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13.友達

「リューゴ……ごめんッ……!」


 アズールが俯きながら言った。


「ボク……ずっとリューゴに劣等感を感じてた。弱くて、いくじなしで、優柔不断で……。リューゴといると、自分の情けなさを痛感して苦しかった」


 大雨のなか、警報が鳴り響き、兵士たちが国境の壁付近に集まっていく。


「ボクには”覚悟”が足りなかった。何があってもリューゴを信じる”覚悟”が。リューゴはボクがどんなに頼りなくても、信じてくれた。ボクもそれに応えたい」


 アズールは振り返った。


「ボクが作った乗り物でリューゴをどこまでも連れて行く。ボクはリューゴやお姉ちゃんみたいに戦う力はないけど……それでもリューゴと一緒にいたいんだ。だって……友達だから……!」


 アズールの声が震える。

 リューゴは一言、


「任せたぜ」


 と言った。

 アズールは嗚咽を上げながら深く頷いた。


「うん……ッ! ありがとう……!」


「まったく、泣き虫な弟ね」


 ロゼがやれやれといった調子で息を吐く。

 リューゴは言った。


「で、なんでロゼが生き返ってるんだ? 空も飛んでるし」


 するとロゼに睨まれる。


「なに、文句でもあるの? リューゴの癖に生意気になったわね」


「や、別に文句って訳じゃ……。アズ、何があった?」


「えっと、それは……」


 アズールが恥ずかしそうに口ごもる。

 ロゼがニヤニヤしながら言った。


「アズがどうしてもアタシに会いたかったっぽくてー。”バース”で召喚されたってわけー」


「そういうことか。アズ、ちょっとキモいな」


 リューゴの言葉に、アズールは顔を真っ赤にして振り向いた。


「う、うるさいな! 仕方ないじゃん! さっきは絶体絶命だったんだから……」


 口ごもるアズール。

 リューゴは吹き出すように笑った。


「悪い、冗談だ。ロゼ、会いたかったぜ」


 リューゴの言葉に、ロゼは恥ずかしそうに顔を背けながら「……アタシもよ」と言った。

 それから、次第に迫ってくる国境の壁を見ながらリューゴは言った。


「聞いてくれ。どうやら、ヨゾラは生きてる」


「「!」」


「ゾズマとかいう野郎は、ヨゾラは地上にはいないと言っていた」


 アズールが反応する。


「地上にはいない……つまり、”アルキア”にいるってことだね」


「ああ。”アルキア”の入口は西の国にある。つまり、何が何でもあの壁を越えなきゃならねェ」


「でも、このバイクじゃ壁を越えるのは無理だよ。突風に煽られたら最悪墜落する」


「ならやることは一つしかねェだろ。――あの壁をぶっ壊しゃいい」


 リューゴの腕に黒炎がほとばしる。


「そのためにはどでかいエネルギーが必要だ。アズ、運転は任せたぞ」


「うん、任せて!」


 リューゴはバックミラー越しに背後から迫るヘリコプターと飛行バイクを見た。


「――くるぞ」


 直後、ヘリコプターと飛行バイクから一斉に銃撃が飛んでくる。

 リューゴは黒炎をバイクの周囲に張り巡らせ、銃弾を弾き飛ばしていく。

 アズールが叫んだ。


「地上からもくるよッ!!」


 数秒後、ロケット弾が数発飛んでくる。

 銃弾を破壊したエネルギーでロケット弾を残らず撃ち落とす。

 爆発したロケット弾から黒い煙がリューゴに吸い込まれていく。


「クソッ……まだ足りねェ」


 リューゴは四方八方からの攻撃を全て黒炎で破壊していたが、やがてバックミラー越しに背後から一直線に迫ってくる飛行バイクに気づいた。

 ロケット弾を撃ち落とした際の閃光で見えた運転手は、ゾズマだった。

 リューゴの頬に汗が伝う。


「まだ追ってくるのかよ。大した執念だ」


「あいつはアタシに任せなさい」


 ロゼの身体が実体化していく。直後、


「くたばれェッ! 犯罪者どもッ!」


 ゾズマが雄叫びとともに飛行バイクに備え付けられた機関銃を放ってくる。

 ゾズマが放つ攻撃は、必然的にリューゴに対する”追尾弾”になる。

 ロゼは手足を爆発させた勢いで弾丸の雨の前に躍り出ると、右腕を横なぎに振るった。


「シャラァッ!!」


 ロゼの右腕が爆発し、爆風が広範囲に広がり弾丸を全て粉々に砕く。


「ゲハハハハッ! この程度!? もっと撃ってきなさいよォッ!」


 続け様に飛んできた弾丸も笑いながら吹き飛ばしていく姿を見て、リューゴはニヤリと笑った。


「へっ。相変わらずイカれたヤツだ」


 そして、地上から放たれたミサイル弾を黒炎で破壊したのと同時、リューゴは声を張り上げた。


「――溜まったぞ! やれ、ロゼ!!」


「アタシに命令してんじゃないわよ!!」


 ロゼが後方に向けて両手を伸ばす。

 ロゼのカチューシャが光り輝いていく。


「――〈赤煌爆撃レッド・キャンディエ


 直後、ロゼの両手から大爆発が起き、大気が震える。


「ぐわああああっ!!」


 爆風がゾズマのバイクを飲み込む。

 爆発の衝撃でリューゴたちが乗るバイクは急加速し、国境の壁にぶつかる勢いで迫る。


「おおおおおおおおっ!!!」


 リューゴは宙に飛び上がると、右腕を限界まで引き絞り、すべての黒炎を拳に集中させた。


「――――――〈破拳〉ッッッ!!!!」


 巨大な黒い拳がリューゴの右腕から現れ、壁に迫る。


「いっけェ――――ッ!!」


 アズールの声が響いた。

 刹那、破砕音が天に轟き、拳は壁を貫いた。


「リューゴ!」


 爆発で飛んで戻ってきたロゼがリューゴを抱えてバイクに戻る。

 衝撃で激しく揺れるバイクをアズールが制御し、勢いそのままに壁に空いた穴に突っ込んだ。

 そして――


「越えたぞ……!」


 目の前に広がるのは暗い夜の闇。

 だが、確かに壁を抜け、国境を越えたのだ。

 アズールが満面の笑みで振り返った。


「やったッ! リューゴ、やったよッッ!!」


「ああ。そう……だな……」


 ふらついてバイクから落ちそうになるリューゴをロゼが支える。


「ちょっと、リューゴ!?」


「悪い……ちと無理しすぎたみてェだ。少し……休む……ぞ……」


 次第に二人の声が遠くなり、リューゴは気を失った。



◆◇◆




「はぁはぁ……! ク、クソ……!」


 降りしきる大雨のなか、ふらふらとした足取りで暗い森を歩く人物がいた。

 白髪の男――ジンライは、毒草によって本来三日は動けないほどの痺れがあるにもかかわらず、その精神力だけで身体を動かしていた。

 ジンライは歯を食いしばり、怒りに満ちた眼差しで西の方角を睨んだ。


「破壊士どもめ……絶対に逃がさんぞ……! 地獄の果てまで追いかけ、必ずこの手で始末してやる……!」

(2/17)当話にて一章終了となります。現在二章執筆中のため、完成次第毎日投稿再開となります。

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