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 首だけの魔王と元聖女の旅は、基本的には野宿だ。街だと色々とリスクが高いので、買い出しに寄っても宿泊は避けるようにしていた。

 とはいえ、買い出しの最中に町中で雨に振られてしまった。聖女が何度かくしゃみを繰り返したので、魔王が珍しく宿をとるように勧めた。


「安宿でも湯が出るところにしておけ」

「あらあらまぁまぁ! 心配してくださるのですか?」

「……そなたが動けなくなると困るからな」


 ぶっきらぼうに言う魔王に感謝感激の言葉を述べようとして、聖女はまたひとつくしゃみをした。そそくさと宿を探して、部屋を取る。湯を借りて、身体を温めた。

 聖女は宿主から温かい飲み物をもらい、部屋に戻る。その頃にはすっかり雨もやんでいて、わずかな月明かりが窓から差し込んでいた。

 聖女は窓から遠いところのテーブルに置いてある魔王の首を持って、ふかふかのベッドにダイブした。


「うわっ!? 手荒なことはするな! 優しく扱え!」

「ふふっ、久しぶりのベッドですよ魔王様! うちの藁ベッドよりふかふかです。前世の神殿のものよりは劣りますけれども!」


 珍しくはしゃぐ様子の聖女に、魔王は怒る気力が削がれてしまった。自分のために野宿をし続けていた聖女。頬が上気しているのは湯上がりだから、だろうか。


「そなた、しっかり温まったか」

「はい。良いお湯でしたよ」

「ならば良いが。今日はゆっくり休め」

「そうですね……せっかくのお布団ですし」


 マグカップに注がれたホットミルクをぐいっと飲み干した聖女は、魔王の首を抱くと再度ベッドに転がる。今度はシーツもかけて。


「おい、我がつぶれる」

「つぶれませんよ〜」

「まったく……」


 すやぁ……と気持ちよさげに寝ついてしまった聖女に、魔王は呆れる。とはいえ、この寝つきの良さはこれまでの疲労の蓄積の証だと思うと少し申し訳なくも思った。

 優しい寝息を立てる聖女のぬくもりが、魔王をつつみこむ。魔王もやがて微睡んだ。

 まどろみの淵で聖女は囁く。


 ――私を置いて行かないで、と。

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