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図書室の紅茶〜あれから〜

作者: 逢哉

肌寒い季節に変わって、受験生は忙しくなってきた。

オレも来年か、と思うと嫌になってくる。

そして残念なのは、図書委員長である彼女との暖かい時間がなくなる事。

ある月曜日の放課後、いつものように図書室で本を読んでいたオレに、柔らかい笑顔で話しかけてきた彼女。

なんやかんやで、今は紅茶を飲みながら世間話や本について語り合っていたり…。それがまた楽しく思えてみたり…。


「大学進学、ですか?」

前々から気になっていたこと。

この時期、受験生は勉強の嵐のはず。しかし彼女は月曜日の放課後必ず現れる。

「そうだよ、文学少年。」


テーブルの周りに積み重なる本の中の一冊を手に取って彼女は付け足した。

「この部屋も、本も、私の三年間が詰まってる。」

少し寂しそうに、でも優しく笑った。


その横顔を見て、少し切なくなってしまった。



彼女は推薦で公立大学の文学部へ進路が決まっていたらしい。

将来、国語の教員になりたいと言っていた。



卒業式の前日に彼女はオレに一冊の文庫本を渡してくれた。

「多分一番のおすすめだよ。心して読みなさい。」

悪戯っぽく笑った彼女に一瞬ときめいた。

「え…と、ありがとうございます。」

中原中也の詩集だった。

彼女がこの手の詩を読むのは意外だった。

やっぱり女の子は彼が好きなのだろうか。


「あと、君を次期図書委員長に推薦したから。」

「はい。…え!?」

「この本たち、宜しくね。」

強引だと思ったが、彼女のあの笑顔に負けたのは言うまでもない。

来年度の委員会が決まってしまった。

「じゃあね、真田亮平君。」

「名前知ってたんですね…さようなら。」


うん、と言って手を振り後ろを向く。


少しの間だったけど、優しくて、ほっとする、陽だまりのような時間。

図書室が少し特別になった理由はきっと貴女がいたからですよ。


でも…

オレは彼女の背中に向かって言った。

「あの!!

オレの名前亮平じゃなくて亮太です…。」


さっきの流れでは言えなかったんです。

本当すいません。でもオレは亮平じゃありません。


「…文学少年、わさどだよ。」

「嘘付かないで下さい。」

どこか抜けてる先輩。

実は貴女の名前、ちゃんと知ってますよ。




「霜雪花音さん?」



…また会いましょう。





『図書室の紅茶〜あれから〜』を読んでいただきありがとうございました。


続編、いかがでしたでしょうか??



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