第37話 砂漠の月を求めて
「大変申し訳ございません。お探しの本は現在店舗在庫がないようでして……」
学校から一番近い大型書店。
店員さんから告げられた言葉に、奏太は肩を落とす。
「そうですか……わかりました」
「一応、取り寄せは出来るのですが、いかがいたしましょうか?」
「いえ、大丈夫です! ありがとうございました」
取り置きをした場合、入手までに一、二週間かかってしまう。
そんな時間は待てなかった。書店を出た後、スマホを取り出す奏太。
もしかして電子で読めるのではという望みをかけてAmazonをはじめとしたオンラインショップで検索をかける。しかしそれも徒労に終わった。
出版自体かなり昔なためか電子書籍化されておらず、中古本しか取り揃えがなかった。
その中古本もプレミアがついていて高校生が手を出せる値段じゃない上に、発送までに時間がかかるとの記載。
「くそっ……」
諦めて、奏太は書店を巡る事にした。
Googleマップを駆使して、市内の書店と図書館を回る。
しかし巡れど巡れど、お目当ての本は見つけられなかった。
文月曰く『砂漠の月』はヒットどころか重版もしていない、ひっそりと棚に並んですぐに消えていった入手困難な一冊だ。
時間だけが無情に過ぎていき、やがて市内で訪れていない書店が文月のバイト先だけになってしまう。
そこで出くわしてしまったら本末転倒なので、その書店の入店は諦めた。
「何がなんでも、見つけてみせる……」
拳を固く握り、財布の中にまだ余裕がある事を確認した後、奏太は駅へと足を向けた。




