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裏方の勇者  作者: ゆき
武闘大会編
82/186

場外の五回戦

俺と光輝は再び睨みあう。魔物を退治したとはいえ、墓地であるため少しひんやりとした空気がほほを撫でる。

光輝の攻撃は光速で飛来する。避ける術はほとんど無い。

すぐに思いつくのは、すべて受けきるか、そもそもロックオンさせないかの二択だ。

レックス並の防御力か、光輝に視認させない機動力か。


「・・・どちらも直ぐには出来そうにないな。」

「何か思いついたかい?」

「なにも思いつかないから困ってるんだ。」


ぶっきらぼうに返答しながらロケットスタートの構えをとる。

これはリリィさんとの戦闘で見せているので、光輝は気を引き締めて剣を構える。

再び同時に動きだし、先程とは比べ物にならない速度で距離を詰める。

光輝も試合を観ていたとはいえ、俺が実際に飛んでくると、体感速度に対する焦りでライトボールを外す。

驚いている顔に右ストレートを放つも、剣の腹で受け止められる。


「あぁ!」


気合いと共に、さらに地面を強く踏み込んで、無理やり拳を押し込む。

光輝を、弾き飛ばし、さらに追撃にかかる。

小回りのきかないロケットブースターをやめ、身体強化で光輝を追いかける。

剣の間合いに持ち込まれると面倒なので、くっついて離れないように動く。


「くっ!」


距離をとらせない俺に、光輝が苦悶の声をあげる。対する俺も光輝のガードを崩せず攻めきる事ができない。


「・・・ぃ」


どうやって切り崩そうか考えながら攻撃していると、光輝がぼそっと呟く。

詠唱でもなさそうなのでそのまま連撃を続行する。光輝の身体が一瞬輝く。


バチンッ


何かに弾かれ、飛ばされる。ゴロゴロと地面を転がり、すぐに立ち上がる。

光輝の方を見ると、光の粒がキラキラと光輝の周りを舞っていた。

輝いていたのは光輝ではなく鎧と剣だった。本体は、かすかに光を帯び、その周りに光の粒がユラユラと降り注いでいる。

何あれ?アイドルのステージみたいになってんだけど・・・イケメン補正かかり過ぎじゃね?


「上手く扱いきれなくて練習中なんだけど、仕方ないよね。やろうか、クレイヴソリッシュ。」


光輝の独り言に反応するかのように剣の刀身が輝きを増す。


「それが光輝の纏いか?」

「そうだよ。これは少し特殊でね、まだ人前に出せるよなモノじゃないんだ。」

「だったらしまっておいてくれ。」

「そうもいかないんだ。仕切り直しといこうか。」


光輝が剣を構えなおし、それにつられて俺もファイティングポーズを取る。


----ズンッ----


どこかで爆発したような衝撃が聞こえてくる。それが合図であったかのように2人は動き出した。

俺はロケットブースターで一気に加速する。おそらく光輝は本気になっている為、こちらも先ほどよりも速く動こうと今できる限界の魔力を放出する。音速を優に超え、マッハ2に差し掛かろうとする速度で突撃。

光輝は俺を見据えて待ち構え、まだ届かない距離で剣をまっすぐに振り下ろした。

輝く剣はその軌道に光のエフェクトの残像を残し、剣の周りを飛んでいた光の粒は、剣に付いた水滴のようにこちらに飛んで来る。


バチンッ


「なっ!?」


光の粒に当たって弾き飛ばされ、疑問の声が漏れる。


「すまないね。この通り、コントロールが難しいんだ。」

「だったら使わないでくれよ。」


言葉とは裏腹に、光輝も俺もニヤけた顔が戻らない。自分のプライドを守るために何度も撃突する。

光輝の振る剣に付いて飛来する光の粒、おそらく一個一個がライトボールを圧縮したものと考えていいだろう。

威力は小さいが、数が多すぎて避けきれないし、鎧にもくっ付いているせいで攻撃も通らない。

この二つは身体強化でごり押すしかないだろう。問題は光速で飛んで来る魔術だ。ライトボール程度ならば、こちらもごり押しでイケるが、光輝も効かないとわかってライトアローやライトランスに変更してきたのは痛い。

身体強化と纏いでガードしてもかなりのダメージが入る。どこに当たるかわからないからすべて強化しなければいけない点もどうにかしたいところだ。

さっきからロケットブースターのジグザグ走行で何とか躱せたり躱せなかったりしている。


光輝の弱点がだんだんと見えてきた。

おそらく、速すぎる光の魔術をコントロールしきれていない。

速すぎて誰も避けられないのにわざわざコントロールして軌道を変えたりする必要が無い為、魔力コントロールのレベルが高くないのだろう。

そして、俺の速度を追いきれていない事から、タイミングが合えば避ける事が出来る。といった具合だろうか。


今この瞬間なら、天才に勝つ事が出来るかもしれない。

方法は完全なごり押しで、光輝がオレの速度に対応するまでに一撃入れる事が出来るかどうか。運も味方にすればいけない事も無い。

完全に実力とは言い切れないところが残念ではあるが、仕方ない。今後攻略を考えて行けばいいだろう。

決めれば実行に移すのは早い方が良い。チャンスを見極めてさらに加速する。


天は俺に味方した。光輝の魔術を避けきり、今日の最速で光輝に近づく。

スーパーヒーローが空を飛ぶように片手を突き出し、身体強化のごり押しで突撃。光輝は剣を振り下ろし応戦してくるも、戦闘機のようにエルロン・ロールで一回転。すれすれで剣を躱し、光輝の顔面を殴り付ける。


「ぐっ!」


光のガードがあるため、組みにはいけない。ガードをつらぬける一撃を連発し、コンビネーションで光輝を追い込んでいく。




隼人が優勢になってきたところで、墓地に騎士が駆けつけてくる。


「はぁはぁ・・・勇者様、大変です!・・・会場に魔王が現れました!」

「「「「「「「!!」」」」」」」


戦いに集中している光輝と隼人以外の墓地にいる全員がその騎士の方を向く。


「会場はどうなっている!」


団長が代表して騎士に説明を求める。


「はい!騎士や、冒険者が応戦中ですが、厳しい状況です。勅命を受けて私が走ってきた次第です。」

「勇者パーティーの皆様方、お力をお貸しください。」

「構いませんが、あれをどうしましょうか?」


雫が団長に返事をして、光輝と隼人の戦いを指さす。


「止められませんか?」


団長が雫に聞くも、雫は首を横に振る。


「私には無理ね。結衣、2人を止められるかしら?」

「隼人笑ってたし~多分本気になってるから無理だよ~」

「ですが、魔王が現れたなら早く止めて向かわないとマズいですわ。」

「そうね。・・・よし、攻撃して無理矢理にでも止めましょうか。」

「えぇ!?大丈夫ですの?」

「あんな馬鹿どもどうなっても知らないわよ。ケガしたら結衣に治してもらいましょう。どうせ二人とも既にケガしてるんだし。・・・杏華、一緒にやるわよ。」

「しょうがないな~」

「仕方ありませんわね。」


雫と杏華が魔術の詠唱をし始め、騎士達は、不安そうに行く末を見守った。


光輝と隼人の間で、エクスプロージョンが2つ爆ぜる。戦いに集中していた2人は、これをもろに食らって別々の方向に転がっていった。

身体強化や纏いによって、ほとんどダメージにはならず2人を止める事に成功した。


「良いところだったのに」

「何すんだよ!」


光輝も隼人も水を差されて抗議する。


「そんな事やってる場合じゃなくなったのよ。」


雫が言い返し、軽く事情を説明する。

すぐに騎士も交えて短い話し合いをして、全員が動き出した。


「・・・あの状態のお兄様を圧倒した・・・誰も近づく事すら出来ませんでしたのに・・・」

「杏華、どうしたの?」

「いいえ、何でもありませんわ。」


考えながら歩いていたせいか、少し離れてしまった杏華は、小走りで皆の所に合流した。


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