突然の進化
犬が、突然、二本足で歩き出した。
進化したのだ。
猫が二本足で歩き出した。
ネズミが二本足で歩き出した。
人間達は驚愕した。
人間に近づく進化に脅威を感じる人々もいれば、
今に、彼らと会話も
出来るようになるかもしれないと考えて、
喜ぶ人々もいた。
一つ疑問があった。
人間の次に進化するとしたら
同じ霊長類のサルの可能性が高そうに思える。
しかし、サルに変化はない。
時々、二本足でも歩くが、基本は四本足である。
人々は首を傾げた。
進化は、更に広がった。
世界中の動物達が進化した。
競馬場で、馬が二本足で歩き出した。
牧場で牛が、ヤギが、羊が、二本足で歩き出した。
動物園で象が二本足で歩き出した。
ライオンが、キリンが、クマが、キツネが、ワニが、
二本足で歩き出した。
人間のように、二本足で歩き、
前足を手のようにして扱う動物達の姿は、
生物の神秘とも見えたし、
非現実的で滑稽にも見えた。
人類の多くは、
進化する動物達を、
親のような、二足歩行の先輩のような気持ちで
祝福すると共に、
四本足で歩く可愛らしい姿を今後見れなくなることへの
一抹の寂しさを感じていた。
そして、数日が経った。
動物達は皆、
慣れない二足歩行で
腰を痛めた。
皆、辛そうに寝転がった。
ぎっくり腰で一ヶ月以上動けなくなった動物達もいた。
牛やキリンが特に辛そうだった。
知能が進化しても、
身体が、骨格が、
二足歩行出来るように進化していないので、
齟齬が生じたのだ。
動物達は皆、
痛々しい姿で、四本足へと戻っていった。
進化は少しずつ、
時間をかけて起きるものだから。
そのことが分かっていたのか、
サルは、
他の動物たちの様子を見ながら、
呑気にあくびをしていた。




