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みんなで自己紹介!

一方その頃、教室内は全員で蒼介の話を聞く事になっていた。スマートフォン等の電子機器を持ち込めないこの学校で唯一の連絡手段である内線電話を使ったが、教師達には繋がらない。それもそのはず彼らは出張中なのだ。教室の前にある職員室も完全に灯りが消えている。


「変な生物ってどんな奴なん?」

「僕が見たのは影だと思うんだけど…」


二つある戸を閉めて志羅と透が見張りをしている状態の為か、少し落ち着きを取り戻した蒼介は鮮明に記憶を言葉にする。彼の話によるとその影は半液体状であり俊敏な動きをしていたと言うのだ。たまたまグラウンド見学に行こうとした矢先に遭遇したらしい。最初は追われたが振り切れたという。


「追いつかれてたらって思うと怖いっすね」

「そうなんだよ…。入学早々こんな目に遭うとはね。陸上やっててよかった」


この時苦い顔をしていたのは恐らく運動とは無縁な奴らだろう。沈黙が続く中、何かに気付いた志羅が声を上げる。


「みんな!偵察班帰ってきたよ!」


見張りをしていた彼女は階段を上ってくる三人をいち早く見つけた様だ。勝手に偵察班と呼ばれているのは様子を見に行った玲、風香、舞の三人組。戸が開かれ彼らは室内に姿を現す。


「玄関見てきたけど何もねぇぜ?」

「いつもと変わらなかったよ…」

「丘田、あんたの見間違えじゃない?」


実際に現場を見てきた二人からそう言われると流石の彼も自分の目を疑い始めた。もしかしたら新聞紙や何かが風で飛んでいただけかもしれないと思うと僅かに心が軽くなる。


「見間違い…なのかな。なんかごめんな皆。思いっきり巻き込んだ」

「ええってええって!ほんまに得体の知れない物やったらやばかったんやし」

「そうそう、気にしない気にしない!」


勘違いと言われれば勘違いなのかもしれないと思ってしまう現象が蒼介の中で起きたのだろう。申し訳なさそうな顔をする彼を励ますのは弘也と志羅の二人である。


「なんかお腹空いちゃったね~」

「だな。このままみんなで食堂行こうか」


人は安心すると途端に自分に欠けている物を思い出す生き物だ。彼らもまた安堵と同時に空腹を思い出した様で、謎の生物騒ぎが収まった頃には気付けば12時を過ぎていた。透の提案に賛同し皆が食堂に向かって足を進める。あまり玄関には近寄りたくなかった為、食堂の前に降りれる青階段をおりていく


彼らが食堂に着くと13人分の昼用と夜用の弁当が用意されていた。入学祝いと書かれているそれは普段の物より少し豪華だ。この学校では平日と土曜日は教師達によって弁当の給付がある。日曜だけは調理実習を兼ねて自炊をするのだが。


「今回はクラスと同じ席順で座ってな!さっき出来ひんかったから自己紹介もしようや」


ムードメーカーと言うよりは進行役になりつつある弘也は全員に指示を出す。クラス全体はようやく最初の方の和やかな雰囲気に戻ってきた。


「じゃあ名前順で。逢崎からよろしく」

「えぇ俺から!?まだ女の子達にキャーキャー言われる自己紹介思いついてないのに…」

「絶対言われないから安心して早く済ませなさいよ」


絶対学年に一人は居るであろう女好きこそが彼である。名は逢崎 俊。見た目は丸坊主で赤いツナギ姿という作業員の様な格好だ。


「俺は逢崎俊。まぁ気軽に俊って呼んでくれたら嬉しいわ、特に女子達には名前呼びして欲しいなぁなんてな。よろしく!」


女好きのステータスを崩す気はなく全面に出していく方針の彼は男子からのウケはいい様だ。拍手と共に後ろの丘田へと注目が集まる。


「えーっと…僕は丘田蒼介って言います。趣味は運動とアニメ鑑賞。よろしくね、皆」


顔の整い具合は透といい勝負なのに加え、高身長の彼は早くも女子の心を掴んでいた。右耳に光る二つのピアスは大のお気に入りだ。某有名靴メーカーのジャージ上下を身に纏っている。


「イケメンの後って辛い…。えっとぉ…狩ノ瀬 琉々です。男子も女子も仲良くしてくれたら嬉しいな」


男子の中で一番低身長な琉々は確実にかっこいいポジションには立てないだろう。現に女子からは既に可愛いと言われる始末だ。軽く会釈をして自己紹介を済ませる。


「よぉ、俺は黒野玲。おもしれぇ事あったら何でも誘ってくんね?いくらでも付き合うから」


玲はと言えば早速退屈しない為の予約している。このくらいの方が同級生としては関わりやすいのだろうか。心做しか他より拍手の音が大きい。


「俺は弘也!鳥尼弘也やで。ってもう知っとるやろ?がっつり盛り上げてくからよろしく頼むわ」


ずっとパーカーのポケットに入れていた両手を出してダブルピースを決めたのは進行役の彼である。しかしその後、女子達の間でどよめきが起こった。それもそのはず次に自己紹介する青年は弘也と顔が瓜二つなのだ。


「鳥尼夢太。大体にはビビられるから先に言うとくけど、パーカーの白が俺で黒が兄さんやで」

「え、双子!?」

「せや!夢太は俺の弟なんよ」


白いプルオーバーパーカー姿の彼と弘也が並ぶとまるで分身のようだった。ルームメイトで見慣れている逢崎と丘田以外は全員が目を丸くして二人を見る。場を乱す行為に厳しい風香が話に割り込む程だ。

五日前から全員寮に住んでいるが問題事を避けるべく行動時間は部屋別で完全に分かれていた。故に二人一緒に居る姿を見るのはほぼ初めてなのである。


「みんなキャラ濃いな…多分男子の中では一番何も無いのが俺だと思うけど、よろしくね。吹屋 透だよ」


続いて言葉を発したのは透だ。鈍感な彼は気付いて居ないが丘田同様に女子の心を掴んでいる。クラス内のイケメンランキングなら余裕で上位だろう。


「僕は山内真斗。真斗でいいっすよ。よろしく」


誰よりも短い自己紹介をするのは勿論彼である。面倒事を嫌いサボり癖も板についている真斗は静かな問題児の代表だ。一通り男子が自己紹介を終えると、女子の先頭である風香が口を開いた。


「次は私ね、門麻風香よ。クラスは基本私が引っ張っていくからよろしく」


強気な女子といえば彼女に右出る者は居ないだろう。肝が座っていて物怖じしない風香の性格には男子も憧れる程だ。


「えと…獅子戸舞です…。あまり話すの得意じゃないけど…声掛けて欲しいな…。よ。よろしくお願いします…」


舞は小さめの声でボソボソと話すと恥ずかしそうに俯いてしまう。彼女は典型的な人見知りであり引っ込み思案。その為あまり人前に出るのが得意ではない。続いて立ち上がった美人な女子に男子サイドから歓声が上がる。


「男子の方々とは初めましてですね。私は名無幸と申します。皆さんよろしく」


ふわりとした笑み浮かべるのは絵に描いたような美少女だ。彼女の名は名無 幸。白と紺の長袖ワンピースという身なりと、その上品な言葉使いからマドンナとして確定するのは間違えないだろう。


「次あたしね!あたしは柊志羅。こっちは同じ部屋の藪坂青奈だよ!」

「藪坂です~。よろしくね~皆~」


唐突な同時紹介をして注目を集めたのは二人部屋の仲良し組である。各々が自己紹介を終えた食堂は更に盛り上がりを見せた。こうして過酷な学校生活を送る事になる生徒達の顔合わせは大成功に終わったのだった。

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