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僕が転生した訳は

1僕が転生した訳は


僕は、相馬蒼、20歳 大学2年生。


僕が小学五年生のある日、学校から帰ってきたら、母がいなくなっていた。父に電話するも出ず、その日の晩は誰も帰って来ず一人で過ごしていた。次の日の朝、不機嫌な顔をした父に起こされ、田舎の祖父母のうちへと連れて行かれた。隣の部屋で、祖父母と父が言い争っている声が聞こえたが、父が出ていき、静かになったところでばあちゃんが部屋に入ってきて、

「心配しなくていいからね。ここで一緒に暮らそう」って言ってくれた。


小さい頃から、両親は僕に興味を示さず、最低限の金は置いてあるが、ネグレクト状態だった。

そんな生活からすれば、祖父母との生活は初めてぬくもりを感じた幸せな時間だった。


裕福ではなかったけど、無事に大学に合格し、大学近くのアパートを借りて一人暮らしを初めてしばらくたった頃に、祖父が急に倒れて他界。

葬儀には、父も母も現れず、ばあちゃんとご近所さんで家族葬を営んだ。このことに、ばあちゃんはいたく悲しんで、

「どこで育て方を間違ってしまったのだろう」って悲しそうに呟いていた。


僕を祖父母に預けた後、それぞれ再婚し新しい家庭を築いていたようだ。

僕に興味を示さないことには、もういまさらって感じでなんとも思わなかったけど、ばあちゃんを悲しませることに関しては怒りを覚えていた。


49日を終えて、しばらくぶりにうちに戻ってみると、ばあちゃんの様子がおかしくて、病院へ連れて行った。どこも悪くないと言い張って、家から出るのを嫌がっていたのだけど、お願いしてなんとか見てもらったら、認知症の疑いがあるので、精密な検査が必要ですと言われた。


それで、数回病院に通って検査をしたら、やっぱり認知症で、先生に薬を処方してもらって帰ってきた。そこに、数年ぶりに父が来ていて、

「何の用で来たんだ?」と尋ねたら

「実家に帰ってきて何が悪い。相変わらず可愛げのないガキだ。」といい、俺の頭を叩いた。

頭に来た俺は、一本背負を決め、腕を取って

「養育費を一円も払わず、育児放棄して、じいちゃんの葬儀にも出なかったお前が何の権利があってこの家の敷居を跨ぐんだ。それにこのけばい女は誰だ。」

「お、お前に関係ないだろう。再婚した妻だ。」

「はあ?てめえ頭湧いてんのか。そんな女この家に入れんじゃねえ。」


「蒼、もうやめて。」

ばあちゃんが止めるので、仕方なく手をはなす。


「宗次郎、あなた仏壇にお線香はあげたの?」


「ああ、さっき拝んどいたよ。もう用はないから帰るぞ。」

そう言って、出て行った。

何の興味もなさそうに、能面を貫いた女も何も言わずに出て行った。


「はああ。あんなのが親だなんて。ほんとに信じられない。ばあちゃん、気にすんな。」


「蒼、ごめんね。ほんとにごめんね。」

そう言って、泣き始めるばあちゃん。大丈夫だよって背中を刺すってやるしかできない自分に歯噛みするしかなかった。


それから、1ヶ月後。

ばあちゃんから電話が。


「蒼、助けて。」


慌てて実家に戻ると、不動産屋を名乗る男たちが来て、この家を買ったので、今すぐ出ていくようにと退去を迫ってきた。全く意味がわからなかったのだが、あの日親父がうちに来て、家の権利書と印鑑、通帳などを持ち出し、任意後見制度を使って、ばあちゃんが認知症の診断が下りたことで自分を後見人にし、勝手にうちを売却していた。その上、預金も引き出してあり、その日は帰ってもらったけど、どうしようもなく、身の回りのものだけを持って、僕のアパートにばあちゃんを連れてきた。


学校を辞めないで続けるためにバイトを増やして、一生懸命頑張るしかなくて、ばあちゃんの徘徊が始まって、僕の精神と肉体の限界を迎えて、大声を出してばあちゃんを怒ってしまった。


それで泣きながら出て行ったばあちゃんが車に轢かれてしまった。

10メートル近く飛ばされたのに、なんとか起きあがろうとするばあちゃんを抱き上げて、救急車を近くの人に呼んでもらった。

僕に蒼ごめんねって何度も言いながら息を引き取った。


それからのことはあまりよく覚えていない。多分アパートにばあちゃんを連れて戻って、ばあちゃんの愛用していた包丁を鞄に入れて、自分が元住んでいた父のマンションに行ったんだろう。

鍵束にはまだ鍵が刺さってて、それを使うとすんなり開いたんだ。


オートロックを抜け、玄関の扉を開けて奥のリビングに向かう。

リビングの扉の前で立って中を伺うと、クソ親父が得意げに実家の売却がうまく行ったと声を上げていた。どうして、自分の親や子供にこんなことができるのかさっぱりわからなかったけど、考えてみたらあいつのことが理解できたことなんて一つもなかった。


そう思うと、心の中が抜けるように青い空のようになって、リビングに入った瞬間、なんの躊躇もなく父に向かって行った。どれぐらいの時間何をしていたのかわからないけど、多分肉片になるまで刺しまくったんだろう。

気がついたら、部屋に人はいなくなってた。ああ、もう敵はいないんだ。よかった。

じいちゃん。ばあちゃん今そっちにいくよ。そう言って、ベランダから身を投げた。


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