額縁
博物館、というものに立ち寄ってみた。
買い出しにと街に寄ったところ、福引の景品とやらで博物館の入館チケットを貰った。大きな街なので、そこそこ良いものが揃っているのだとか。そのまま誰かに譲っても良かったけれど、目玉は勇者一行魔王討伐の絵だと聞いて、首だけになった魔王が興味を示した。
「勇者が描かせたものですよ。面白くもなんともないですって」
「見てみるのも一興よ。人間が我のことをどう思っているのかがよく知れるだろうしな」
魔王にせっつかれて、聖女は博物館に行くことにした。
それなりに広そうな博物館は、全庭もあり穏やかな場所だった。建物に入ればがらりと雰囲気は変わり、静謐な場所になる。魔王討伐に特化した博物館のようで、勇者の装備やパーティメンバーの装備などの復元も置いてあった。
「懐かしいですね。これが私と魔王様のウェディングドレス」
「違う」
真っ白だった元聖女の装備を見てつぶやいた聖女に、魔王は即レスした。どこをどう見たらウェディングになるのか、たまに聖女の頭のネジが外れてしまうのをどうにかしてほしい。
装備とパーティメンバーとの彫像エリアを過ぎると、絵画の回廊になる。冒険に出てから魔王を倒すまでを切り取ったように絵画にしてあるようだけど。
「……勇者の姿が主張し過ぎではないか?」
「目立ちたがり屋なんです」
他のパーティメンバーがすみっこにちょろっとみたいな絵画が多く、さらに勇者がドアップの絵画が多い。全体的に勇者の主張が激しい。
「まぁ……生存して帰路につけたのは勇者だけのようですし……あのナルシストがやることも想像はできましたよね」
ほほほ、と笑う聖女は旅をしたからこそ知っている勇者の本性に遠い目になった。今追いかけてきている勇者が奴の転生だったら素で嫌だと思うくらいには嫌だったりする。
そして歩き続けた先に、最終決戦と題された絵画を見つけた。
「おいまて! 我はこんな姿していないぞ!?」
「勇者フィルターですね。嫌いなものにフィルターがかかっているのです」
魔王の姿は子どもの落書きのようだった。魔王は首も胴も手足も人間のように生えているし、人間の美丈夫に分類されるようなたぐいだ。それが、真っ黒に塗りつぶされた山のような何かで表現されている。
「この姿で魔王様が周知されているのであれば、隠れる必要はないのでは……?」
「だからといって、生首の我をここで出そうとするなよ」
ハッとした聖女に、魔王が釘を刺す。生首を持っているのはそれだけで事件だ。それなのに生首がしゃべればさらに事件だ。
聖女は残念そうにしたけれど、ある意味封印を解いても誰も魔王が復活したなんて案外気づかないのでは? という気づきが得られたのは良かったかもしれない。




