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(19)不謹慎(ふきんしん)

 世間の常識に合っていないと、『あの人は不謹慎ふきんしんだっ!』と思われたり言われたりする。これといって間違っている行動でもないのに、そう言われたり思われるのは楽しい気分が損なわれ、誰でも面白くないだろう。この不謹慎・・という目に見えない社会的な規範めいたものは、いったいどうして生まれるんだろう? などと考えてみよう。そんなことを考えるひまがあったら、掃除の一つでもしろっ! と言われれば返す言葉はないが、まあ、この場合は美味びみなコーヒーなどをすすっていただき、笑い飛ばしていただきたい。お菓子も付けますっ!^^

 とある映画館の中である。多くの観客がスクリーンの映像に目を奪われる中、一人の観客が、ムシャムシャ! と人の目を気にすることなくコンビニ弁当を食べている。別に映画館の中で食べてはいけない・・という決まりがある訳でなく、大声を張り上げてもいないから、周囲の観客が、とやかく言う筋合いではないのだが、映画館の中には目に見えない規範めいた雰囲気が漂っていて、この観客は不謹慎に映るのである。

「オホンッ!」

 隣の観客が、『集中できんじゃないかっ!!』という迷惑そうな目つきで弁当を食べる観客を一瞥いちべつし、咳払せきばらいをした。だが、食べ続ける観客はまったく意に介せず、楽しい気分で食べ続ける。そして、グビッ! とペットボトルのお茶をあいに飲む。それが余計に腹立たしいのか、隣の観客は、また咳払いを一つ、強めに『オホンッ!!』とやった。ところがその声を迷惑に思った隣の隣の観客やその後ろの観客が、『集中できんじゃないかっ!!』という迷惑そうな目つきで隣の隣の観客を一瞥し、咳払いをした。ところが、その隣の隣の観客や後ろの観客の咳払いが、『集中できんじゃないかっ!!』という迷惑そうな目つきで隣の隣の隣の観客や後ろの後ろの観客が隣の隣の観客や後ろの観客を一瞥し、咳払いをした。こうして咳払いは波状的に館内全体に広がり、とても映画に集中できるような状態ではなくなった。

 これが、不謹慎が生まれる過程と、楽しい気分が損なわれる結果である。^^ 


                  完

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