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ガヤられるサンちゃん(怖い怖い怖い怖い!)

「どうもっ!サンどらですっ!」


 私はいつも通り元気よく挨拶をした。しかし内心穏やかではない。


「えっと今日はそのー、ホラゲーをします!私の友人に『ツキコ』ちゃんって子がいるんですけど、その子に歌ってもらう代わりに私がホラゲーを……ということで……」


 既に手が震えてる。恐怖と初めての試みによる緊張が原因。


「私ホラーは得意じゃないから、ツキコちゃんにガヤ係として来てもらいました!よろしく、ツッキー!」

『どうもーツキコでーす。視聴者層的に私なんかがガヤ係をすること自体烏滸がましいですけど、精一杯煽りまーす』

「ツッキーひどくない!?」


 怪しく笑うツッキーだが、私は知っている。ツッキーはついさっき……配信開始前までとても慌てていた事を。





『さ、さささサンちゃんのチャンネルに私なんかが出たら炎上しするよね?住所特定されるよね!?』

「被害妄想凄いね!?大丈夫だから!視聴者のみんなは優しいし、ツッキーは可愛いし!」

『私が可愛いは無いだろ!』

「可愛いよ!可愛くて大好きだよ!」

『でもどうしよう、強火ファンにお気持ち連投されるぅ……話しかけるだけで叩かれるぅ……』

「そんな視聴者さんはいません!」




 ――というふうに何十分もなだめていた。普段なら好きって言ったらちょっと気持ち悪い……じゃなくて、こ、個性的な笑い方をするツッキーだが、今日に至っては何も反応しなかった。とても重症なのだ。

 しかし現在、ツッキーはそんな気配を微塵も出さず、楽しげに話している。実際に始めて不安が消えたのか、それとも今も無理をしているのか……私も頑張らないとね。


「ツッキーに煽られないように、華麗にクリアするんだから!」

『おっ、言ったな!じゃあ早速始めよう!』

「やっぱりもうちょっと……」

『おらはじめろっ!』

「ひ、ひゃいい……」


 ちょっと涙を流しながらもスタートを押す。


『というかこれ新作だよね?シリーズものだけど大丈夫?』

「あ、うん。これまでの内容はツッキーの配信で見てたから……あ、視聴者のみんなもツッキーの配信見てね!ホラーなのに面白いから!」

『ちょっ……!』


 今回やるゲームはシリーズの待望の新作。シンプルなアクションホラーゲームで、アクション要素により少しはホラーが薄れるだろうというのがツッキーの見解。

 でもツッキーの配信を観ていた私ならわかる。アクション要素はあるけど結構怖いシリーズだよねこれ。


 二人とも無言でムービーを見る。正直これだけで怖い。リアルで来てもらうべきだったかな……ちょっとコワイ……。


「昔の日本……って感じだね」

『そうだね。主人公は高校生……まぁセーラー服着てるしわかるか』


 操作方法の確認をしつつ会話をする。無音が怖いのでどうってこと無いこともつい言っちゃう。


「まだ明るいのに雰囲気あるね……」

『もうすでに怖がってるねぇ!いいねいいね』

「うう……」


 意地悪に笑うツッキーは、私とは裏腹にどんどんテンションが上がっている。


「あ、何か落ちてる……スクラップ記事?」

『この手のゲームあるある、なぜか落ちてる昔の新聞記事』

「たしかに言われてみれば……」


 小言を言いつつ文章を目で追う。新聞には、当然だが昔の出来事が載っていた。


「なんか、関係なさそうな記事だね」

『ホラゲーの記事はだいたい今後関わってくるもんだよ〜。覚えておいて損はないっ』

「そーなんだ、さすがツッキー物知り」

『……テンション低くないっすかサンちゃん』

「ホラー怖いし……」

『新鮮で面白い』

「い、いじわる……」


 まだ日常が映し出されているだけだというのに、コントローラーを握る手は震えていた。気晴らしにコメントを読んでみたが……


『確かに新鮮で可愛い』『可愛い』『めっちゃ可愛い』『ツッキー天才?』『今のいじわるの部分録音した』『やばい可愛すぎない?』『可愛い』『可


 そっと目を逸らした。歌を褒められるのは良いけどこういうのはなんか違う!


「うう……これどこまでやればいいのお……?」

『クリアまで……とは言いたいけど、有名シリーズなだけにそこそこ時間かかるんだよねぇ。取り敢えず3時間くらいやっちゃお!』

「おにぃ……!」


 そのまま私は3時間ほど悲鳴をあげたりコントローラーを投げたり怖すぎて椅子から転げ落ちたりと、痴態を晒し続けたのでした。


『お疲れ、サンちゃん』

「もー、酷いよツッキー!約束守ってよね……」

『もちろんもちろん!ちゃんと歌動画出すから』

「ほんと?」

『ほんと』

「ならよし!」


 こういう真面目な時のツッキーはいわゆる真摯な声で、普段とのギャップがかっこよくて癒される。

 もちろん普段のツッキーもかっこいいし大好きだけど、たまには真面目モードのツッキーの声も聞きたい。


「ねぇツッキー」

『ん?なーに?』

「今日このままお話しして寝てもいい?」

『怖いんだ』

「正直怖いかも」

『しょうがないなぁ。付き合ってあげるよ』

「ありがと……」


 その後私たちは他愛もない話をしながら、ゆっくりとまどろみに沈んでいった。

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