第2章.葉桜が芽吹く間―prologue
騒がしいのは嫌い。うるさいのは嫌い。喧騒が嫌い。
そう、とある魔女は、呟いた。
今は、昔よりか騒がしくはないけれど、それでも、まだ、世の中の人の声、物の音が苦手であった。音に敏感であるかといえばそうではない。中には、そういう病気もあるらしいのだが、彼女はそうではない。ただ単に、そういう喧騒が嫌いなだけ。
心地の良い、静かな音色、美しい音色、例えば、ピアノの音、オルゴールの音は彼女は好きだった。
皆、お人形さんになればいいのに。ぬいぐるみさんになればいいのに。せめてマネキンさんでもいいのに。
そう、彼女は物思いに耽った。
昔から、どこか出かける際はお気に入りのぬいぐるみを一つ連れていく。まるで、寂しさを紛らわせるかのようだ。お友達は、この小さなクマのぬいぐるみ。ほかにも、家には多くおり、日替わりで違うお友達を連れていく。
彼女の気は細く長く、どこまでもどこまでも続いていく。もしかしたら、地球の裏側に届くかもしれない。それは地球一周できるかもしれない。誇張かもしれないけれど、そのぐらいはできる自負はあった。昔は、細く長い『コレ』に使い道はなかった。というよりも、そもそもどういうものかわからなかった。だが、後に知ることとなった。これが、後の彼女の女子力の一部であるということを。
彼女は、手元にある本を開く。そこは、夢の世界。唯一心安らげる物。逃避するための場所であり、また、いろいろな旅をさせてくれる場所でもあった。お気に入りの国、人、物、時代、空気。その文章から踊りだすこの『世界』が好きだった。いつまでも、世の中を忘れさせてくれる。世の中がこんな世界に変わればいいのにとも思った。『静かな』世界がくればいいのにと。
途端、ぱたんと本を閉じる。
ようやく、そこで、彼女は、気づく。
すでに、は、自身の能力の効果、使い道、発動条件を知っている。それに中学時代に実証済だ。あと、実行に移すのみ。時間はかかるだろうけれど、手間と、数さえそろえれば簡単だ。一度、うまくいくかどうか検証してみる必要があるが。
後に、この検証は成功することとなる。
能力の発動はしないまでも、その前段階の試みは自分の周りだけなら、全てにいきわたらせることはできた。これを応用すれば、自分の望んでいた『世界』に変えることができると思った。願うことだけなら、だれでもできるということ。人に望んでいるだけでは、いつまでたっても変わらない。だったら、自分が行動するだけでいい。それが可能ならば、自分がむりやり周りの『世界』を変えさせればいいのだ。これだけで手に入るならば、こんなに簡単なことはない。
――――魔女は神になったつもりでいた。




