答え
元聖女は満天の星の下、魔王の首を盃を捧げるように大切に掲げる。
「お慕いしております。ただただ、魔王様の都合で私に最期をください。私を支配してくださるのは、あなただけですから」
魔王の首を捧げ持ち、うっとりとのたまう聖女の笑みは壮絶だった。
見下ろした魔王が思わず目をそらしてしまうくらいの。
「魔王様?」
「なんだ」
「どうして目をそらされました?」
「そらしてないが」
「あらあらまぁまぁ。それなら私と目を合わせられますよねぇ……?」
それまで神秘的だった雰囲気が一切消え、聖女はしっかりと魔王の首を持つと、自分の目線と合わせようとしてくる。
「魔王様〜?」
「聖女! 寝るぞ! 我は眠い!」
「かしこまりました〜」
魔王が力いっぱい主張すれば、聖女も仕方なさそうに寝る姿勢となった。寝袋にくるまり、魔王の首を抱えて、聖女は眠る。
魔王はそんな聖女に抱かれながら、小さく嘆息をついた。
聖女のこれは、支配された魔族たちにも稀に見られる現象だった。支配への感覚が麻薬のようにその者を支配し、陶酔する。まさか転生してもなお、その支配が残るとは魔王も思っていなかったものだから困っている。
「どうしたものか……」
聖女を狂わせたのは間違いなく魔王だ。勇者との対決の日、我が身に降りかかる理不尽な勇者の剣を退けようと盾にした。
魔王にだって生きる理由がある。相容れないからと神に何も抗わないまま淘汰されるのは死んでも御免だった。
眠る聖女の腕の中で魔王は思う。
「このまま我は、聖女の腕の中でしか存在し得ないのだろうか」
盲目的な聖女と首だけの自分のため、魔王はある決断を下した。




