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裏方の勇者  作者: ゆき
武闘大会編
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大会終了

大会も無事?終了し、後は授賞式を残すのみとなった。

普通なら興奮覚めやらぬお祭り騒ぎがあるはずなのだが、色々あって王都全体が微妙な空気に包まれていた。

まぁ、優勝が大穴過ぎて賭けで勝てた人はほとんど居ないんだから仕方ないだろう。

光輝やレックス、ロレイという優勝候補を始め、リリィさんを含めたAランク冒険者勢、実力のある騎士も多く参加していたなか、運で優勝されたらたまったもんじゃないな。

話題になっているのは勇者の失格と大穴の優勝で、俺の戦闘に関してはあまり語られていない。

さらに、光輝が墓地での魔物の発生を未然に防いだという情報が公開され、既に脚色され美談と化している。俺も一緒に行ったと伝えられているので、怒られる心配はない。

あくまで俺の存在はオマケなので、こちらも語られることはほとんど無かった。華のある人の話が取り上げられるのは当たり前の事なので、隠れ蓑になってくれて大変嬉しく思う。

ついでに、Sランクのロレイも光輝に手柄を譲った。騎士と一緒に光輝の指示で動いたことにしたらしい。俺と同じで目立ちたくないのだろうか?



授賞式で野次やゴミが飛ぶこともなく、つつがなく終了した。

意外にも民度は低くないようだ。まぁ、王の御前だからなのかもしれないが・・・

その後は予想通りお祭り騒ぎとなった。

どうやら勝っても負けても騒ぐのは変わらないらしい。

王都全体の被害も大したことが無かった事も大きいのかもしれない。

化け物になったのは公爵のお抱えの冒険者や奴隷達がほとんどで、一般人の被害は無かった。

化け物による被害も騎士や冒険者の迅速な対応で、ケガ人こそ出たものの重傷止まりで死者はいなかった。



そんな喜ばしい話が飛び交う大騒ぎのなか、俺はギルドに捕らえられ、尋問にあっていた。


「てめぇ、よくも大会をトンズラしやがったな!やるなって言っただろ!」


ギルド長のジョゼが唾が飛びそうな勢いで怒ってくる。


「うるさいな、王宮からの報告に俺の名前があっただろ。」


すでに俺の名誉は守られているはず。何故こんなに怒られているのか皆目見当もつかない。


「確かにあった。勇者のオマケのように隅っこの方だったがな!」

「載ってるならいいじゃねーか。」

「バカ野郎!なぜ大々的に報告されていない!ギルドにもメンツってもんがあるんだぞ!こういう時にイメージアップしていかないとダメなんだ!」

「そんな大人の事情は知らん。そもそも、よそ者の手柄を取ろうとするなよ。」

「ウグッ・・・冒険者に国籍なんて関係ない!しかもお前は勇者と同じアルカディア王国から来たんだろう!好敵手みたいな感じで売り出せ!」

「そんな事したら、後ろ指差されて笑い者になるだけだろ。そもそも、俺の失格とギルドのイメージは関係ない。そんなにイメージアップしたいなら自分で奉仕活動でもしてろ。」

「グフッ・・・仕方ないだろ、アイツらダンジョンで大金引き当てたらすぐに暴れて、よく騎士にしょっぴかれるんだから!イメージ悪いんだよ!」


若干泣きの入ったジョゼの顔に頬を引きつらせる。


「知るか!俺は帰るぞ!」


こんな意味不明の空間に長居したくないので、ジョゼを無視して席を立ちあがる。出口へ向かって歩き出そうとしたところで、扉がノックされる。


「失礼します。ずいぶんと熱のはいった会議ですね。」


入ってきたのは、いつかの受付嬢。平然と入ってくる姿を見ると、地位の高い人なのかもしれない。


「今終わったところだ。」

「待て!まだ終わってないぞ!」


ジョゼが俺を止めにかかるが、面倒なので無視することにした。


「重要なお話のところ失礼しますが、残念なお知らせです。酔った冒険者が修復中の民家を破壊したそうです。騎士団から現場検証に呼ばれています。」

「何だと!」


舞い込んできた旬のネタに、ジョゼは驚愕し、俺はニヤリと笑った。


「良かったな。旬で重要な仕事が舞い込んできたぞ。悪いイメージを払拭する為に現場で土下座噛まして来い。まぁ、大きいマイナスが小さいマイナスになる程度だろうけど。」


俺は笑ってジョゼの肩をたたく。これで尋問も終われそうだ。


「クソォ!きっと賭けに負けてヤケ酒あおってたんだ。どこのどいつか知らんが、降格処分にしてやる。」

「ギルド長でもそんな権限ありませんよ。すぐに来てください、迅速な対応が必要です。」


受付嬢は、駄々をこねるジョゼの襟首を掴み、引きずって退室していった。

廊下に出る際、こちらにキメ顔で親指を立てていったのは高評価だ。真面目そうに見えて結構お茶目な人の様だった。正直嫌いじゃない。

あの受付嬢には、ここを離れる時に何か餞別の品でも渡しておこう。



やっと解放されて、”竜の息吹”のいる酒場に向かう。

勇者御一行は、王宮でパーティーを行っているので今回も別行動である。一応呼ばれはしたのだが、向こうも社交辞令だったのだろう。断ったら割とあっさり引き下がってくれた。

急にぽっと出の人が勇者一行ですなどと言っても取り合ってくれないだろうし、結果オーライである。

酒場に着き、既に始まっている飲み会の席に入れてもらう。どうやらシアちゃん以外は呑んでいるようだ。

残念ながら、ループスは今回の一件で大きくなりすぎたので、人目につかないように留守番をさせている。ご褒美でステーキを大量に置いてきたが、こちらの飲み会も早めに切り上げて会いに行ってあげた方が良いだろう。体が大きくなったとはいえ、まだまだ甘えてくるので寂しい思いをさせるわけにはいかない。


「遅かったね。何か問題でもあったかい?」

「いや、ギルドマスターの無駄話が長かっただけだ。」


少しほろ酔いのパトリックが問いかけて来る。


「ギルドマスターに呼ばれるなんて何かあったんですか?」

「まったく、サボりじゃないって公言されてんのに頭のお堅い野郎だ。」

「最終的に魔王討伐もハヤト殿の功績によるものが大きいからな。」

「そういうのはやめてくれ。皆でやったんだ。」

「で・・・でも、スゴイ戦い・・・でし・・・た。」

「スゴイのは光輝だ。本当に一撃で倒しやがった。」


皆から称賛の声を受け取るが、あまりそういうのは好きではないので、光輝の話にすり替える。

魔王も満身創痍だったとはいえ、跡形もなく消し去ってしまうほどの魔術はさすがとしか言いようがない。


「確かにあの魔術はすごかったね。光属性の持ち主はあまり居ないし、秘匿されている技が多いからなかなかお目にかかれないんだよ。」

「だから似たような技で名前が違うもんが多いのか。空から降ってくる技が多かった気がする。」


パトリックの説明で光輝の戦い方を思い出してみると、そんな技を多用していたはずだ。


「王宮に保管されている資料を読み漁ったんだろうね。」

「確かにやりそうだな。」

「それにしても、墓地の話から始まり、魔王討伐や騒動の主犯の逮捕まで、町での噂では勇者殿が手柄を全部持って行ってしまったような話になっているな。」

「良いんじゃないのか?知らんヤツより、有名人が手柄を立てた方が話題になって面白いだろ。」

「我々は良いが、頑張っていた騎士や冒険者の反感を買っていなければいいのだが。」

「まぁ、光輝自体かなり強いから、襲われても問題ないだろ。」

「そうだな。」


俺達も今回の騒動の話を肴に話が弾み、結局長居してしまった。

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