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裏方の勇者  作者: ゆき
武闘大会編
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加護

波乱の婚約者騒動が終わり、教会に移動することになった。

なぜ移動させられるのか解らないが、連れられるままに馬車に乗り込む。

国王陛下も別の馬車に乗り込む。

国王が移動するということは、教会でしか出来ないことなのだろうか?

数分馬車に揺られて教会に到着し、ぞろぞろと中に入っていく。

途中で、こわばった表情のアデルとすれ違う。何かあったのだろうか?

少し待たされて、厳重な警備をされた一番奥の部屋に案内される。

中に入ってすぐ、部屋の空気感に全員が息を飲む。空気が重いわけではない、この本能的に膝をつこうとするプレッシャーに似た何かを放つ人を2人ほど知っている。

これは確定で良いだろう。俺はプレッシャーで下を向いていた視線を上げて、中に居た3人を見る。

すごく見たことのある男女と、見たことのない女性だ。

国王陛下とレックス、マキナは知っていて、アリア王女は予想していただろう。

勇者パーティーと竜の息吹は予想だにしなかった人物?に言葉を失う。

その2人は、先ほど教会に入ってくる時に見た石像と同じ顔をしていた。

軍神アレスと守護神アテネ。おそらく隣に控えているのはこの教会の聖女で間違いないだろう。


「一年ぶりにございます。アレス様、アテネ様。」


国王陛下が頭を下げる。

一年ぶりということは、大会の時に降りてくるのだろうか?


「エリオットも元気そうで何よりだ。今年の大会は災難だったようだな。」


アレスが言葉を発した瞬間、身体にのし掛かっていた重圧が霧散した。


「この洗礼は何度受けてもこの感覚は慣れません。」


ムスぺリオス国王が圧を放っていた軍神アレスに抗議する。


「そう言うな。楽しい戦いを見せて貰ったし、全員耐えてみせた。合格だ、加護をやろう。」


軍神アレスは、ひょうひょうとした様子で国王の講義を受け流して本題を進めていく。

合格で加護をくれるという事は、先ほどの重圧を耐える事が試験だったのだろうか?


「うちのバカがすみません。では、ユイ・マキナは私から。リリィ・シズク・キョウカ・レックスはこのバカから。勇者コウキは2人から。パトリックは特別に魔術の女神フィーレから加護を差し上げると言伝てを貰っております。」


軍神アレスとは打って変わって、優し気な守護神アテネが加護をくれる神を教えてくれる。フィーレの加護という発言にアリア王女が息を飲む。珍しいのだろうか?

・・・そんなことよりも、俺は?加護は無くても良いけど、呼ばれた意味がわからないんですが・・・。


「今、アテネに言われた神に祈ってくれ。ステータスに加護がつく。」


軍神アレスに促されて、各々祈りを始める。

ムスペリオス国王やアリア王女も祈りを捧げていたので、俺も倣って祈りを捧げる。

目を閉じている俺の前に、誰かが来た気配がする。

トントンと肩を叩かれたので目を開けると、守護神アテネが目の前に立っていた。

アテネは、ゆっくりとした動きでしゃがみ、そっと耳元に顔を近づけて俺に耳打ちする。


「すみません。アナタにも加護をあげたかったのですが、面だってあげるとディアーナが文句を言いそうなので差し上げる事が出来ません。」


・・・どうやらハブられた原因の犯人はディアだったらしい。

確かに、ディアとフィーレの加護を隠した状態で、守護神アテネや軍神アレスから貰うわけにはいかない。

フィーレの加護は何だか特別っぽいし、バレると面倒なことになりそうだ。


「・・・お気遣いに感謝します。」

「また会うときがあればコッソリと。」


そう言い残して守護神アテネは元居た位置に戻った。


「全員、無事に加護を受け取る事が出来たようですね。」


全員ステータスを確認しなくても貰えた事がわかるようで、全員が守護神アテネの言葉に頷きかえす。


「今回の戦いは見事だった。この褒美で満足することなく研鑽を続けるように。俺からは以上だ。」

「今日は、とある事情でハヤトに加護をあげる事が出来ません。本人からは承諾を得ておりますが、活躍したのにもかかわらず1人だけ無しというのも不公平だと思っております。エリオット、何か彼に褒美を与えてやっては頂けないでしょうか?」

「わかりました。冒険者ハヤト、何か欲しいものはあるか?」


急に振られても困るな。とりあえずこの国でお茶菓子を買わなければいけない事は確定しているんだが、金は貰ったから、後は入るだけだな。


「・・・では、貴族エリアの入場きょk----いえ、最高級のお茶菓子をお願いします。」


おっと、本末転倒だ。貴族エリアに入るのは購入の為の通り道であって、目的だは無かった。貰えるなら王室献上品をそのまま貰ってしまえばいいんだ。


「そんなもので良いのか?」

「はい。この国でしか手に入らない物を頂ければ大丈夫です。」

「用意させよう。」

「ありがとうございます。」


これでお茶会の用意は整った。いつでもディアとフィーレに会いに行ける。


「話もまとまったところで、お開きにしようか。魔王の情報を神界に報告せねばならんし、外せん用事もあるからな。」

「駆け足になって心苦しいですが、今日は帰らせていただきます。楽しみが待っていますからね。」


2人は本当に急いでいるようで、足早に帰る準備をし始め、準備が整ったところで、俺達全員に見送られて神界へ帰っていく。


「勇者様方、私たちは直接介入出来ないので加護位しかお手伝い出来ませんが、この世界を宜しくお願いします。」

「他の神達も上から観てるから、色々と楽しませてくれ。」


2人は光に包まれる中、そんな言葉を残して神界へと消えていった。

どんな用事があるのだろうか?人間には関係ない事だろうが、神様が楽しみな用事というのは非常に気になる。



教会でやることは終わり、再び王宮にもどる。

馬車の中で、加護を貰えない理由について聞かれたが、言えないと言っておいた。こんな大勢がいる場所で言えるわけがない。まぁ、大勢いなくても喋る事は無いのだが。

お茶菓子の使用用途についても根ほり葉ほり問い詰められたが、お供え物やお土産という事で片を付けた。

お土産でお茶菓子をチョイスする辺り、異性である疑いをかけられ、意中の相手がいる疑惑が浮上したのだが、のらりくらりとはぐらかして何とかなった。

その途中でパトリックと杏華にものすごく睨まれた。パトリック、お前の考えは確実にハズレだ。杏華は何故このタイミングで睨んでくるのか皆目見当もつかない。マジでなんなんだ?

皆、話題に飢え過ぎじゃあないだろうか?



王宮に着いて一言二言言葉を交わした後、解散となった。竜の息吹のメンバーと、Sランクの2人はここで帰っていった。

勇者パーティーと俺は王宮内に戻っていく。

俺も帰りたいところだったのだが、お茶菓子を受け取らなければならないので、とりあえず中に入る。

奥の空き部屋に通されて、使用人にお茶菓子を大量に持って来てもらう。一個一個は普通なのだが、種類が多すぎる。

もちろんマジックバッグの容量は余裕があるので、全部詰め込んで頂いて帰る。

これで、ディア達に会いに行けるようになった。落ち着いたら教会に会いに行こう。


王宮の用事も終わり、宿に戻る。後はオルコット卿の帰る日を待つだけである。

そう思いながら、ベッドに入った。


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