デートする陰キャちゃん(珍しく外に出る、偉い)
「あっつー……」
珍しく外に出た私は駅に向かって歩く。まだ5月だというのに日差しが強く、うざったい。遠くから高校生くらいの声が聞こえてくるが……今日は運動会か何か?不登校には関係ない話か。
「てか何でこの時間なんだろ……普通もっと早朝とかじゃね……?」
今日はなんと相手がいる。昼間に集合なのは相手の都合によるものだと頭で理解しているが、暑さのあまりその理解が溶け始めていた。
「っといかんいかん。電車に遅れる!」
私はなけなしの体力を振り絞り、情けない全速力で駅へと向かった。
◇
「おまたせ」
「んーん!全然待ってないよー!むしろこんな時間にごめんね?」
「いやいや、私暇人だし大丈夫!」
駅を降りてすぐのところに彼女は立っていた。そう、私の天使ことサンちゃんだ。
サングラスと日傘で顔を隠し、ロングスカートのワンピースと肘まであるUV手袋で、肌の露出を限りなく抑えている。こんなにごちゃごちゃしていてもおしゃれで可愛く見えるのだから、女の子というのは不思議だ。
言っておくが私は女の子ではなく引きこもりという種族だからな。女の子という単語ならこの高身長天使よりもふさわしい年齢かもしれんが、例外というのはどこにでもいるんだぞ。
「その格好じゃ暑いでしょ?お店行こっ」
「あ、うんっ!えへへ」
私は見惚れながらもサンちゃんの手を引き、お店へと向かった。
「いやぁ、今日もツッキー真っ白だね」
「そりゃ外に出てないからね。サンちゃんも真っ白じゃん」
「そりゃ私は苦労してこの肌を保ってるんだもん。私だって高校生の頃は……」
「今も高校生って言われたらそう見えると思うけどねぇ……」
リアルのサンちゃんはよく私のほっぺや二の腕をプニプニしてくる。若者の肌に触れて昔の自分を思い出しているのだとか。サンちゃんもまだ二十代だし若いだろ……。
「二十代後半は若くないんだよぉ!」
「後半って言っても25じゃん」
「ツッキー酷い!」
「私が悪いの!?」
傍から見れば痴話喧嘩かもしれないが、私たちのこれはいつもの会話。言うなればただのイチャイチャだ。こういうサンちゃんもホントに可愛い。
「そういえば明日ってツッキー暇?」
「んぇ?暇だけど」
メロンソーダのストローから口を外し、変な声を出しつつ答える。何か突発的に思いついたのかな。
「今日私んちに泊まってかない?」
「あ、泊まりたい」
もちろん二つ返事でOK。断る理由なんてどこにもない。着替え……はサンちゃんの借りるか。
「ツッキーってば警戒心ゼロだね!?」
「女の子同士だし、相手サンちゃんだし、警戒とかいらなくね?」
「私だしって何!?」
「サンちゃんは私の推しだからそういうのもやぶさかでは」
「嘘でもホントでもそーいうのはめっ!」
「はぁい」
もちろんサンちゃんだからOKと答えたわけで、女子でも誰でもいいわけではない。そういうのがやぶさかではないのも完全に嘘というわけではないが、恋愛感情があるかと問われると陰キャにはわからない。経験無いから軽口叩けてるだけなのだ。
「でもどうしてまた急に」
「ツッキー待ってる間に明日の商談が別日になる連絡来たから、どうせなら遊ぼうかなって」
「……そういうのよくわかんないけどポンポン休みになるものなの?」
「そこはまぁ、私の日頃の行いがいいから!」
「さすがサンちゃんだ」
「でっしょー!」
そうこう話している内に、お目当ての品が席に届いた。
「これこれ!めっちゃおいしそう!」
「でかい……2個頼まなくて良かったね」
目の前にドンと置かれたのは例えるなら爆盛りのパフェ。前聞いた話だとカップル用らしいが、最近の若者はこれを2人で食べきるのか……。
「写真撮れた?」
「撮った撮った。さ、食べよ!」
サンちゃんは写真を撮ってもネットには投稿しない。家族に送ったり自分の思い出のために撮っているらしい。その写真の半数が私関連らしく、ご両親にも認知されているようだ。
「「いただきま〜す」」
一口食べる。見た目の豪快さとは裏腹に繊細でしっとりとした、甘さ控えめのホイップが広がり、思わず口から「美味っ……」と零れてしまった。
「ん〜〜!やば〜〜い!」
「サンちゃん、語彙力語彙力」
ちなみにこういう店には何度も連れてこられており、初めこそとても緊張していたが、いまではすっかり慣れている。陽キャになったというより、店の中で浮く陰キャのポジションに慣れたというべきだが。
「いちごもおいしいよ!ほら、あ〜ん!」
「あ〜ん」
ナチュラルに差し出された苺を口にする。フレッシュで甘酸っぱい。味も濃くホイップとの相性も抜群た。どうやら見た目だけでなく味までこだわり抜いた商品らしい。
「そりゃ、この量2人で消えるわけだ……」
パフェが提供されてものの10分も経たずして、器の中身は消え失せましたとさ。




