毒親に捨てられた私は聖夜の夜に復讐という名の円舞曲を踊る
【作者より】
今回は人を殺める場面や死描写、グロ描写(?)といった残酷描写が含まれます。
苦手な方はご注意ください!
12月25日、クリスマス。
私はこの日が嫌い。
何故ならば、私の両親が双子の妹が捨てられ、別の年のこの時期に私も捨てられたから。
私の家は由緒正しい家系で食事のマナーから立ち振舞いまで全てにおいて厳しかった。
私たち姉妹は必死になって厳しい礼儀作法についていこうとする。
私は何においても完璧にこなして両親から褒められる一方、妹はいい加減にこなしていたため、毎回のように怒られていた。
彼女には何時も呆れてしまう私。
実は両親に褒められることが嬉しかった反面、「私はお姉さんなのだからしっかりしないと」というプレッシャーがあった。
彼女は両親から「出来損ない」と言われ、9歳のクリスマスに家の外にイヌのように段ボールに入れられて私に見えるように捨てられた。
まるで、「お前も同じようなことしたらこうするからな! 覚悟しておけ!」と言われ、見せつけるかのように――
私は「このままだと寒くて死んじゃう!」と言ったけど、聞く耳を持たない両親。
彼らは妹をどう思っていたの?
捨てられた彼女はどんな気持ちだったの?
その当時の私には全く分からなかった。
そして、妹は見知らぬ男性に保護されたところを私は家の窓から目撃した。
彼は私と目が合い、一礼する。
私も同様に頭を下げた。
どうか彼女を大切にしてくださいと願うように――
†
時はあっという間に4年の月日が流れた。
私は長女として後継者……次期当主となるべく、さらに厳しい指導に強いられている。
どのような時や場面でも上品にかつ冷静に対応できるようにと――
常に仮初めの笑みを作り、他者との関係を持つことに疲れ始めていた。
そのことに関しては誰も気づいてくれないという葛藤があったのは嘘ではない。
そして、私が13歳になった年のクリスマスに妹と同様の手段で捨てられた。
お父様から「お前はこの家の人間ではない! さっさと出ていけ!」と、お母様からは「今まで貴女に期待してきて損したわ!」と言い放たれた。
私には2つ心当たりがあった。
1つ目は両親からの厳しい礼儀作法の指導についていけなくなったこと。
2つ目は両親は「彼女はもうすでに死んだ」と言っていたが、まだ妹が何処かで生きていると信じ続けていたこと。
私の優しさ故、反発するようになったことが原因だと思う。
記憶を何度も辿っても彼女の葬祭は行われた記憶なんてない。
私は妹が見知らぬ男性に保護されていくところをこの目でしっかりと目撃したのだから嘘ではないわ!
私の心にある感情が芽生えた。
私の両親は毒親だ。
毒親はどのような手段を使ってでもいなくなればいい。
彼らから今まで受けてきた愛情はなんていらない。
何時か、両親に復讐してやりたいと――
思わず笑みが浮かび、笑い声も何時もと違う。
今の私の表情はどのような顔をしているのかは分からない。
私の心にピキッとひびが入った途端、パリンと割れる音が聞こえてくるようだった。
凍てつくような寒空の下、通行人の姿なんて見当たらない。
私は狂ったように笑い出す。
当然でしょう?
だって、私はついに壊れてしまったのだから!
その時、ようやく妹の気持ちがよく分かったような気がする。
正確には分からないけど、おそらく彼女もそう思ったのでしょうね?
さようなら。
素直で優しく、両親に期待されて厳しい礼儀作法を躾られ、常に仮初めの笑みで過ごしてきた私――
こんにちは。
それらを全て捨てる覚悟ができ、冷酷で闇に溺れかけている私――
†
私は寒さで凍える中、保護してくれる人を待っていた。
その人は誰でも構わないと思っていたやさき、私は見知らぬ女性に保護されることになり、ほっとしている。
彼女はとある組織のマフィアの首領だと話していた。
マフィアって裏の世界というイメージが強いけど、まだ13の私にとっては安心して生活できる場所と誰かの愛情さえあればそれでいい。
あとは両親に復讐できれば――
意外なことに厳しい礼儀作法が役に立っているのはここだけの話。
誰もが苦戦するであろうテーブルマナーはもちろん、舞踏会などの立ち振舞いは簡単にクリアしたのだから。
幸いなことに、彼女は私に暗殺行為についても懇切丁寧に教えてくれる。
慣れというものは実に恐ろしいもので、最初は人間を殺めることに対して抵抗があったけれど、無理のない範囲で訓練や任務に出向いたことによって次第になくなっていった。
私はすっかり表の世界から裏の世界の人間になり、「黒薔薇」と呼ばれるようになった。
それが私の通り名――
由来は元当主候補であり、上品さと冷酷さを併せ持っているからと言われており、この通り名は響きがよくてとても気に入っている。
中高生だった頃は学校に通いながら上手く両立させ、暗殺のスキルを磨き続けた。
†
私は20歳になり、組織の会合の帰りに実家に立ち寄った。
もちろん、きちんと黒手袋といくつか武器を隠し持っているわ。
この家を追い出されてちょうど7年経過したクリスマス。
家の外観は最後に見た時とほとんど変わらない。
その光景が懐かしい反面、ようやく復讐することができるという高揚感が同時に入り交じる。
お父様とお母様は自分たちが捨てた実の娘が唐突に姿を現したため、素っ気ない対応をする。
そうよね?
私は両親に何も予告しないで出向いたのだから。
私は嘲笑しながら刃物をちらつかせると「おい、刃物から手を放せ!」「貴女には物騒なものは似合わないわ!」と言ってくる。
彼らの口からそのような言葉が出てくるということは少し同情してくれているのかしらね。
貴方たちに同情される筋合いなんて何処にもないわ!
貴方たちは私や妹を捨てたことすら覚えていないの?
貴方たちにとっては私や妹は実の娘ではないのでしょう?
私が捨てられた後、心が壊れて狂い始めた時はどちらも止めなかったくせに!
今になって足を洗って復縁しましょうだなんてもう遅いわ!
闇に溺れ、悪堕ちしたこの私がその場で素直に武器を手放すわけないじゃない!
さあ、踊りましょう。
復讐という名の円舞曲を――
狂いに孕んだ笑みを浮かべ、刃物を振り回す。
まずは手始めにお母様から片付けさせていただきましょう。
血液でできた花弁が舞う中、その反動で返り血を浴びる。
ふふっ、いい気味だわ!
次は首の動脈あたりに刃物を入れさせていただこうかしら?
私は彼女の首の動脈を目掛けて刺した時、左頬からスッと何かが切れた感覚と生あたたかい血が流れているのが分かった。
右の黒手袋を外し、触ってみたら私の血。
白いワイシャツに少し血の跡がついている。
ずっとお母様の返り血だと思っていたけど、それはお父様の安物のナイフの仕業だった。
静かな部屋の中で舌打ちをする。
彼は「親に向かってなんて態度だ! さっさと武器を床に置け。そうしないと……」と言った途端――
私は無言で首を強く絞め、持っていた医療用メスで腹部を数回刺し、致命傷を負わせてあげたわ。
あら、まだ何か言いたいことでもあるのかしら?
口をパクパクさせているけど残念ね。
心臓に思いっきり突き刺してとどめを刺しましょう。
ふふっ、ざまぁみなさい?
貴方たちは何れにせよ死ぬ運命なのだから!
私は体温すら感じられなくなった二体の冷たい亡骸を見て、嘲笑しながら踵が高い靴で蹴散らせ、その場をあとにした。
†
自らの手で毒親だった両親を殺めてから6年後――
私は25歳になる少し前にマフィア幹部となり、現在26歳。
今まで胸のところまで伸ばしていた黒髪は顎くらいのショートボブに切り揃えた。
左頬は縫ったとしても跡がずっと残ると言われ、見えないように隠すためであるけれど、ロングヘアだと髪の管理が大変だから。
私の組織では女性幹部はドレスを着用していることが多い。
医療用メスとか果物ナイフとか細かな刃物がメインとなる私にとっては不便であり、保護してくれた首領も同じように思っていたらしく、黒い背広を手配してくれた。
胸元には小さいけれど、蝶の刺青を入れているため、ワイシャツの襟を立てている。
化粧はこの数年で濃くなった。
特にアイメイクはこれまではやっていなかったけれど、今はどうした? と問われるくらいしっかり施すようになっている。
稀にアイラインで失敗することが多くて大変……
口紅は彼女からいただいた黒口紅と香水も上品なローズ系を使用している。
ネイルももちろん黒いもの。
今は化粧のせいか完全に誰なのか分からない外見になっている。
何れは声を聞けば分かる人が現れるかもしれないけれど、そう簡単には分からないはず。
過去の私はもう何処にもいない。
私は黒手袋をはめ、今宵も円舞曲を踊る――
最後までご覧いただきありがとうございました。
もともとこの作品は短編小説として書いていたものです。
途中で行き詰まってしまったので、「ポエム風ダークファンタジー」として投稿させていただきました。
できたらいつか短編小説としてリベンジしたい……
※ 本日(2025/12/25)の活動報告には簡単な女性主人公の設定を書かせていただいています。
ご興味がある方は是非ご覧ください。
今回のリンク先はこちら。
↓
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/355050/blogkey/3554711/
2025/12/25 本投稿・後書き欄追記




