俺では彼女を助けられないと、自分の勇気の無さを他に押し付けて逃げていた。
独り気高く生きる彼女のその凛々しい瞳が、時に儚く揺れる事も、優しさ故に他を遠ざけているという事も、知っていたというのに。
彼女にとっての唯一人になるのが怖くて、俺では吊り合わない気がして、ただ逃げていた。
彼女を助けたいと願ったこの心に、嘘は無かったのに。
助けるまでいかないでも、支えになる事ぐらいなら出来るかも知れない、と気付いて彼女の元へ足を運んだ。
もう・・・遅かった。
彼女の姿はもうそこには無く、既に別の地へ行ってしまったのだと空気が告げていた。
必死に視線を巡らせ彼女がまだここにいる証を探したが、探せば探す程、彼女が行ってしまった事を思い知らされた。
不意に背後に気配を感じ、振り返るが、そこには誰もいなかった。月がただ涼やかな光を届けているだけ。
いつもはその穏やかな光に心を和ませるのに、今は胸を締め付けられるような寂しさに襲われる。“独り”だという事が、強く感じられて。
俺では、彼女のいる地に辿り着けない。いくら腕を伸ばそうと、決して届かないあの月のように。
俺はこの地に縛られて、彼女は彼方遠くへと行ってしまった。
どれだけ声を張り上げ呼ぼうとも、どれだけ彼女の事を想おうと、それが彼女に届く事は無い。
月と星とが静かな光を届けるこの世界で、俺は自分の愚かさと世界の残酷さを呪い、慟哭した。
その声に答える者は無く、世界は冷たく優しい光に満たされていた。
この度は読んでいただき、ありがとうございます。
意味が解らなくてもいいのです。私はただ自分の中に生まれた世界を発信したに過ぎません。
理解しようとしなくてもいいのです。ただ何かを感じてもらえればそれで満足です。
30分程で思うままに書いただけですから、完成度もそんなに高くないでしょうし。
こういうのを書くのは好きなので、ちょくちょく更新していきたいと思います。
題名が無いのもその所為。特に何かを意識して書いていたワケではないので。
読者の皆様が「こんな題名がいい」と思ったら、それがこの世界の名前です。