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世界のどこでも君の隣  作者: 逢坂 桜夢
9/10

ロリポップキャンディー

文系クラス。4時間目。地理。

退屈だし入試科目じゃないから聞いてもムダかなって、ノートに落書き。マフィン、クッキー、タルト、もちろんロリポップキャンディー。僕がいつも使ってるピンクのロリポップはいつだったか、こはくがくれた。ぐるぐるの大きいキャンディー部分が可愛いんだけど、重くてペンとしては劣等生。でも可愛いし、好きだから。


小学生になって皆が自分の意志をちゃんと表現し始めた頃、一緒に遊ぼうとしても男の子達は僕を「女だ。女はあっちにいろよ。」と仲間外れにした。女子と間違えられるくらいの童顔と体型。オーバーサイズのパステルカラーのパーカー。皆みたいな黒じゃない、キャメル色のランドセルに着けたふわふわのくまさん。


好きなものを好きでいると、皆は僕を嫌いになるんだ…


だから、よく知りもしないプロサッカーチームのユニフォームを着て、ランドセルからくまさんを外した。1ヶ月に1回の得意な調理実習もできない振りをして周りの男の子達みたいに「だりぃ」と言ってみた。頭の中がぐるぐるして心がもやもやして僕は僕がなんなのかよく分からなくなった。

こはくとやまとが家庭科室の前で僕の作ったお菓子を待っていたけど、そんなもの作っていなかった。いつも2人が美味しいって笑ってくれるのを思い出して胸が苦しくなった。

「ごめんね」って顔を見れないまま俯いたら、こはくの体温に包まれた。

「俺も大和っちもるいるいの作るお菓子大好きだけどるいるいは違うの?」

今まで溜め込んでいたものが溢れ出すように涙が止まらなかった。


次の日の朝、ネコミミのパーカーを着てランドセルにくまさんを着けた僕を見てやまとが、笑って頭をわしゃわしゃしてくれた。

教室に入るのは緊張したし、男の子達から「また女になったー」とからかわれた。だけど、休み時間に隣のクラスのこはくが「るいるいかわいー!大好きー!」と突進してきてくれたから、もう誰からも僕をからかわれなくなった。人気者のこはくの好きな物を嫌いだなんて言ったら女の子達に嫌われるだけだもんね。でもちょっとフクザツ。

そんな事考えててら「はい、これ。」と大きいピンクのロリポップキャンディーをくれた。「食べちゃダメだよ!」と自分のクラスに戻っていくこはくはヒーローみたいだった。


頭の上が重い…。見上げると、やまとが僕の頭の上に手を置いて見下ろしていた。うわぁ、背高っ。その隣には1人でペラペラと喋っているこはく。ピンクのロリポップをギュッと握りしめて、2人に抱きついた。

恥ずかしくて言えないけど

「こんな僕を好きでいてくれてありがとう。大好きだよ!」

僕を僕らしくさせてくれた2人はいつだって優しくて楽しくて暖かい僕のヒーローだ。


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