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アンダルシア城の主人

アンダルシア城の主人


クレリック・フォン・アンダルシア公爵。現アレジ王国国王、マルード・ラ・シ・アレジの叔父に当たる。気性が激しく、気の荒い、前国王の弟でありながら、文武に秀で、性格は穏やかな名君である。アンダルシア公爵領は、北に商都オリサルト、中央に古都ランドサットを擁し、経済・文化・流通の一台拠点となっている。アンダルシア城は古都ランドサットの中にあり、以前は王城であった。


アンダルシア公爵の妻が、ミノラ王国の王女であったプリシラ・ラ・シ・ミノラ、現在のプリシラ・フォン・アンダルシアである。性格の合わない、ミノラとアレジの前国王同士の中を結果的に繋ぎ、戦争を回避するのに一役買った夫婦である。その実、二人は政略ではなく恋愛結婚であり、結婚して二十年の時が立つが、いまだに仲睦まじい夫婦である。


そんな二人が期待しているのが、セリーヌである。美しいだけではなく、優秀で、善良な王太子妃は、出来の悪い二人の王太子を抑える最後の希望と思われている。そのセリーヌが、昨日から子供を連れて行方不明であり、反逆者であるというとても信じられない一報が届き、二人は心から案じていた。手のものを放ち、情報を探らせるも、森の中の炭焼き小屋からパタリと情報が途絶えてしまっていた。プリシラは、自分に娘がいないのもあって、小さい頃より本当の娘のように接してきていた。


「あなた、新しい知らせはありませんか?」

ソファに座りながら、編み物を手に持ち放心状態だったプリシラが、部屋に入ってきた、クレリックに気付き尋ねる。


その問いかけに、軽く頭を振ると

「いつものように、女遊びに耽るクサインが離宮に詰めていて留守の時に、午前3時というあり得ない時刻に第2王子のテラノの配下が王太子宮に詰めかけたらしい。それを見て、逃げ出したようなのだが、その後の足取りがつかめていないようなんだ。森の中の炭焼き小屋の床から、地下通路に続く通路が見つかったので、そこから逃げ出したのだろうとは言われているが、そのような出口は王家は作っていないらしく、それも反逆の意図ありの証拠にされているらしい。」


「何故、そんな非常識な時刻に騎士を派遣したとテラノは言ってるのですか?」


「それについては、国家の安全のための秘密事項であると言うことで答えていないようなのだ。」


「いくら王太子がいないとはいえ、王太子宮に騎士を向けるなど、不敬であることには代わりないのに。」


そう言って、二人でため息をついていた時、執事が部屋に入ってくる。


「旦那様、奥様、緊急の用事とのことで、マーシャル夫人宛の書簡を携えたものが裏口に参っておりますが、いかがいたしましょう?」

「え?」

顔を見合わせた二人は、


「すぐにここに通してちょうだい。全員をできるだけ誰にも見られないようにお願いね。」

執事はその切羽詰まったような勢いにびっくりしながらも


「はい、承知いたしました。」と返事をすると、裏口へと急いだ。


裏口へ戻ってみると、先ほどは一人だったメッセンジャーが七人に増えており、赤子と少女の姿もあった。

執事は彼らに大きなストールを渡すと、


「それをかぶって、こちらから私の後ろをついてきてください。」と言うと、先導し始めた。


大きな扉の前で、ノックをし、入室の許可が与えられると、そこには、上品な佇まいの二人の貴族が座っていた。


「おばさま」

セリーヌがそう言ってプリシラに駆け寄ると


「セリーヌ、やっぱりあなたね。二人の約束を覚えていてくれたのね。」

そう言って優しく抱きしめた。昔、緊急の時の合言葉を決めていたことをセリーヌが覚えていてくれたことが嬉しいようだ。


「おばさま、この子がアリサで、この子がセディ。」


「まあ、アリサあなた随分大きくなって。あなたが赤ちゃんの時にあったきりだから、こんなに可愛い女の子になってるなんて。」


「アリサ、私のおばさまのプリシラ様よ。あなたの大叔母にあたるかたよ。」


「大叔母様、アリサです。」可愛らしく礼をするアリサを抱き締めるプリシラ。


それを横目に、セリーヌはアンダルシア公爵に挨拶する。


「クレリックおじ様、こんなことになってお邪魔してしまい、申し訳ありません。皆様にはご迷惑をおかけしないように、いたしますので、まずは話を聞いてもらえませんか?」


「セリーヌ、そんなこと気にする必要はない。それより、よく私たちを頼ってくれた。お前たちを追い込んだ奴らには、私が相応の罰を与えてやるから安心しなさい。」


「おじさま」

セリーヌが見上げると、頼もしい笑顔を湛えた大貴族がそこにいた。


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