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裏方の勇者  作者: ゆき
武闘大会編
91/186

よい

目が覚める。自然に覚めたというよりは、強制的に電源を入れられたような感覚で目が開いた。


「天井が無い・・・」


そもそも天井どころかベッドも掛け布団も無かったのだが。

辺りを見回すと、そこは真っ白な空間。

その中にポツンとバーカウンターがある。そのイスに座って飲み物を飲むディアの姿。

カクテルグラスに添えられたサクランボのような果実をもてあそびながら煽っていた。


「あらぁ?ハヤト様じゃないですかぁ。こっちですよぉ。」


俺に気付いたディアが自分の隣のイスをベシベシと叩いて着席をうながしてくる。

語尾の伸びた口調と、いつも見せる優雅さを感じさせないフワフワとした雑な動きから、相当酔っていると確信する。

ディアの居るバーカウンターから少し離れたところにソファーがあり、フィーレが仰向けに倒れていた。

いつも通りの無表情だが、こちらも酔っているのか頬は赤く、服は着崩れている。胸元はゆるめられて、スカートは捲れ上がって太もも辺りまで見えている。非常に無防備な寝姿に慌てて目を背ける。

この状況は、人類が見て良い姿ではないだろう。

フィーレに向かおうとする視線を、理性でなんとか押さえつけてディアの隣に腰かける。


「何でハヤト様がここに居るんですかぁ?」


・・・はぁ?


「ディアが呼んだんじゃないのか?」

「呼んでないですよぉ。せっかくだから、飲みましょーよぉ。」


ディアが言い終わるや否や、俺の前にディアが飲んでいるカクテルと同じものが現れる。

酔っぱらいの相手は面倒だが、自力で帰る事が出来ないので、仕方なく付き合うことにする。

ディアが若干、ポンコツもといアホの子になっているので、新鮮である。


「このカクテルがディアのおすすめなのか?」

「そうですよぉ。アルコール度数も高くなくて、飲みやすいですよぉ。」


ディアのおすすめということで、美しく輝くカクテルを口に含む。


「ブフッーーー」


カクテルが舌に触れた瞬間、強烈な刺激にカクテルを噴き出す。

強過ぎるだろ!


「ハヤト様、汚いのですよぉ」


ディアは笑いながら、どこからか出したお手拭きで口もとを拭いてくれる。


「ありがとう、ディア。」

「どういたしましてですよぉ。」


かなりの力でグリグリされて痛かったんだけどなにも言わないでおこう。


「ところで、このカクテルめちゃくちゃアルコール度数高くない?」

「200ですよぉ。それくらいはないと、神様は酔わないのですよぉ。」


200度!?パーセンテージが100を越えたらダメだろ。

それはもう、アルコールではない別の物質Xだ。


「とりあえず人類の飲み物ではない事だけは解った。」


隼人はそう言いつつも、チビチビと飲み進めていく辺り真面目である。理由の9割方は、飲まなくてディアが不機嫌になると困るから、ではあるのだが。

アルコール度数がおかしく、飲みやすさの欠片もないが、おすすめされるだけあって味は美味しい。カクテルグラスなのに、全くなくなる気配がしないのが難点だが。


「ハヤト様ぁ、話は変わりますけど、魔王との戦いはお見事でしたよぉ。」

「・・・ありがとう。」

「今日は、定例会だったんだすけどぉ、ハヤト様も話題になってましたよぉ。私も鼻が高いですよぉ。」

「それは良かった。」

「それが、そうとも言い切れないのですよぉ。アテネが加護をあげたいと言ってましたし。」

「・・・ダメなのか?」

「ダメですよ!確かにハヤト様にはアテネの加護の方が良いかもしれませんが、浮気は良くないのですよ。」


ディアは若干早口になり、わりとマジな目付で、俺の肩をガシッと掴んで前後に揺さぶる。

頭がぐわんぐわんと揺れて酔いがまわる。気持ち悪い。


「だ、大丈夫。ディアが一番だ。だからやめてくれ、吐きそう。」

「本当ですか?嘘はいけませんよ。」

「あぁ。」


ディアが落ち着きを取り戻そうとしたその時、さらなる試練が訪れる。


「・・・・・・私は?」


ディアに気をとられて全く気がつかなかった。

いつの間にか起きたフィーレが、後ろから抱きついてきた。

手を回されて、背中に密着される、フワッとした2つの果実の感触が伝わってくる。

相変わらず無防備なフィーレの行動にドギマギしつつ、現在おかれている自分の状況に冷や汗がふき出す。


「えっと、フィーレは・・・」

「・・・・・・むぅ」


なんだよこの唐突な修羅場は。俺には無縁の状況のはずだろ。光輝、マジで助けてくれ。


「同率一位かな?2人ともスゴく尊敬できるし、甲乙つけがたいかな?」


ディアとフィーレの顔色をうかがいつつ、言葉を絞り出す。

間違えてたら死ぬのだろうか?


「フィーレなら許してあげるのですよ。ただし、一番の一番は私ですよ。」

「・・・・・・一番の二番」


どうやら切り抜けれたっぽい。酔ってポンコツ化してて助かった。


「それはそうと、フィーレはくっつきすぎなのですよ。」

「・・・・・・前」

「良い提案なのですよ。」


言うやいなや、ディアも俺に抱きついてくる。

ディアの2つの柔らかな丘が目の前で形を変え、密着度がスゴいことになる。

どうしても目がそちらに行ってしまうので、固く目を閉じて、見ないようにする。


「ちょっと、2人とも色々と不味いから離れてくれるか?」

「今、信者獲得に忙しいのでダメなのですよ。」


「・・・・・・ん」


ダメだ、話が通じない。


「改宗とかしないから大丈夫だ。マジで理性とかその他もろもろがヤバイんだけど。」


仕方ないから暴露して離れてもらおう。この天然?色仕掛けは不味い。

少しくらいいじられるネタを残しても、ここで俺の中の男が暴走するよりは良いだろう。

出来れば今日の記憶は綺麗さっぱり消えてくれてほしいものである。

2人の反応が無くなったので、閉じていた目を恐る恐る開けてみる。


「「・・・zzz。」」


寝てる!?一通り言いたいこと言って疲れたら寝るタイプの人たちなのか?


「むにゃむにゃ。ハヤト様、浮気はダメなのですよ。」

「・・・・・・ん」


寝言でもいってるし・・・。

この空間の主が寝てるんだけど、どうやって帰るの?

そもそも動けないんだけど、どうすれば良いんだ?

どうしようもないので、自分の頭に物凄く弱い鎧通しを打って、意図的に脳震盪で意識を手放した。

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