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ボクと看護  作者: 窪田 雪花
3/8

scene2−1ボクと環境整備

今日はボクと後輩で環境整備について考える

 今日の相方は2年目の後輩男子だ。相方というのはPNSペアナーシングシステムといって看護師同士がペアとなって、患者さんの対応をするというシステムの相方だ。


 彼は何事においても強気で、色々考えてしまう僕とは違い勢いもあるし、患者さんの状態が良くなるために何ができるかを考えているように日々感じる。またノリも良く、ある意味お調子者だ。最近3年ぶりに彼女ができたらしい。さらには筋トレが好きで、やたら脂質やら糖質やらを語り、変な色のドリンクを飲んでいる。まぁ、今が一番楽しい時期か。若者うらやましい。


 僕はもう8年目で今年30になるから、もうお兄さんよりおっさんに片足突っ込んでいる。30かぁ・・・30という響きに昔思い描いていたものは、もっとダンディーというか、紳士というか、大人の男って感じになりたかったし、なっていると思っていたが、全然変わらないことを実感する。


 というか、確かクニさんは30歳で認定看護師の勉強をしたって言っていたなぁ。今、同じ30の僕には無理だ。そういう色々な資格に興味はあるけれど、一歩踏み出す勇気や、自分が最終的に何をやりたいのかが不明瞭だ。


 そんなことを夕方の休憩から上がってきた僕が、ぼーっと考えていると、後輩は患者さんに点滴を投与するための血管を探している。良い血管を見つけたようで、針を入れ無事一発で血管確保をしていた。すばらしい。これで看護師2年目なのだ。


 というのも、看護学校という場所は、もちろん看護を学ぶための学校ではあるものの、結局本当にたくさんの学びを得るのは看護師として働き始めてからだ。看護師として1年目は特にたくさんの新たな学びがある。1年前は全てのことが初めてだったにも関わらず、2年目になれば出来ることは何十倍・何百倍にもなっている。


「とれましたー。これでOKでーす!もうやること終わりましたー」


 後輩はにこにこしながら近寄ってきた。今はもう日勤帯終了間近の夕方だ。今日は驚くほど落ち着き、緊急入院や搬送もなければ病院内の急変もなく穏やかに過ぎた。


 しかし、【落ち着いている】なんて気を抜いて口に出してはいけない。


 なぜなら理由は分からないが、『落ち着いている』と言った瞬間から、なぜか急激に慌ただしく、むしろスタッフが足りないくらいの激務に変貌するのだ。さっきまで暇だったのに!午前中まで落ち着いていたのに!などなど後悔をすることは必須だ。


 「あと何かやることありますかねー?藤原さんが休憩中にPT(理学療法士)の田山さんが来たのでリハビリも一緒にやりました。で、今点滴もとったし。明日の準備もやったし。もうやること終わりですかね?」


 後輩は日勤で、僕は遅日勤と呼ばれる夜までの勤務帯だ。遅日勤は夜9時の消灯までなので、日勤者が帰る前の夕方に多少だが休憩時間が設けられている。


 噂の付き合い始めの彼女との予定でもあるのだろうか、残業はしたくないという気持ちがひしひしと伝わってくる。もちろん僕だって残業はしたくない。


 医療業界はただでさえ残業が多いにも関わらず、なぜか昔から【自己研鑽】という名で残業に言い訳をつける風習が根付いている。まさに医療業界の闇だと感じる。


まぁ、この話題は考え出したらきりがないから置いておこう。さて、そんな帰りたいオーラの出ている彼の後ろには患者さんがいる。


この患者さんは2週間前に脳出血となった方だ。

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