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2つの王宮の病巣

ベロニカ以外の皆が席につき、落ち着いたところで僕が話だす。

公爵には、自らの身分は明かせないが、ある方の指示でセリーヌたちを救うことになったと言うことを伝えた。難色を示す公爵だったが、アランとジュリが僕のことを尊い身分のお方です。しかし、今は事情があり身分を明かせませんが私たちが命をかけて保証いたしますと口を聞いてくれたことで納得してもらえた。


まず事件の概要を示す。


今回の事件の黒幕は、ミノラ王国の王太子カイデルだと言うこと。


目的は、目障りなセリーヌを殺し、アレジ王国の王位継承権を持つ二人の子を自分の意のままに操って、アレジ王国を乗っ取ること。


方法は、ベロニカとアレジ王国の第2王子テラノを使って、セリーヌと二人の子供をアレジ王国から脱出させ、そのどさくさで、セリーヌを殺し、二人の子供をミノラ王国へ運ぶ。

その後、自国の王女が殺されたことを理由に軍を派兵し、アレジ王国の王宮を抑え、王と王太子を廃位し、セディを後継に指名し、成人まで摂政をおく。


この策を成功させるためには、セリーヌが自ら子供を連れ、王太子宮を出ていかなくてはならない。そのために、ベロニカを使うことを思いついた。ベロニカは、ずっとセリーヌがクサイン王太子から酷い扱いを受けていることに憤りを抱えていた。その思いを利用し、セリーヌの保護をちらつかせて、王宮から自ら出るように仕組めば良い。


セリーヌに逃げなければいけないと思わせるためには、相応の仕掛けが必要。自分が兵を率いて国境を越えることはできないから、第2王子にアレジ王国の摂政の座とミノラ王国の公爵の地位を約束し、王太子宮に騎士の集団を非常識な時間に送り込ませる。それを見たセリーヌが疑心暗鬼に陥るようにベロニカに誘導させる。


そして、ことがなった暁にはベロニカは殺し、第2王子はミノラ王国との内通の証拠を王に提供し、粛清させる心算であった。


ここまで話終わると、公爵はベロニカに向かって尋ねた。


「其方は、長年セリーヌに忠義を尽くしてくれた女官である。なぜ、そのような策に乗ってしまったのだ。」


「カイデル王太子が、『セリーヌが不憫でならん。あの浮気者の元に送り込んでしまって。全てセリーヌに背負わせて、アレジ王国との平和を保つことが本当に必要なのか疑問である。我は、セリーヌを一度国本に引き取って、クサイン王太子にセリーヌに対して謝罪させたい』と言われたのです。今、離宮にはクサイン王太子の愛人が集められておりますが、数人の愛人に子供ができ、妃に昇格すると言う噂が立ったのです。正妃はセリーヌ様だとはいえ、側妃ともなれば、王太子宮に移ってきて、恐れ多くもセリーヌ様に挑戦するものが出てまいりましょう。その際、絶対にセリーヌ様の肩を持たないのがクサイン王太子です。それゆえにカイデル王太子の嘘に気づくことができませんでした。」


それを聞いた公爵は顔を歪め、


「そうか。そこまで酷いことになっておったか。セリーヌには悲しい思いをさせてしまい申し訳無かった。」


と絞り出すように声を出した。プリシラ様はセリーヌの肩を抱きしめていた。


「とはいえ、一国の王太子妃を勝手に宮から外に連れ出して危険に晒したことは事実。打首となっても仕方のない罪だとお言うことは承知しております。願わくば、私の首一つでおさめ、セリーヌ様に類が及ばないようにしてもらえれば私はそれで構いません。」


床で土下座しているベロニカは顔を上げることなく公爵に願い出る。


「ベロニカ、それはなりません。あなたは自らの命と引き換えに、私たちを守るための結界魔法を使って守ってくれたのです。あなただけに責任を負わせることはありません。」


そう言って、皆が黙り込んでしまったので、僕はみんなに尋ねる。


「法は法。統治を行うなら法を尊ばなければならない。いかなる理由があれど、それを動かしてはならない。しかし、運用するのは人間。そこには様々な解決法がある。ここで原点に立ち戻ろう。セリーヌ、あなたはこのままあのようなクズと婚姻関係を続けたいですか?王太子妃であり続けるためにこの先もこのような扱いに耐えていきますか?」


「私は、王女として生まれ、二つの国をつなぐことを期待されここにきました。今もその役割から降りたいとは思いません。夫の愛情を得られないことも最初から諦めていたので、それほど悲しいとも思いません。でも、そんな私の心の歪さが、ベロニカを追い込んだとしたら、私は主人としてその責任を感じています。」


「セリーヌ様、それは私が至らないせいで」


「いえ、いいのです。私は昔から、周りの期待に応えなければならないとずっと頑張ってきました。頑張っていれば親からも愛してもらえて、みんなが幸せになるって信じていました。でも、私が頑張ったせいで、兄は壊れてしまいました。両親は私を見ようともしませんでした。私は自分の子供たちにそんな悲しい思いをさせたくない。だから、どうすればいいかわかるのでしたら、どうか教えてください。」


皆が色々抱えて生きている。正しい道などどこにもないのかもしれない。でも、それを求める努力は放棄してはならない。


「わかりました。では、セリーヌ・ベロニカ・プリシラ・クレリック私といきましょう。ナリス様神術を使わせていただきます。」


『round table』


迸る光の渦の中に現れた白く輝く亜空間に大きな丸いテーブルが現れ、そこには全ての関係者が着席していた。


僕がいて、右回りに、セリーヌ、ベロニカ、クレリック、プリシラ、マルードアレジ王国国王、クサイン王太子、テラノ第2王子、カイデル王太子、ガストンミノラ王国国王、


強制的に席につかされた者たちは、驚きを隠せないようだが、席につく顔ぶれを見て警戒心をあらわにしている。一国の国王たちを強制的に呼び出してるわけだから、ここは上から行こう。


「僕は蒼。其方たちをナリス様が管理されているラウンドテーブルに召喚したものだ。マルード、ガストン、ソナタらは国王でありながら、国の乱れをどう考えておる?今回のセリーヌの一件について、真実に辿り着いておるのか?」


「こんなところに、我を連れてきてどうするつもりだ。さっさと元の場所に戻せ。」

案の定マルードが僕に突っかかってくる。それの相手をしてると話が進まないから、ここはションベンちびるまで威圧してみよう。


「誰に対して口を聞いておる」マルードを睨みつけるとセリーヌを除く王族たち全員にグラビティで圧をかけていく。ナイトメアで、足を切り落として、背を短くしていって、下から見上げる形でしか、僕を見れないイメージを植え付けていく。


「神の裏庭に、一国の国王を召喚する力を持つものがただの人間であるはずがなかろう。所詮人間世界の中の序列でしかない薄っぺらい権威に我が跪くとでも?」


「お許しください。」マルード初め、皆が一応わきまえたので、一度許すことにする。


「クレリック説明を」


「は。では」やはり、クレリックは頭がいい。わかりやすく簡潔に事件の要点を説明していく。


「それで皆に聞きたい。この事件どう判断する?ガストン、其方から申してみよ」クレリックの説明が一段落したところで皆に尋ねた。


「まず、カイデルがこの事件の主犯であることには異議はない。また、ベロニカには、セリーヌを連れ出した罪があり、テラノ王子は協力者としての罪があると考える。」


「では量刑はどうなる?」


「カイデルは策を練ったが、実際の被害を起こしていないので、3ヶ月の謹慎。ベロニカは王族を危険な目に合わせたことで、打首。テラノ王子は自分の騎士を門に派遣しただけなので、王太子への謝罪でいいのではないか?」


そうだ、そうだと口々に喚き出すバカな王族。


「王族と、女官では立場が違うから量刑が異なるとそう言うことか?」と僕が問えば


「当たり前のことを聞くな。馬鹿らしい。」と答える、ガストンとマルード。


そうか、やっぱりこいつらの自浄作用は期待できないか。


「ちなみに其方たちの国の身分はどのようになっているのだ?」


「我が国は、王、王太子、王族、貴族、平民、獣人、奴隷だ。」


そうか、ではテミス様のなのもとに神術を発動する。


『ジャッジメント』


テーブルの上に大きな天秤が現れる。


このものたちの罪を裁き罰を与えよ。


セリーヌ・・・・愛を学び、愛を知り、愛を与え、愛されなさい。国と国ではなく人と人を結ぶ鎹になりなさい。


ベロニカ・・・・視野を広く持ちなさい。セリーヌ のためだけに生きるのではなく、分け隔てなく、公平に皆に接しなさい。目的のために手段を選ばないのではなく、手段は選ばなければいけない。


プリシラ・・・・目を逸らさず、しっかり現実を見る必要がある。諦めずに、あなたの正しい心で見つめ続けてほしい。


クレリック・・・・愚かなものに、位を譲る必要はなし。其方にこの2国の統治の委託をします。あなたが思う正しい政を行いなさい。


ガストン・マルード、お前たちは最底辺からやり直せ。奴隷落ち。


クサイン・カイデル・テラノ、お前たちは貧しいうちの平民落ちだ。どうやって人生を逆転させる?


過去の記憶を消去し、転生させる。

カリス様の名の下に神術を行使する。『教育転生』

夥しい光の渦に囚われて消えていった5つの魂は洗浄され、決められた体に落ちていく。


この世界を下から眺めた時、お前たちの目には何が映って何を考える?それが人を見下して奪うことでないことを心から願うよ。


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