勇者会議
王族からの呼び出しは断ってはいけないらしいので、仕方なく応じる事にする。
ループスと王宮に向かい、来客用出入口で名前を名乗るとすんなり通してくれた。門番がループスを見て腰を抜かしかけていたがなにも問題ないだろう。
騎士に部屋まで案内されて中に入ると、勇者パーティー全員が待っていた。
「遅刻よ。」
「これでも早い方だぞ。あの船に乗せてくれればよかったんだ。」
「護衛の仕事がある人を乗せれるわけないじゃない。」
「ですよねー」
ごもっともな意見である。
「まぁまぁ~みんな揃ったし、そろそろ始めようよ~」
「そうだね。」
どうやら、集まって何か始めるようである。
俺の審問会とかじゃないだろうな。もしそうだった場合、速攻で逃げよう。窓から飛び出して飛んで逃げれば光輝でも追って来れないだろう。
「では、勇者会議を始めましょうか。」
「何だ、その安直な名前。」
予想は外れて、普通の会議っぽい。名前はダサいけど。
「えぇ~、解りやすくていいのに~」
結衣が率先して反論してくる。名前を付けた人がわかったな。
「で、勇者会議は何を話し合うんだ?」
「まずはアンタの処遇からよ。後、どうやったら働いてくれるかをね。」
「なんでだよ。俺は今回、かなり働いたよな。」
確かに光輝に色々譲ったりしたけど、変な魔石見つけてきたリ、アンデッドロードを1人で足止めしたり、結構な活躍をしたと自負してるんだが。
「あら、ほとんどの功績は光輝の物で冒険者達が補助をしたって聞いたけど?」
「世間一般にはな。当事者なら解れよ。」
「冗談はこれくらいにして、アンタは報連相の徹底ね。定期的な連絡、特に長期間空ける時は連絡しなさい。具体的には、週一で登城して報告ってところかしら。」
「・・・わかった。」
背に腹はかえられない。このゆるめの条件を飲んでおかなければ、もっときつい条件を押し付けられるだろう。
そうなると俺の自由時間が無くなってしまうし、変な貴族たちのパーティーに参加させられるかもしれない。実に面倒臭い状況になってしまう。
「お待ちください。も、もっと短い方が良いですわ。ほ、ほら、1人で何されるか解りませんし、毎日とかの方が良いですわ。」
・・・なん・・・だと。
杏華の恨みの根は想像以上に深かったという事か。
「それは、面倒じゃないかしら?」
「そうですね・・・では、隼人さんも王宮住まいですわね。そもそも、一人だけ外に居るのがおかしいのですわ。」
「・・・確かにそうね。」
「そ~だよ~」
「おかしくない判断だね。」
「その方が行動を管理できそうですね。」
勝手に話がおかしな方向に進んでいく。王宮に監禁されるのは考えられる中で最悪のバッドエンドだ。どうにかして回避、最悪時間だけでも稼がないと。
「勝手に話進めてるけど、まだやること結構あるから外にいるぞ。」
「えぇ~」
「帰ってきたばっかなんだ。色々なところに報告しないと。」
「・・・王宮に報告しないで、他所には報告するとか舐めてるのかしら?」
「・・・すいません。連絡しようとは思ってたんです。」
焦って喋ればどんどん墓穴を掘っていく。何とかしなければ。
「まぁいいわ。それが終わったら戻ってきなさい。」
「・・・仕方ないか。」
ラッキーで時間を稼げただけでも良しとしよう。
「本当にあるのよね?」
「・・・そこから疑う?」
教会しかねーよ。ばれたら殺されるかもしれないから、教会には少し根回しして時間がかかった事にしておこう。
「一つ目は終わりね。次は隼人の魔術についてよ。」
「・・・また俺かよ。俺も魔術でなにかおかしな事でもあったか?」
「別におかしくないわ。アンタの魔術が変わってるから教えて欲しいのよ。」
「面倒くさい。」
変わって魔術を使ってるのか?魔術の神様から直接教えてもらったモノだから、おかしい事はないだろう。
変わってるの意味が解らないが、時代が進んでフィーレの教えてくれた魔術と今の魔術に違いがあるのだろうか?
「だったら師匠を教えて。その人に直接教えて貰うわ。」
「それはもっと無理だ。」
「どうして?」
雫は普通の魔術に精通した人物に会う気でいるから気軽に言っているが、フィーレに会うとか一般人には不可能だろう。
俺もディアの紹介が無ければ会えなかった。俺が紹介しようとしたところで会ってくれるかは不明だ。
「人前に出て来る人じゃないからな。俺は運が良かっただけで、まず会えない。」
「そこまで言われると逆に気になるわね。じゃあ、隼人が教えてね。散々迷惑かけてるんだから、嫌とは言わないわよね。」
「・・・面倒だが、俺が教えるしかないか。」
「決定ね。どうせやるなら、今日このまま講義を開きなさいよ。」
「まぁ、いいか。」
その後もちょこちょこと議題が出て話し合い。重要な今後の予定が決まり、雑談多めの会議へと変わっていく。
ひとまず、アンデッドロードとの戦いの傷を癒すため、アルカディア王国で休養を取ったのち、向かう先は水の都アトランティス王国か、木の国ユグドフレア王国のどちらかにしようと決まった。
どちらもゆっくりできそうな国で、海か森かといった状況である。
武闘大会と魔王戦があったので、どちらで一休みしようかといった選択をさせようとしてくれたのだろう。
結局、選ぶことも休む事も出来なくなるとは、この時はまだ誰も知るよしもなかったので、のほほんとどっちがいいかと雑談に沸いていた。




